異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
本発表では、『簠簋抄』「三国相伝簠簋金烏玉兎集之由来(以下、「由来」)」を取り上げ、まず、その〈秘伝書獲得譚〉としての読みの可能性を示した。
「由来」は陰陽道の秘伝書「金烏玉兎集」が天竺から唐を経て、日本の安倍清明に伝授される過程を描くが、「由来」後半部分で「金烏玉兎集」は、清明の弟子・道満によって奪われてしまう。道満が清明の妻・利花の協力を得、秘伝書を納めた石匣から秘伝書を手に入れる場面は、御伽草子『判官みやこばなし』等において義経が兵法の秘伝書を入手する場面と類似関係にあり、「由来」が、鬼一法眼譚と同種の、〈秘伝書獲得譚〉としての要素を含んだテキストであるということが言えるだろう。
次に、〈秘伝書獲得譚〉という視点から「由来」を捉えなおし、「由来」の編纂意識に関して考察を行った。
「由来」には、吉備真備入唐譚や龍宮訪問譚や玉藻前説話といった、先行する安倍晴明伝承とは関連度の低いとされる説話がいくつか含まれているが、秘伝書というキーワードを中心に、それらの説話が連想可能な位置にある説話群であり、「由来」の編纂意識に、〈秘伝書獲得譚〉を始めとした、〈秘伝書にまつわる説話〉という発想が働いているのではないか、という可能性を指摘した。
以上、発表者中野瑛介氏による要旨でした。
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