異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
次回例会のご案内です。
日時:5月27日(土)14時
会場:國學院大學若木タワー14階打ち合わせ室
題目:栃木妖怪事典(仮称)を編むことに向けての報告
発表者:永島大輝氏
要旨
各地で地域名を冠した妖怪の事典が編まれることが盛んになっている。 さらに妖怪を民俗調査報告書などから「発掘」する作業は多様な立場の「妖怪研究者」によりなされるようになり、刊行物はもちろん、TwitterbotやWebなどでもその成果は確認できる(異類の会71回「例会Twitterbot『瓶詰妖怪』運営の中間報告と今後の展望」)。
そうした現状から栃木県の妖怪事典を構想した。その前段階として今回は文献に報告されたものよりも発表者の聞き書きによる資料報告を中心に行いたい。栃木市で聞き書きを行い、そこで聞いた話を報告・検討する予定。
具体的にはゴーへという鳥の話(「トランヴェール」2016年9月号 などにも記述。https://t.co/65x7P0AZKl?amp=1)や地名由来譚を中心に世間話・伝説・昔話について議論に供したい。
参加自由です。
よろしくご参集ください。
日時:5月27日(土)14時
会場:國學院大學若木タワー14階打ち合わせ室
題目:栃木妖怪事典(仮称)を編むことに向けての報告
発表者:永島大輝氏
要旨
各地で地域名を冠した妖怪の事典が編まれることが盛んになっている。 さらに妖怪を民俗調査報告書などから「発掘」する作業は多様な立場の「妖怪研究者」によりなされるようになり、刊行物はもちろん、TwitterbotやWebなどでもその成果は確認できる(異類の会71回「例会Twitterbot『瓶詰妖怪』運営の中間報告と今後の展望」)。
そうした現状から栃木県の妖怪事典を構想した。その前段階として今回は文献に報告されたものよりも発表者の聞き書きによる資料報告を中心に行いたい。栃木市で聞き書きを行い、そこで聞いた話を報告・検討する予定。
具体的にはゴーへという鳥の話(「トランヴェール」2016年9月号 などにも記述。https://t.co/65x7P0AZKl?amp=1)や地名由来譚を中心に世間話・伝説・昔話について議論に供したい。
参加自由です。
よろしくご参集ください。
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全国の社寺にある絵馬や竜の彫刻が抜け出し、田畑を荒らしたり、河川の水を飲んだりするために絵馬に手綱を描く、彫刻の目をつぶすなどの対処をしたという伝説を全国から集め、整理した。
その結果、①動き出すものは馬や竜が多く、竜の引き起こす行為はいずれも水を飲んだり洪水を引き起こすなどの水にまつわることに関わっている。②動き出す動物への対処として、絵馬へは手綱を描き替えることが多く、彫刻に対しては目を潰すなどの物理的に部位を破壊する行為が多い。③絵の制作者には狩野法眼元信が多く、彫刻の制作者には左甚五郎が多く、その地域でその分野に対して代表的な人物とみなされていたことが分かる。④地域によっては郷土の偉人ともいうべき地元出身の画家や彫刻家が制作者の場合もあり、せいさくしゃは置換可能であることを指摘した。
発表者は伝説の要素々々が置換可能であると考え、井上善博が「繋馬図絵馬をめぐるでんせつについて(『名古屋市博物館研究紀要』3号、1980年)」でつくった票を参考に伝説を抽象化してその構造を考えることにした。〈人物による創作〉→〈欠乏の発生〉→〈原因の捜索〉→〈原因の発見〉→〈欠乏の解消〉という結果から、井上が二次展開に位置づけた〈伝承人物〉の存在を冒頭に置き、モチーフが欠落した伝承が散在すると指摘した。
その他に、青森県で『奥南新報「村の話」集成』(1998年)に掲載されている昔話化した伝説に「猫絵と鼠」などの昔話との習合を指摘したほか、田畑を荒らされる・水がなくなるといったことへの説明装置として伝説が機能していたのではないかと指摘した。
