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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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日時:4月27日(日)15:00 
会場:オンライン(Microsoft teams)

1. タイトル:
 熊楠が追いかけた野槌
  -そのアプローチと遺したもの-

発表者:山川志典
要旨:
 南方熊楠は、「本邦における動物崇拝」(1910年)や「蛇に関する民俗と伝説」(1917年、のちに『十二支考』に収められる)で、異様な姿をした蛇「野槌(ノヅチ)」を取り上げている。熊楠は、正体が掴めない野槌について、どのように調査をし、結論を導いたのか。本発表では、「蛇に関する民俗と伝説」のうち、野槌に関する箇所を読み解くことで、熊楠の調査と論述のプロセスに迫っていきたい。
 加えて、発表者が展示の一部を担当した「2024 年企画展Ⅲ「新春吉例「十二支考」輪読 ツチノコと南方熊楠の知的ネットワーク」」展(南方熊楠顕彰館、展示期間:2024年12月〜2025年2月)の内容と様子から、熊楠没後の和歌山県田辺市や近隣における「ノヅチ」や「ツチノコ」と呼ばれる異様な姿をした蛇への関心のあり方についても紹介をしたい。
 これらを通じ、「異様な姿をした蛇を調べること」について、参加者と考えを深めていければ幸いである。
 
(なお、本発表は「ツチノコを通した地域創生と、南方熊楠の知的ネットワーク」(2025年1月11日、南方熊楠顕彰館)にて発表した内容と一部重複する)
※来聴歓迎! 初めて参加する方はX(舊Twitter)
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【1】
タイトル:
 殺生石の破損を巡るSNS上の言説


発表者:
 森下陽向氏

要旨:

