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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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タイトル:
 船幽霊と柄杓

発表者:
 怪作戦テラ氏


要旨:
「船幽霊」は、底の抜けた柄杓でもって対応する事例が有名、かつ広く分布している。
 しかし、歴史を遡って見ると「船幽霊」という単語の初出には柄杓は登場せず、船を襲ってくる訳でもない。その後も「船幽霊と柄杓」の組み合わせが定番化するには幾多の変遷を経ていることが分かる
 一方、江戸時代後期となり、一旦「船幽霊」が妖怪キャラとして成立すると、狂歌のネタとして成立するほど「船幽霊と柄杓」の組み合わせは定番のお約束として知られていくようになった。
 一方で、愛知には船幽霊的な事象に対して「通常の柄杓」で対応する記録が複数見られる。また、近隣地域にて水に飢えた溺死者の霊に柄杓で水を与えた事例や「溺死者の霊が水に飢えるのは当然」とした記録も残っている。
 改めて「船幽霊への対処アプローチ」を分類して考えてみると、
  1、やり過ごし型(底抜け柄杓など)
  2、撃退型(火、刃物など)
  3、供養型(食料、仏法)
に分けて考えることができる。
 愛知の「通常の柄杓で船幽霊の如き物」に対応する事例は、3の供養型だと考えることができ、飲料水の象徴としての柄杓、あるいは流れ灌頂のような仏法による供養が本来の形だったのではないかと思われる。
 その他、アカトリや船上の柄杓についても様々な事例、視点を紹介した。
 知名度の割に論考の蓄積が少ない「船幽霊」について、特に江戸時代以前の記述の変遷を整理、紹介し、常識と逆の「通常の柄杓による対処」について、どう捉えるべきか、見解を示せたのではないかと考えます。
(文・怪作戦テラ氏)


※上記の文は発表者の見解です。
 利用される場合は、執筆者名および本サイトの当該記事タイトル・URLを明記してください。

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日時:
 9月26日(日)15時
 Zoom開催

タイトル:
 船幽霊と柄杓愛知の事例を参考に
発表者 :
 怪作戦テラ氏
 
要旨:
「船幽霊」といえば「底の抜けた柄杓」で対応する事例が非常に有名である。
 しかし、愛知には「通常の柄杓(底が抜けていない)」を船幽霊の対処方法としている事例が存在する。通例に沿って考えると、どんどん水を汲み入れられてしまって逆効果になってしまう。これはどのように考えたら良いのか。日本の船幽霊史を振り返りつつ、船幽霊と柄杓の関係を考えたい。
※来聴歓迎!
初めて参加する方は
 TwitterID: @iruinokai
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タイトル:
広告塔としての件(クダン)-『依而如件』の意義-


発表者:
笹方政紀氏


要旨:
 人面牛身の異獣「件(くだん)」(以下、「クダン」とする)は、コロナ禍で疫病退散の象徴として注目された「アマビエ」と同様の存在であり、その特徴として特に予言をすること、そして予言は外れないという点がピックアップされた。しかし、クダンには他に「その言うこと一言は正しい」という重要な特徴もある。それは「依而如件(よってくだんのごとし)」の言葉で表現され、予言をすることよりも以前にクダンに備わるものである。
 本発表では、近世から近代にかけて、クダンと「依而如件」の関係を確認するとともに、「如件」の文字を伴うクダンを商標とした「痔薬」と「鋸」の2種類の広告について考えた。
 岡山に本店を有した「肛門薬商会」(痔薬)のクダンの姿を標した広告は、岡山駅近くにあった地元の大きな看板から、特約店・販売店を拠点とした琺瑯(ホーロー)看板、そして新聞・雑誌の紙面において掲載された広告と展開されることで、地元周辺だけでなく全国規模に広がるものであったことが窺えるものであった。記事広告では「効能書に嘘は言はぬ」という意味でクダンを商標として選んだという。その広告の反応は幾つかの民俗資料などにも残されている。「肛門薬商会」は昭和の戦前には輸出も始め、戦後しばらく続けたのち店を閉じている。
 熊本の人吉市に店舗を構えていた「件鋸店(件鋸製作所)」では、製作した鋸の両面にクダンの商標を刻印していた。大工町の店舗や向かいの工場付近では複数の看板広告があった。店舗では入口上部に鋸を模した看板が、また、ショーケースにも立て看板が掲示され、クダンの商標と共に「クダンハウソヲイワヌ」の言葉を添えられていた。これら存在感のある看板広告は鋸を必要とする林業従事者だけでなく、観光で訪れる者にも大きなインパクトを与えるものであった。
 クダンの商標はどちらも「如件」を伴うものであり、「如件」、つまりクダンの「その言うこと一言は正しい」ことをもって、商品の有効性や出来(切れ味)を保証するものであった。ともすればクダンは予言をすることが取り上げられがちではあるが、正しいことを言うことは、原初的であり、かつ、クダンの根幹をなす特徴であるといえる。今後もクダンの広告に関する資料を集めることで、さらに当時の人々がクダンを求めた心性を解き明かせるものと考える。(文・笹方政紀氏)