質疑応答・フリートークでは、事物にまつわるという伝説の性格から〈人物による創作〉よりも先行して事物としての絵馬・彫刻の存在が指摘された。さ、に収集された伝説の中からケーススタディとして実際に調査を行い、地域や寺社でその伝説がどのように伝承、管理されてきたのかを明らかにする必要も出て来た。また出席者から実際に伝説地の自社の彫刻の写真提供もあった。
今回の発表では、口頭伝承を中心に扱ったが、近世期の随筆や地誌などに記載されている伝説など、書承をみていく必要もあるなどの検討すべき課題も多く見つかった。今後は現在の伝承と書承の両面から伝説を考察していきたい。(文・間所瑛史氏)
以上、4月22日開催の第72回例会の発表要旨です。
次回は5月27日(土)14時、國學院大學若木タワーにて開催予定です。
その結果、①動き出すものは馬や竜が多く、竜の引き起こす行為はいずれも水を飲んだり洪水を引き起こすなどの水にまつわることに関わっている。②動き出す動物への対処として、絵馬へは手綱を描き替えることが多く、彫刻に対しては目を潰すなどの物理的に部位を破壊する行為が多い。③絵の制作者には狩野法眼元信が多く、彫刻の制作者には左甚五郎が多く、その地域でその分野に対して代表的な人物とみなされていたことが分かる。④地域によっては郷土の偉人ともいうべき地元出身の画家や彫刻家が制作者の場合もあり、せいさくしゃは置換可能であることを指摘した。
発表者は伝説の要素々々が置換可能であると考え、井上善博が「繋馬図絵馬をめぐるでんせつについて(『名古屋市博物館研究紀要』3号、1980年)」でつくった票を参考に伝説を抽象化してその構造を考えることにした。〈人物による創作〉→〈欠乏の発生〉→〈原因の捜索〉→〈原因の発見〉→〈欠乏の解消〉という結果から、井上が二次展開に位置づけた〈伝承人物〉の存在を冒頭に置き、モチーフが欠落した伝承が散在すると指摘した。
その他に、青森県で『奥南新報「村の話」集成』(1998年)に掲載されている昔話化した伝説に「猫絵と鼠」などの昔話との習合を指摘したほか、田畑を荒らされる・水がなくなるといったことへの説明装置として伝説が機能していたのではないかと指摘した。
質疑応答・フリートークでは、事物にまつわるという伝説の性格から〈人物による創作〉よりも先行して事物としての絵馬・彫刻の存在が指摘された。さ、に収集された伝説の中からケーススタディとして実際に調査を行い、地域や寺社でその伝説がどのように伝承、管理されてきたのかを明らかにする必要も出て来た。また出席者から実際に伝説地の自社の彫刻の写真提供もあった。
今回の発表では、口頭伝承を中心に扱ったが、近世期の随筆や地誌などに記載されている伝説など、書承をみていく必要もあるなどの検討すべき課題も多く見つかった。今後は現在の伝承と書承の両面から伝説を考察していきたい。(文・間所瑛史氏)
以上、4月22日開催の第72回例会の発表要旨です。
次回は5月27日(土)14時、國學院大學若木タワーにて開催予定です。
『瓶詰妖怪』は2011年12月からTwitter上で稼働を始めた“Bot”アカウントである。ツイートは二時間ごとに一回、妖怪情報を記したツイートを、登録された中からランダムで投稿するよう設定されており、2017年1月29日現在のツイート登録数は524種類である。アカウントのプロフィール欄に『日本の妖怪を二時間おきに紹介します。伝承、説話、民話の妖怪。』と記されているように、日本の民間伝承、伝説、説話などに登場、または報告されている妖怪に注目して登録されている。
『瓶詰妖怪』は当初はβ版と称し、柳田國男『妖怪談義』内の「妖怪名彙」に記された妖怪の登録から始まった。以降、あちこちから妖怪の情報を集め現在に至る。都道府県別に分類すると、約五年の間に大幅に数が増えた県と増えていない県との格差が顕著であり、特に大阪府と広島県に属する地域の妖怪が全く増えていない事がわかる。逆に大きく数を増やしている県は新潟県、静岡県、奈良県、和歌山県などであるが、これらは一つの資料に多くの妖怪が記載されているという点が考えられる。地域の偏りは今後の運営においても重要な懸案事項であるといえるだろう。