 2022年3月5日、栃木県那須町に存在する伝説の石、殺生石が2つに割れた。この事象は、現地に観光のために訪れた観光客の一人がその写真を撮影し、Twitter(現X)にアップした事により発覚したものである。その後これを報告するツイートは劇的に拡散され、SNS上で様々な言説が飛び交った。その中でも特に目についたのが、「封印されていた九尾の狐が解放されたのでは」というような、伝説の悪鬼の復活やそれに伴う不吉な出来事の予兆を示すようなツイートである。これらにおいて特徴的なのは、既存の伝説の結末とは異なる展開を示しているという点である。帝の寵愛を受けていた玉藻前が、帝の病を機に陰陽師の阿部泰成に正体を暴かれ、逃げ延びた那須の地で三浦介、上総介に討伐された、というのが既存の伝説である。その結果として玉藻前は既に成仏や改心、もしくは消滅しているというという語られているのがこの伝説だ。にも関わらず、SNS上では異なる言説が散見されたのである。「殺生石が割れた事によって九尾の狐が復活したのだ」という内容が語られるツイートの数は非常に多く、果ては新聞やニュース番組においてまでこのような言説が引用され拡散されていった。現在まで玉藻前の怨念が残り続けて居るかのような、既存の伝説とは矛盾する内容を語るツイートが非常に多く散見された。
 本発表では、このような既存の伝説の変容、新たな物語性の付与にどのような傾向があり、またそこから何を読み取ることができるのかという疑問を発端に、本件で取り扱うTwitter上に投稿されたツイートをうわさの研究に当てはめ分析した。
 調査するにあたり、殺生石が割れたというニュースを見聞きした人々が、実際にこのニュースをどのように捉えたのかを確認するべく、SNSのなかでも特にTwitter(現X)に投稿されたものを収集した。対象としたツイートは、「殺生石」という単語を含み、かつ史跡殺生石について言及されていると考えられるものと限定し、約1年間における言説を収集した。結果として、集まった言説は1797件。件数からは2022年12月を除き右肩下がりとなっていることが読み取れ、またその数の変動から事件発生後から一ヶ月が経過した2022年4月には既に下火になった事も判明した。さらに、収集した言説の内容を分析、要素分けを行いどのような言説が特に語られていたのかをまとめた。本件言説では様々な要素が見られたものの、中でも特に多かったのが九尾の狐の「復活」について語る物語や、殺生石が割れたという事象を伝説と絡めて恐れるような姿勢を見せる「畏怖」というスタンスであった。さらに収集した言説の中には、漫画やアニメなどの内容を引用して語るものも多く見られるという結果となった。
 このように様々な言説が確認された本件言説を、うわさ研究を参照しさらに細かく分析していった。
 まず本件言説の流布については、都市伝説の流行を参考とした。松田美佐の『うわさとは何か―ネットで変容する「最も古いメディア」―』によれば、都市伝説が流布される環境について、「疑似共同体」の成立を提示した。ここでは編集者やパーソナリティによって評価され、その評価が広く発信されることで集団の一員として認められるようになるという構造が見られる。疑似共同体の一員となり、自分も同じように盛り上がり楽しみたいという欲求が都市伝説の流布に寄与したとされており、同様の共同体のようなものが本件においても成立していたのではないかと発表では述べた。加えて、本件言説というものは、SNSという誰もが気軽に発信し、そして互いに評価をすることのできる場で広まったものだ。ラジオ番組や雑誌の紙面という立場にTwitterのタイムラインが。評価を行っていた編集者やパーソナリティは、不特定多数の閲覧者へと変化したと考えられる。さらに、Twitterというメディアの特性上、ラジオや雑誌などに存在していた時間的な制限や、購入しなければ見られないというような閲覧者の制限などは存在しない。投稿の採用不採用なども存在せず、誰もが気軽に発信することが出来るという点において、本件言説における共同体が非常に広く大きいものになったのではないだろうか。
 同時に言説における傾向については、最初に投稿されそしてバズることで本件事象そのものを広く知らしめた2つツイートが「疑似共同体」の核となることで、言説の大枠や共同体の性質を定めたと考察した。共同体に参加する人々もまたそれに従った結果「復活」と「畏怖」という最初のツイートにも含まれていた内容を語り合うことで楽しむという傾向が生じたと考えられる。
 さらに、本件事象がわざわざ物語という形を取った理由については2つの理由を述べた。1つ目が、既存の伝説では本件事象を説明できないという、ストーリーに生じた空白の存在と、それを埋めたがる人間の心理の存在だ。伝説の幕引きシーンの知名度が低く、娯楽の一環として物語を作成することに抵抗がなかったことも同様に、物語を作成し得る空白となっていたと考えられる。そして2つ目が、九尾というキャラクターが様々な作品で知られていたことだ。連想したと提示されていた多くの漫画やアニメにおいて。その内容や展開自体、本件事象に当てはめることのできる要素がそろっており、本件事象から物語への導線が既に存在していた。このような状況下だからこそ、物語が発生し、また発生した物語に矛盾を感じることなく娯楽として存分に楽しまれ拡散されたのではと述べた。
 また、本件言説を分析していく中では次のような特徴が見られた。それが、うわさが長く語られる中で派生してくのではなく1つに収束していくという傾向だ。これは古典的なうわさの研究とは矛盾した傾向である。この点については、うわさというものの役割として、それが語られる場である「疑似共同体」や集団を結びつけ構成するという機能を持っていることが大きな影響を及ぼしていると述べた。水を差す内容をいくら投稿したとて、それは集団において評価されず、その一員となるどころか冷笑などの的となってしまう。一緒に盛り上がりたいという娯楽的な役割を強く期待されている本件の言説だからこそ、内容が枝分かれしていくのではなく、1つに収束していったのではないかと述べて来た。
 このようにネットで広まったうわさについて分析を行ってきたが、あくまでも本件言説の分析は本件言説にしか当てはめることができないものでしょう。特に本件言説の内容については、九尾という存在の既存のキャラクター性が大きな影響を及ぼしていると考えられます。その他の現代のうわさに、そういった発想の大元となる物語等が存在し、そして広く共有されているものなのかは、それこそ事例によって変わるためである。それでも、SNSという環境がもたらす疑似共同体の形成や、その内部で生じるうわさの固定化は、現代のネット上での伝説の創出において重要なのではないだろうか
 また質疑においては、本件と同様に各種メディアで取り上げられたアマビエとの比較による更なる展望や、Twitterという環境における独自の空気感とそれに伴う内容の偏りについてなど、さらなる視点についてのご指摘をいただいた。また今後の課題として、収集した言説の当事者たちがどのように繋がっているのか、という共同体の存在実証について。さらに収集したデータのさらなる分析や活用について挙げていただいた。(文・森下陽向氏)




