異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
口承文芸研究史において、異類と人との性的な接触は異類婚姻譚として扱われてきた。
それは柳田國男の性的な事例を排除するという姿勢とともに、「幸福な結婚」を日本人の重要な人生目標とする。
彼の学問的仮定に根ざしており、以降の昔話の話型の選定にも大きく影響を及ぼしてきたと言える。
無論、異類婚姻譚というタームの正当性は否定できないが、「犬婿入」や、河童聟入りから排除された「遠野物語」の不思議な力で無理矢理娘に通ってくる河童など、「婚姻」譚とするには整合性を欠く説話も多い。
人間の不快感に訴えるような刺激そのものが求められるサスペンス性や、淫靡性に価値が見出されていた部分は排除されてきた結果と言える。
『奇異雑談集』の当該話は、漁師がエイ(鱗を持つ魚よりも人に近い異類として描かれる)を劣情のままに犯し、人ならぬ子どもが生まれるという「奇異」な話であり、南方熊楠によれば東アジア的な広がりを持つことが予想される。
また、文字には残らないが海洋生物と性交渉を行うという実際的な習俗の存在が予想され、日本人の異類に対する感覚の新しい側面が見えてくる可能性がある。
以上、広川英一郎氏による第3回例会発表の要旨でした。
それは柳田國男の性的な事例を排除するという姿勢とともに、「幸福な結婚」を日本人の重要な人生目標とする。
彼の学問的仮定に根ざしており、以降の昔話の話型の選定にも大きく影響を及ぼしてきたと言える。
無論、異類婚姻譚というタームの正当性は否定できないが、「犬婿入」や、河童聟入りから排除された「遠野物語」の不思議な力で無理矢理娘に通ってくる河童など、「婚姻」譚とするには整合性を欠く説話も多い。
人間の不快感に訴えるような刺激そのものが求められるサスペンス性や、淫靡性に価値が見出されていた部分は排除されてきた結果と言える。
『奇異雑談集』の当該話は、漁師がエイ(鱗を持つ魚よりも人に近い異類として描かれる)を劣情のままに犯し、人ならぬ子どもが生まれるという「奇異」な話であり、南方熊楠によれば東アジア的な広がりを持つことが予想される。
また、文字には残らないが海洋生物と性交渉を行うという実際的な習俗の存在が予想され、日本人の異類に対する感覚の新しい側面が見えてくる可能性がある。
以上、広川英一郎氏による第3回例会発表の要旨でした。
PR
第3回例会案内です。
今回は口承文芸研究の観点から、近世説話を題材にお話してもらいます。
日時 12月22日 2:00頃
場所 都庁南展望台
※JR新宿西口改札前みどりの窓口(改札向きの壁際)で待ち合せてから展望台に向かいます。2時集合。
広川 英一郎
人と異類の交渉―異類交歓譚の可能性―
口承文芸研究史において、人と異類が性的接触を持つ類の説話は「異類婚姻譚」 として分類されてきた。
結婚して時には子をもうけるという枠組みは、結婚を日本人の究極の人生目標とする学問的仮説に由来し、以降も性的な要素を抵抗なく消化するための装置として機能してきたが、言うまでもなく捨象されてきた部分も大きい。
この枠組みを捉え直す事で人と異類の交渉史に新しい可能性を模索したい。
今回は「伊勢の浦の小僧、円魚の子の事」『奇異雑談集』を中心に考察を行う。
今回は口承文芸研究の観点から、近世説話を題材にお話してもらいます。
日時 12月22日 2:00頃
場所 都庁南展望台
※JR新宿西口改札前みどりの窓口(改札向きの壁際)で待ち合せてから展望台に向かいます。2時集合。
広川 英一郎
人と異類の交渉―異類交歓譚の可能性―
口承文芸研究史において、人と異類が性的接触を持つ類の説話は「異類婚姻譚」 として分類されてきた。
結婚して時には子をもうけるという枠組みは、結婚を日本人の究極の人生目標とする学問的仮説に由来し、以降も性的な要素を抵抗なく消化するための装置として機能してきたが、言うまでもなく捨象されてきた部分も大きい。
この枠組みを捉え直す事で人と異類の交渉史に新しい可能性を模索したい。
今回は「伊勢の浦の小僧、円魚の子の事」『奇異雑談集』を中心に考察を行う。
『狗猿合戦物語』は、天保五年の書写奥書を有する江戸後期の戯作と見られるが、その内容は、お伽草子の異類合戦物の流れを汲んでおり、異類物に関心をもつ者にとって注目すべき作品である。
物語は、ある山里に住む美しい犬の姫君「深雪姫」に、「猿の太郎」が一目惚れするところから始まるが、これを契機に、それぞれの一族全体をも巻きこんで、犬と猿との対立・合戦にまで展開する。
物語中に引用される故事・説話に中国関連のものが多いことなどは本物語の一つの特徴と言えるが、中でも奥書に記された「絵巻」と「詞書」に関する記述は、異類物の制作と享受を研究テーマとしている発表者にとって、重要な示唆を与えるものである。本発表においては、特にこの点を中心にして考察を試みた。
以上、三浦億人氏による第2回例会発表の要旨でした。
なお、本発表では翻刻資料も配布されました。