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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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タイトル:令和元年度日々の俗信・世間話報告 異類編
発表者: 永島大輝氏

 当日は早めに会場に着くと一人で座って作業をしていたのだが、楽器を抱えたグループが近くにきた。
 その中の若い兄ちゃんが「コロナウィルスって熱には弱いっぽいね」と仲間に語り始めるのが聞こえた。
 曰く、母親から朝に送られてきたLINEには、研究者の情報によるとお湯を飲むとコロナウィルスがその熱で死ぬということが書かれていたのだという。
 実は同様の言説をすでに発表者はFacebookで見ており、典型的な流言飛語と感じていた。
それを異類の会参加者に伝えると、文面の中で温度を変え、広まっていることが今回の会の参加者からも知ることが出来た(26度や27度のお湯や、36度のお湯などの説がある)が、こうした流言を目の当たりにしたのは驚いた。
 ちなみに翌朝、家族にこのことを話すと、すでにテレビのニュースで注意喚起が促されていたという。この文章を書いている2月29日現在、検索するとデマを喚起する文面ばかりなのでほぼ終息した流言だろう。
 非常時には情報が不足しそれらしい話が町にあふれる。それらも含めた日常生活の話を世間話ととらえ、今回は主として三宅島や中学校での話などを報告した。

 付け加えておくが、もちろん世間話の範囲は流言や変わった話だけではないと考えているし、広く捉えるべきと思っている。
 例えば、三宅島では噴火の際に「赤いのが出ないとダメだ」という言い回しがあると聞いた。赤いのとは溶岩のことだが、黒い噴煙だけだとなかなか止まないという。
あるいは、三宅島では五月ごろは野ダケというダシが出ないタケノコを食べており6月ごろからはニガタケを食べるという話も聞いた。こうした話も世間話と捉えることも可能だと思う。
 しかし、これは異類ではないので発表時には保留した。

 最近はかつて共有されたゲームの裏技や攻略法も世間話の題材になることが多いと思っている。
 この前は職場の同僚たちがみんなポケモンに詳しかったので話を聞いた。
 そのなかで最近のポケモンの話題に付いて行けず、流れを変えようと「けつばん」というのがあった話をこちらからした。「けつばん」というのは公式なポケモンではないが、ポケットモンスター赤・緑などで、裏技で出すことが出来たのだ(いわゆるバグポケモンとも呼ばれることがのちにネットで検索したところわかった)。
 すると、けつばんというポケモンはポケットモンスター赤・緑に出るはずだったポケモンホウホウ(公式にはポケットモンスター金・銀から出る)が、諸事情により出せず、バグとして残ったものが「けつばん」なのだという話を聞くことが出来た。

 このようにポケットモンスターという共通の知識をもとに語られる
話がある。たとえば、「考察」としてポケットモンスターにまつわる話がまことしやかに語られることもある。

 これは今の十代にも見られる現象であり、他には例えばジブリのアニメや童謡にまつわる都市伝説も共有されたコンテンツにまつわる世間話といえよう(もちろん同様のことは昔からあるわけだが、一方で土地の伝説などはあまり子どもから聞くことが出来ない)。

 他には、三宅島の忌みの日に現れるという「コウロベサマ」などの
聞き書きや、不思議な体験などの聞き書きや録音から、「怪異の個人化」が進んだのではないかとまとめた。

 フリートークでは、ポケモンファンによる状況提供や、「コウロベサマ」と「馬の角」に関する質問、そのほか学校の怪談での質問があった。
 ポケットモンスターはドラゴンクエストよりも、語られている都市伝説が多かったり、ジブリとなりのトトロが多いことが分かった。崖の上のポニョに関する都市伝説は大学生からは聞くことが出来るが、中学生はあまりポニョの話をしていないということが参加者たちの観測範囲からは分かるようだ。
 これら録音などはまだ雑誌など報告ができておらず、作業を進めたい。(文・発表者)
 

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「南方熊楠の昔話研究―「鼠の嫁入り」を例として―」
一條宣好氏