【2】
タイトル:
 「霊魂を感じてしまう人」たちのライフヒストリー
  ―出産・宗教・地域性からルーツを探る―



発表者:
 野村美緒氏

要旨:

 私の「”霊魂を感じてしまう人”たちのライフヒストリー―出産・宗教・地域性からルーツを探る―」という発表では、母方家系の家系図を作成し〝霊魂を感じてしまう〟5名のライフヒストリーから第二章では祖母の信仰している真言宗の「自分自身を深く見つめ、「仏のような心で」「仏のように語り」「仏のように行う」という生き方」で死期を悟ることができるという仮説を立てた。即身成仏論で仏のようになることはわかったが「死期を悟る」ことについて明確に示すことができなかったため、立証はできなかった。第三章でも、遺伝方法は出産を通して受け継がれるとし、祖母と母の共通点として初産で流産していることであり、私に遺伝したのは流産(出産)できる体だからという仮説をたて、立証を目指した。しかし、民俗学では妊娠は血のケガレとして隔離され、死の境界線に立つことからユタの成巫過程にもあるような死の境界線に達したとみなされるが、私たちが〝霊魂を感じてしまう〟ようになった過程をみると、妊娠をする以前から見えていたり、霊魂を感じるようになった年齢が様々であることから考えると流産や出産とは関係ない可能性が高いため立証とはならなかった。第四章では釈迦という地名から祖母の実家がある茨城県古河市釈迦と真言宗は深い関わりは町史でも確認できたが、曾祖母の実家がある茨城県古河市三和町と真言宗の関わりは薄かったが『三和町史』には実際に民間宗教者が多く存在したことを知り、祖母らによると曾祖母の実家の敷地内に祠があり「夜泣きを子どもの夜泣きがすごいとか安産祈願とかでいろんな人が家にお参りに来た」という話から、私たちの先祖は民間宗教との関わりがあったと言えるが、すでに撤去されていたため断言はできなかった。
 以上のことから、私の母方家系において〝霊魂を感じてしまう〟理由を見つけることはできなかった。だが、柳田國男『妹の力』(創元社 昭和十五年八月二十九日)から女性は感動しやすい性格、言い換えると感受性が豊かであるが故に、霊力をもつということがわかる。
 このことから、女性はみな、霊力を持つが、開花するには何かのアクション(例えば巫病など)が必要だと考える。そのため、今後の課題として女性と霊力についてもっと多くのに文献にあたり出産からは見えなかった女性について捉えていくことで私たちの家系について何か発見が出てくるだろう。(文・野村美緒氏)




*これは2025年3月30日(月)にオンライン(Teams)で開催された第153回の要旨です。
*上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名を明記してください。
*次回は4月27日(日)15時にオンライン(Teams)で開催予定です。




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日時:3月30日(日)15:00 
会場:オンライン(Microsoft teams)

1. タイトル:
 殺生石の破損を巡るSNS上の言説

発表者:森下陽向

要旨:
 2022年3月5日、栃木県の那須に存在する殺生石が割れていることが発覚した。この事象はその物珍しさからか連日多くの憶測が飛び交い、またその話題の注目の高さからニュースなどでも取り上げられるまでに至った。その一連の流れの中でも特に興味深かったのが、TwitterなどのSNSを通じて拡散された、「殺生石に封じられていた狐が出て来た」という、従来の伝説とは異なる物語が付与された事だ。このような既存の伝説の変容、新たな物語性の付与にどのような傾向があり、またそこから何を読み取ることができるのか、噂の伝播など研究を参考に考察していく。