※第112回は8月21日(土)15時、Zoomにて開催しました。
 次回は9月26日(日)15時、Zoom開催。

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日時:8月21日(土)15時
会場:Zoom


タイトル:広告塔としての件(クダン)-『依而如件』の意義-
発表者 :笹方政紀氏

要旨:
広告とは、人々に関心を持たせ、商品を購入させるために、媒体を用いて宣伝をすることとされる。それは、商品の情報伝播活動であるともいえる。その商標や企業キャラクターは、他者のものと区分するための標識、いわば企業の顔であり、また企業のイメージでもある。そのように企業にとって重要な商標やキャラクターにもこの世に実存しない異獣が取り入れられ、広告塔としてその存在を知らしめるものがある。
明治時代(~現在)には懐中用薬「清心丹」が人魚を商標としたり、昭和30年前後の河童ブームにおいては、多くの企業がそのキャラクターとして河童を採用したりしている。
本発表では、大正から昭和にかけて人面牛身の異獣「件(クダン)」を商標として取り入れた広告について確認し、「件(クダン)」を商標とし広告塔とする意義について考えてみたい。


※来聴歓迎!
 初めて参加する方はTwitterID: @iruinokaiにDM等でご一報ください。

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タイトル:
お伽草子の物の〈精〉について

発表者:伊藤慎吾

要旨:
室町時代から近世前期にかけられて作られた短編物語草子の一群であるお伽草子には、人間以外のキャラクター(=異類)が夥しく登場する。
中でも、人間不在で異類ばかりで成立している物語世界も少なくない。
キャラクターとしての異類は、神の化身として登場することもあれば、妖怪として登場することもある。
ところが、『花情物語』や『花の縁(姫百合)』などに出てくる異類は、神でもなければ妖怪でもない。
そうした異類たちが物語世界に増殖した時代がお伽草子の時代であったといえるだろう。
本発表ではこうした有象無象の物の〈精〉の性格や与えられたイメージを通して、この時代の擬人化の特色を考えた。

まず、神としての異類/妖怪としての異類/神・妖怪以外の異類を示した上で、神仏の力によって(他力)、あるいは年経た結果(自力)、生物としての異類が人間的な外見を獲得するもののほか、先天的に無条件で人間の姿で描かれる物の〈精〉やそれに類するものがいること、ついでそれらには対人的な干渉が限定的であることを確認した。
人間関係ということでいえば、物の〈精〉は人間の文化に対する知識が豊富でありながら、付かず離れずの距離を保つものとして描かれている。

本発表では神や妖怪として捉えられない異類を物の〈精〉やそれに類するものとして把握しようとしたものである。
そうすることで、人間や人間社会に干渉する神や妖怪としての異類ではなく、人間に等しい存在としての異類がお伽草子の時代に発達していった結果、擬人物が成長したことを見たかったからである。
今回は取り上げなかったが、謡曲に見られる物の〈精〉も人間として具現化する。
お伽草子もまた物に宿った霊魂という観念を読み取ることができる
これがお伽草子の時代の擬人化キャラクターの特色だろうと考える

近世期に大いに発達した〈見立て〉の趣向が純粋に類推に着想した遊戯だとすれば、お伽草子のレトリック面ではすでに共通する発想があるが、しかし、キャラクター化された異類にはまだその趣向は物語文学の領域では開拓されていなかったようである。

※第111回は7月18日(日)16時、Zoomにて開催しました。
 次回は8月21日(土)15時、Zoom開催

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