調査の手法としては、最初に足がかりとなる妖怪の情報の収集から始まる。主として話題になっている漫画、アニメ、小説、ゲーム、ニュースなどのコンテンツから妖怪を選び、それに関するデータを集める。妖怪好きの交流の中から話題に登ったものなどもその対象になる。そして図書館などを利用し、その妖怪の原典資料を閲覧し、情報を入手する。他にも、利用者からの情報提供も受け付けている。「蠱毒大佐の百怪蒐録」はブログのメッセージ投稿フォーム機能を利用した妖怪情報投稿機能であり、各人の調べた妖怪情報を入力・投稿してもらう企画も平行運行している。
入手した資料を元にTwitter規定の140字に収まるように入力をする。資料の情報は極端に短い文の時もあれば、極端に長い文のときもある。長文の場合、どうしても概要説明を圧縮・編集する必要があり、情報の取捨選択が迫られる事となる。長文であればあるほど、話の細かい部分を大幅に切り捨てる必要があり、これが利用者の誤解釈や誤情報の拡散に繋がりかねない。このため、瓶詰妖怪では「参考文献の明記」を絶対とし、原典へ誘導できるようにしている。
現在、瓶詰妖怪の基本運営は(協力者からの情報提供はあるものの)、一人の活動になっている。そのため、情報の収集から取捨選択まで、個人の嗜好や判断によって偏りが生じている側面がある。それが地域の偏りや入力の際の圧縮に表れている。また、固有名詞的な名称の存在しない妖怪・怪異の登録が少ない、という欠点、同名の妖怪が複数の地域でそれぞれ違った概要で伝わっているという場合、どのように登録をするべきかという課題などが存在する。また、北海道と沖縄の妖怪についても現在懸案事項がある。両県の妖怪は基本的にアイヌ民族、琉球王国の文化圏にて伝承された妖怪が大半である。これらの妖怪を一律的に「日本の妖怪」として分類することは果たして正しいのか、という疑問が出て来る。現状この懸案に答えが出ていないので、北海道・沖縄県の妖怪はこれ以上の登録は保留している。そして、最も大きい課題・展望はTwitterという発表の場自体の存続である。現在、Twitterの運営企業は大きな赤字を計上し、サービスの売却先を模索しているとニュースになっている。Twitterというサービス自体の存続が危ぶまれている現在、Twitter以外の場での瓶詰妖怪運営を検討していく必要が出てきている。案としては同人誌や自費出版で書籍として刊行するという案がある。しかしこれは現在のような頻繁な情報更新が難しくなるという欠点がある。もう一つの案としてはデータベース形式でインターネット公開をするという案である。140字という制限がなくなり、前述した情報の切り捨ての必要がなくなり、情報へのアクセスがより容易になる。また地域を地図付きで紹介する、タグ付け分類で検索の幅を広げるなどの利点があるが、現在よりも管理運営が複雑になり、個人の手に余る範囲も大きくなると考えられる。
瓶詰妖怪の約五年の運営報告として簡単に纏めてみたが、これまでの活動内容を振り返って公開することで、改めて幾つもの課題や改善点が浮き彫りにすることができた。現在の中短期目標としては無料登録上限の700種までの登録、中間報告を同人誌という形でまとめるなどを視野に入れている。また「蠱毒大佐の百怪蒐録」も積極的に推し進め、全国から妖怪情報を集める活動を今後も継続していきたいと考えている。(文・毛利恵太氏)
※次回は4月22日(土)14時(於國學院大學)で開催します。
間所瑛史氏の「麦喰い馬・水呑み龍の伝説について」です。
詳細は追ってご案内します。