 博物学者の南方熊楠(1867~1941)は変形菌(粘菌)の標本収集と同定作業、仏教を中心とした思想や哲学の研究、神社合祀反対運動など多様な活動を行ったが、それらと並ぶ重要な活動のひとつとして比較説話学の研究を挙げることができよう。昔話の研究もここに含まれる。主要な業績として雑誌『郷土研究』に連載され単行本『南方随筆』にも収録された「今昔物語の研究」、『東京人類学会雑誌』に発表された「西暦九世紀の支那書に載たるシンダレラ物語』などがあるが、今回の報告では2020年の干支が子年であることにちなんで昔話「鼠の嫁入り」に関する熊楠の研究活動を振り返り、その特性等を確認して、研究史の中でどのような意義を持つのか考えてみたい。
 熊楠による「鼠の嫁入り」を主題とした論考は二編存在する。まず大正4(1915)年8月、『東洋学芸雑誌』に「『鼠の嫁入り』の話について」が掲載された。これは熊楠が、同誌の前号へ載った神話学者・松村武雄(1883~1989)の「鼠の嫁入り説話研究」を読んで執筆したものである。昔話研究の泰斗・野村純一(1935~2007)によれば、この論考が「鼠の嫁入り」について本格的に説いた初めてのものだという。松村は「鼠の嫁入り」が既に存在していたことを示す資料として、明和4(1767)年に没した儒学者・岡白駒『奇談一笑』の記述を挙げているが、熊楠は更に遡る事例を列挙している。また最古の事例として弘安6(1283)年に成立した仏教説話集『沙石集』に類話が収録されていることに言及した。インドの説話に源流を持つと考えられる話が『沙石集』など日本で編まれた多くの説話集に見えるという点については、芳賀矢一らによって既に説かれていたが、「鼠の嫁入り」の類話が『沙石集』に収録されていることを具体的に指摘したのは、熊楠が最初である。『沙石集』は現在でも日本における最古の関連文献とされている。
 「『鼠の嫁入り』の話について」の次に執筆されたのが、昭和7(1932)年9月『俚俗と民譚』に載った「もぐらの嫁探し」である(「鼠の嫁入り」は地域によって主人公が変化している場合があり、「土竜の嫁入り」、「石屋の嫁探し」などと語られている例も存在する)。こちらは同誌1巻5号に掲載された中里龍雄「朝鮮民譚もぐらの嫁探し」を見た熊楠が、それまで未知だった朝鮮の類話事例の報告に触発されて書いたものである。以前に熊楠自身が発表した「『鼠の嫁入り』の話について」も含めて、先行研究で指摘されていた類話を網羅的に紹介しており、架蔵する文献で可能な限り直接出典を確認しようと努力している点には熊楠の資料と対峙する姿勢が垣間見られる。また江戸時代に書かれた戯作、熊楠自身が東京での学生時代に寄席で聞いた小咄の中にも類話を見出していて、これは後年の武藤禎夫らの研究に先行するものとして注目される。更に熊楠は、同一の話が語り手の意図によって異なる教訓的意義を持たされる場合があることについても、関心を持ち実例を示している。
 近年「鼠の嫁入り」に関する研究は野村純一などによって深められた。野村はアイヌ民族の神謡「やっぱりアイヌが偉いんだ」が循環形式を持っていることを指摘しており、現在では「鼠の嫁入り」の類話は東アジア全体に分布していることが判明している。
 以上見てきたように、南方熊楠は昔話「鼠の嫁入り」を主題とした考証と研究を行い、日本における最古の事例として『沙石集』を挙げるなど多数の類話出典を指摘し、昔話の持つ教訓的な側面や、語り手の意図により教訓の意味内容が変化するケースが存在することなどについて言及している。熊楠は抜群の記憶力と資料の博捜によって得られた情報の蓄積、英国留学の頃から学んでいた民俗学の知識とそれを基盤にした自身の見識を活用し、「鼠の嫁入り」についての研究が始まって間もない時期に、類話事例の有意義な補足と研究上の有益な指摘を行った先駆的研究者として位置付けることができよう。(文・発表者)

以上は1月11日(土)14時、武蔵大学で開催された第98回例会の要旨です。
次回は2月24日(月)15時30分、若松地域センターで開催します。

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山梨県長源寺『蟹坊主』伝説について」

発表者:田中教如氏
要旨:
山梨県の中心部、山梨市の万力にある「長源寺」という曹洞宗の寺院には「蟹沢山」という山号が付いており、それに合わせるように『回国の僧が蟹の化け物を退治した』という伝説が縁起として残されている。
伝説の内容としては、
『夜な夜なこの地に化け物が現れて人々が苦しんでいたところ、密教の法印がそれを退治しようとやって来る。法印は「両足八足大足二足横行自在」の問答に打ち勝つことにより、化け物の正体を蟹だと見破り、独鈷で蟹の殻を叩き割る。倒された蟹からは千手観音が現れ、その後法印は「ここは禅林の地だ」といって曹洞宗の僧に頼み、ここに長源寺を建てた。』
というものである。
由緒書きによるとその密教の僧は『中山救蟹庵主』なる人物であるらしいのだが、今一つ調べてもどんな人物なのかはっきりとしない
更にこの伝説に似た話は各地に存在しており、殆どが曹洞宗や禅宗に関わるものであった。やはり『問答』という要素と禅宗は切っても切り離せないのであろう。
そこで問題になってくるのが、何故長源寺の蟹坊主伝説は曹洞宗の話であるのに、主人公は密教の法印であるのかということである。これは、堤邦彦『近世説話と禅僧』に見られるように、曹洞宗の布教活動、地方進出の作戦のひとつではないかと結論付けた。
曹洞宗は地方に根を広げるにあたって、土着の宗教がそのまま曹洞宗の外護者であったという伝説を作ってしまうことがよくある。
つまり、密教と禅宗が混ざりあったようなこの不思議な伝説は、元からその地方に根付いていた密教を、あとから進出してきた曹洞宗が、形を変えずにそのまま飲み込むための方法だったのである。

