『瓶詰妖怪』は当初はβ版と称し、柳田國男『妖怪談義』内の「妖怪名彙」に記された妖怪の登録から始まった。以降、あちこちから妖怪の情報を集め現在に至る。都道府県別に分類すると、約五年の間に大幅に数が増えた県と増えていない県との格差が顕著であり、特に大阪府と広島県に属する地域の妖怪が全く増えていない事がわかる。逆に大きく数を増やしている県は新潟県、静岡県、奈良県、和歌山県などであるが、これらは一つの資料に多くの妖怪が記載されているという点が考えられる。地域の偏りは今後の運営においても重要な懸案事項であるといえるだろう。
調査の手法としては、最初に足がかりとなる妖怪の情報の収集から始まる。主として話題になっている漫画、アニメ、小説、ゲーム、ニュースなどのコンテンツから妖怪を選び、それに関するデータを集める。妖怪好きの交流の中から話題に登ったものなどもその対象になる。そして図書館などを利用し、その妖怪の原典資料を閲覧し、情報を入手する。他にも、利用者からの情報提供も受け付けている。「蠱毒大佐の百怪蒐録」はブログのメッセージ投稿フォーム機能を利用した妖怪情報投稿機能であり、各人の調べた妖怪情報を入力・投稿してもらう企画も平行運行している。
入手した資料を元にTwitter規定の140字に収まるように入力をする。資料の情報は極端に短い文の時もあれば、極端に長い文のときもある。長文の場合、どうしても概要説明を圧縮・編集する必要があり、情報の取捨選択が迫られる事となる。長文であればあるほど、話の細かい部分を大幅に切り捨てる必要があり、これが利用者の誤解釈や誤情報の拡散に繋がりかねない。このため、瓶詰妖怪では「参考文献の明記」を絶対とし、原典へ誘導できるようにしている。
現在、瓶詰妖怪の基本運営は(協力者からの情報提供はあるものの)、一人の活動になっている。そのため、情報の収集から取捨選択まで、個人の嗜好や判断によって偏りが生じている側面がある。それが地域の偏りや入力の際の圧縮に表れている。また、固有名詞的な名称の存在しない妖怪・怪異の登録が少ない、という欠点、同名の妖怪が複数の地域でそれぞれ違った概要で伝わっているという場合、どのように登録をするべきかという課題などが存在する。また、北海道と沖縄の妖怪についても現在懸案事項がある。両県の妖怪は基本的にアイヌ民族、琉球王国の文化圏にて伝承された妖怪が大半である。これらの妖怪を一律的に「日本の妖怪」として分類することは果たして正しいのか、という疑問が出て来る。現状この懸案に答えが出ていないので、北海道・沖縄県の妖怪はこれ以上の登録は保留している。そして、最も大きい課題・展望はTwitterという発表の場自体の存続である。現在、Twitterの運営企業は大きな赤字を計上し、サービスの売却先を模索しているとニュースになっている。Twitterというサービス自体の存続が危ぶまれている現在、Twitter以外の場での瓶詰妖怪運営を検討していく必要が出てきている。案としては同人誌や自費出版で書籍として刊行するという案がある。しかしこれは現在のような頻繁な情報更新が難しくなるという欠点がある。もう一つの案としてはデータベース形式でインターネット公開をするという案である。140字という制限がなくなり、前述した情報の切り捨ての必要がなくなり、情報へのアクセスがより容易になる。また地域を地図付きで紹介する、タグ付け分類で検索の幅を広げるなどの利点があるが、現在よりも管理運営が複雑になり、個人の手に余る範囲も大きくなると考えられる。
瓶詰妖怪の約五年の運営報告として簡単に纏めてみたが、これまでの活動内容を振り返って公開することで、改めて幾つもの課題や改善点が浮き彫りにすることができた。現在の中短期目標としては無料登録上限の700種までの登録、中間報告を同人誌という形でまとめるなどを視野に入れている。また「蠱毒大佐の百怪蒐録」も積極的に推し進め、全国から妖怪情報を集める活動を今後も継続していきたいと考えている。(文・毛利恵太氏)
※次回は4月22日(土)14時(於國學院大學)で開催します。
間所瑛史氏の「麦喰い馬・水呑み龍の伝説について」です。
詳細は追ってご案内します。
特撮作品におけるモチーフのとり方は、基本として、子供をターゲットとしている為、子供に分かりやすいモチーフを取ることが多い。その当時どのようなものが使われていたのか、消費されていたのか分かることが興味深く、妖怪モチーフの作品に関しても妖怪的な世相が同じように色濃く出ている。中でも『忍者戦隊カクレンジャー』・『侍戦隊シンケンジャー』・『手裏剣戦隊ニンニンジャー』の三作品を中心に放映時期の前後にどのような妖怪が需要されてきたかを検証する。