『瓶詰妖怪』は当初はβ版と称し、柳田國男『妖怪談義』内の「妖怪名彙」に記された妖怪の登録から始まった。以降、あちこちから妖怪の情報を集め現在に至る。都道府県別に分類すると、約五年の間に大幅に数が増えた県と増えていない県との格差が顕著であり、特に大阪府と広島県に属する地域の妖怪が全く増えていない事がわかる。逆に大きく数を増やしている県は新潟県、静岡県、奈良県、和歌山県などであるが、これらは一つの資料に多くの妖怪が記載されているという点が考えられる。地域の偏りは今後の運営においても重要な懸案事項であるといえるだろう。
調査の手法としては、最初に足がかりとなる妖怪の情報の収集から始まる。主として話題になっている漫画、アニメ、小説、ゲーム、ニュースなどのコンテンツから妖怪を選び、それに関するデータを集める。妖怪好きの交流の中から話題に登ったものなどもその対象になる。そして図書館などを利用し、その妖怪の原典資料を閲覧し、情報を入手する。他にも、利用者からの情報提供も受け付けている。「蠱毒大佐の百怪蒐録」はブログのメッセージ投稿フォーム機能を利用した妖怪情報投稿機能であり、各人の調べた妖怪情報を入力・投稿してもらう企画も平行運行している。
入手した資料を元にTwitter規定の140字に収まるように入力をする。資料の情報は極端に短い文の時もあれば、極端に長い文のときもある。長文の場合、どうしても概要説明を圧縮・編集する必要があり、情報の取捨選択が迫られる事となる。長文であればあるほど、話の細かい部分を大幅に切り捨てる必要があり、これが利用者の誤解釈や誤情報の拡散に繋がりかねない。このため、瓶詰妖怪では「参考文献の明記」を絶対とし、原典へ誘導できるようにしている。
現在、瓶詰妖怪の基本運営は(協力者からの情報提供はあるものの)、一人の活動になっている。そのため、情報の収集から取捨選択まで、個人の嗜好や判断によって偏りが生じている側面がある。それが地域の偏りや入力の際の圧縮に表れている。また、固有名詞的な名称の存在しない妖怪・怪異の登録が少ない、という欠点、同名の妖怪が複数の地域でそれぞれ違った概要で伝わっているという場合、どのように登録をするべきかという課題などが存在する。また、北海道と沖縄の妖怪についても現在懸案事項がある。両県の妖怪は基本的にアイヌ民族、琉球王国の文化圏にて伝承された妖怪が大半である。これらの妖怪を一律的に「日本の妖怪」として分類することは果たして正しいのか、という疑問が出て来る。現状この懸案に答えが出ていないので、北海道・沖縄県の妖怪はこれ以上の登録は保留している。そして、最も大きい課題・展望はTwitterという発表の場自体の存続である。現在、Twitterの運営企業は大きな赤字を計上し、サービスの売却先を模索しているとニュースになっている。Twitterというサービス自体の存続が危ぶまれている現在、Twitter以外の場での瓶詰妖怪運営を検討していく必要が出てきている。案としては同人誌や自費出版で書籍として刊行するという案がある。しかしこれは現在のような頻繁な情報更新が難しくなるという欠点がある。もう一つの案としてはデータベース形式でインターネット公開をするという案である。140字という制限がなくなり、前述した情報の切り捨ての必要がなくなり、情報へのアクセスがより容易になる。また地域を地図付きで紹介する、タグ付け分類で検索の幅を広げるなどの利点があるが、現在よりも管理運営が複雑になり、個人の手に余る範囲も大きくなると考えられる。
瓶詰妖怪の約五年の運営報告として簡単に纏めてみたが、これまでの活動内容を振り返って公開することで、改めて幾つもの課題や改善点が浮き彫りにすることができた。現在の中短期目標としては無料登録上限の700種までの登録、中間報告を同人誌という形でまとめるなどを視野に入れている。また「蠱毒大佐の百怪蒐録」も積極的に推し進め、全国から妖怪情報を集める活動を今後も継続していきたいと考えている。(文・毛利恵太氏)
※次回は4月22日(土)14時(於國學院大學)で開催します。
間所瑛史氏の「麦喰い馬・水呑み龍の伝説について」です。
詳細は追ってご案内します。