(発表者談)
私が発表させていただいたのは、ひとまずここまでであったのですが、質疑応答で・鉄人伝説と共通するところがある・問答に漢字の知識を前提としている等々、様々な有意義なアドバイス、助言を頂き、まだ調べが甘かったことを痛感いたしました。調べる範囲も多く、今後研究を続けていくとすれば、何かしらテーマを絞り、そこを深く掘り下げていくような研究をしていきたいと思いました。御静聴ありがとうございました。
(以上、発表者識す)

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蛇に祟られた家―伝説と世間話の接合の事例―

発表者:
間所瑛史氏 

 本発表では群馬県の某町で聞き取った蛇の伝説とある特定の家の盛衰にまつわる世間話から話の位相を考察した。雨乞いの由来となっている池の大蛇の伝説が、一方でその大蛇を殺したとされる子孫の家に起こった不幸の理由として解釈され話されていた。伝説では蛇聟入りなどのモチーフを取り込んだ話が伝承されているが、一方で雄の蛇が猟師に撃ち殺され、雌の大蛇が寺の僧に血脈を求める話もある。世間話では蛇を殺した猟師の子孫に障害が発生し、没落したとされる。この世間話と同様の話を記載した文献には、口寄せが「先祖が大蛇を殺した祟り」と言ったと書かれている。同じ大蛇を殺したという点で一致する伝説と口寄せの解釈が結びつき、このような世間話が生れたと考えられる。



 質問などでは伝説を管理する寺に関するものが多かった。伝説が龍女成仏譚であり、伝説に登場する寺の宗派である曹洞宗が深くかかわっている点、寺の創建年代が応永ではなくもう少し早い年代まで遡る可能性、藩政資料や縁起、俗伝などを探す必要などの意見が出て来た。



 今後はフィールドワークの継続とともに文字資料などから歴史的な裏付けなどをとっていきたい。


※10月28日に発表したものです。


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全国の社寺にある絵馬や竜の彫刻が抜け出し、田畑を荒らしたり、河川の水を飲んだりするために絵馬に手綱を描く、彫刻の目をつぶすなどの対処をしたという伝説を全国から集め、整理した。

その結果、①動き出すものは馬や竜が多く、竜の引き起こす行為はいずれも水を飲んだり洪水を引き起こすなどの水にまつわることに関わっている。②動き出す動物への対処として、絵馬へは手綱を描き替えることが多く、彫刻に対しては目を潰すなどの物理的に部位を破壊する行為が多い。③絵の制作者には狩野法眼元信が多く、彫刻の制作者には左甚五郎が多く、その地域でその分野に対して代表的な人物とみなされていたことが分かる。④地域によっては郷土の偉人ともいうべき地元出身の画家や彫刻家が制作者の場合もあり、せいさくしゃは置換可能であることを指摘した。

発表者は伝説の要素々々が置換可能であると考え、井上善博が「繋馬図絵馬をめぐるでんせつについて(『名古屋市博物館研究紀要』3号、1980年)」でつくった票を参考に伝説を抽象化してその構造を考えることにした。〈人物による創作〉→〈欠乏の発生〉→〈原因の捜索〉→〈原因の発見〉→〈欠乏の解消〉という結果から、井上が二次展開に位置づけた〈伝承人物〉の存在を冒頭に置き、モチーフが欠落した伝承が散在すると指摘した。

その他に、青森県で『奥南新報「村の話」集成』(1998年)に掲載されている昔話化した伝説に「猫絵と鼠」などの昔話との習合を指摘したほか、田畑を荒らされる・水がなくなるといったことへの説明装置として伝説が機能していたのではないかと指摘した。


質疑応答・フリートークでは、事物にまつわるという伝説の性格から〈人物による創作〉よりも先行して事物としての絵馬・彫刻の存在が指摘された。さ、に収集された伝説の中からケーススタディとして実際に調査を行い、地域や寺社でその伝説がどのように伝承、管理されてきたのかを明らかにする必要も出て来た。また出席者から実際に伝説地の自社の彫刻の写真提供もあった。


今回の発表では、口頭伝承を中心に扱ったが、近世期の随筆や地誌などに記載されている伝説など、書承をみていく必要もあるなどの検討すべき課題も多く見つかった。今後は現在の伝承と書承の両面から伝説を考察していきたい。
(文・間所瑛史氏)


以上、4月22日開催の第72回例会の発表要旨です。
次回は5月27日(土)14時、國學院大學若木タワーにて開催予定です。

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15
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誕生日:
2009/09/15
自己紹介:
新宿ミュンヘンで誕生。

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