1970年代以前のおばけを取り扱った特撮映画では講談や歌舞伎などで取り扱われる幽霊や化猫・河童・狸・鬼等のポピュラーなものが採用されていたが、水木しげるが1960年代後半から漫画や妖怪画集等で妖怪を紹介し始めると児童書の妖怪図鑑等の流れもあり、多種の妖怪が登場する基礎ができる。1970年代に増えた妖怪が80年代には大分定着し、『忍者戦隊カクレンジャー』の1990年代に至る。
■忍者戦隊カクレンジャー(1994-1995年)
『忍者戦隊カクレンジャー』の放映の同時期に水木しげるや鳥山石燕等の図版情報の拡充、漫画・小説等の分野でも妖怪が出る作品が増えた時期である。
・水木しげるの影響
デザイン上は水木しげるの影響を受けないようにしているが、作中登場妖怪44体中38体が、『日本妖怪大全』の妖怪を採用。特にビンボーガミ・カサバケ・チョウチンコゾウ・ヤマンバ・エンラエンラ・ガキツキ等の水木しげる特有の表記や妖怪からも影響が伺える。
■侍戦隊シンケンジャー(2009-2010年)
『忍者戦隊カクレンジャー』から15年を経ての妖怪が敵役の戦隊シリーズ作品。文献資料が増加したことにより、伝承される姿のない妖怪という考え方が大分流布された。妖怪伝承の元が作中の怪物であるという設定は『仮面ライダー響鬼』『侍戦隊シンケンジャー』で使われている。
・京極夏彦の影響
『忍者戦隊カクレンジャー』に登場しなかった妖怪18体中10体の妖怪が京極夏彦の京極堂のシリーズで紹介されている。特にテノメをモチーフにしたデメバクトは賽や花札のデザインを入れており、京極夏彦の小説作中でも使用された妖怪研究家・多田克己のテノメと博打の関連性の絵解きが元になっている。
■手裏剣戦隊ニンニンジャー(2015-2016年)
『侍戦隊シンケンジャー』から『手裏剣戦隊ニンニンジャー』の間5年には『妖怪ウォッチ』が発売され、ウォッチを意識した妖怪本も大量に出版された。『手裏剣戦隊ニンニンジャー』も敢えて妖怪モチーフとしたのは、子供の妖怪知識の広がりとメインライターがコメントしている。
・妖怪ウォッチの影響?
32体中22体の妖怪が『妖怪ウォッチ』との被りが見える。明確に意識されたものもあるが、『妖怪ウォッチ』に直接影響を受けたというよりも妖怪資料の増加で何度も刷り込まれていくうちに70年代までの河童や鬼・化猫等のように採用された妖怪が一般化されたという印象を受けた。
以上を踏まえて、ヌリカベのデザインを例に変遷を見ると柳田國男が『妖怪談義』の伝承を元に水木しげるが足つきの壁タイプのデザインが増殖する。『忍者戦隊カクレンジャー』も壁というデザインだったが、2007年ハロルド・B・リー図書館蔵の三つ目の獣の妖怪画に「ぬりかべ」と表記されていることが発表されると翌年以降より三つ目獣タイプのヌリカベが増加した。『侍戦隊シンケンジャー』では従来の壁のようなデザインを残しつつも三つ目のデザインを追加し、双方の要素を入れ、『手裏剣戦隊ニンニンジャー』では完全に三つ目獣タイプ採用に至った。
特撮という切り口で妖怪を取り扱った先行事例は数少なく、ライトノベルやゲーム同様、情報を散逸することが無いよう、収集と周知することの必要性を少なからず感じた。
また、改めてまとめて見て考えさせられたのは、特撮は妖怪に限らず子供に分かりやすい形でその時代その時代を反映している鏡のようなもので、当時の風俗や文化などを知る上でまとめておけば、有益な情報として活用できる。
質疑でも上げていただいた通り、メインで取り上げた作品以外に関しても情報を追加して、発展させていきたい。(文・式水下流氏)
以上、異類の会70回例会(2017年1月28日・於國學院大學若木タワー)の要旨発表の要旨です。
次回は3月4日、同所14階打ち合わせ室にて行います。よろしくご参集ください。
1月28日(土)14時
会場:
國學院大學若木タワー10階打ち合わせ室
発表者:
式水下流氏
タイトル:
特撮に見えたる妖怪
要旨:
特撮などの映像に妖怪を題材とするものが存在する。これらは作品ごとやシリーズとして纏められることはあるが、妖怪という観点で体系づけて語られることはほとんどない。どのような作品にどのような妖怪が出てくるのかどのような姿形をしているのかとても気になっていたのでまとめ始めた。
今回の発表では特にスーパー戦隊シリーズの『忍者戦隊カクレンジャー』(1994-1995)・『侍戦隊シンケンジャー』(2009-2010)・『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(2015-2016)の三作品を中心に登場妖怪の変化やデザインの変遷から各年代の世相や需要されていた妖怪の傾向を見ていきたい。
参加自由。
ご関心のある方は、ぜひご参加ください。