2. タイトル:
 「霊魂を感じてしまう人」たちのライフヒストリー 
  ー出産・宗教・地域性からルーツを探るー

発表者:野村美緒

要旨:
 私の母方家系には5名、霊魂を感じてしまう。5名の共通点は全員が女性であること。この五名のライフヒストリーを基に、祖母の怪火の話から死を悟る、虫の知らせを感じることへの真偽を事例や母方家系の信仰宗教などから仮説・立証していく。また、女性という共通点から妊娠・出産の関与について民俗的観念から調査を行った。祖母や曾祖母の実家がある地域の民間宗教なども調査し、なぜ遺伝したのか、経緯やルーツを探る。

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タイトル:
 絵馬友の会の小絵馬の図像と絵馬趣味


発表者:
 間所瑛史氏

要旨:

 日本絵馬友の会は1978年に日本絵馬協会によって結成された会である。協会の主催する絵馬展を見たコレクターからの要望で設立し、毎月会員に絵馬を頒布し、1993年まで活動していた。友の会は関東と関西に支部を持ち、講演会などのイベントをおこなっていたほか会報を発行し、会員との交流をおこなっていた。


 頒布された絵馬は各地の社寺のもののほか、協会に所属する絵馬師によって複製されたものが存在した。頒布される絵馬のなかで「古式」と呼ばれるものは各地に奉納された絵馬を複製したものである。「古式」絵馬の典拠は、石子順造の『小絵馬図譜』に掲載された絵馬が最も多く、次に岩井宏實の『絵馬』に掲載されたものが多かった。そのほか、北条時宗や西沢笛畝などが刊行した絵馬図集に共通する絵馬も存在した。頒布された絵馬には解説書も同封されていたが、初期は当時、大阪市立博物館の学芸員だった岩井が解説を執筆しており、解説の内容は『絵馬』の中の説明と一致した。また、七重浜海津見神社に残されていた資料からは、友の会の会員が複製してほしい絵馬のリクエストをおこなっていることがわかり、その際に過去に出版された研究者や有名なコレクターの本を参照した可能性を指摘した。


 これまで絵馬は信仰の文脈で研究されることが多かった。しかし、明治以降は郷土玩具とともに絵馬は収集の対象となっていった。友の会の頒布した絵馬からは信仰だけではなく、美術、趣味としての絵馬というもうひとつの側面が浮かび上がってくる。


 質疑応答では1930年代の趣味雑誌のコレクターの特徴との関連性や交換会についてのコメントがあった。現在の寺社でオリジナルな絵馬が販売されるようになった経緯や友の会が発行していた会報については今後の課題としたい。(文・間所瑛史氏)


*これは2025年2月24日(月)にオンライン(Zoom)で開催された第152回の要旨です。
*上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名を明記してください。
*次回は3月30日(日)15時にオンライン(Zoom)で開催予定です。

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日時:2月24日(月/振替休日)15:00 
会場:オンライン(Zoom)

タイトル:
 絵馬友の会の小絵馬の図像と絵馬趣味

発表者:間所瑛史氏

要旨:
 戦後、絵馬師による団体によって「絵馬友の会」が結成された。友の会は全国の絵馬趣味の会員に毎月小絵馬を頒布しており、その点数は400点を超える。現在、友の会が頒布した小絵馬はコレクターの手を離れ博物館などの研究機関に寄贈されたものもある。絵馬は寺社で作られる小絵馬をまとめて購入したものの他に「古式」と呼ばれる、奉納された絵馬を絵馬師が模写したものも存在する。本発表では「古式」の絵馬を中心に、友の会が頒布した絵馬の典拠を調べ、そこから近現代の絵馬趣味の一端を考えていく。

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プロフィール
HN:
異類の会
年齢:
15
性別:
非公開
誕生日:
2009/09/15
自己紹介:
新宿ミュンヘンで誕生。

連絡先:
gijinka☆way.ocn.ne.jp
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