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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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本発表では異類合戦物が近代以降どのように展開していったのかということを、各時期の特徴に注目しつつ捉えようと試みた。
まず明治期はその初期において江戸時代の文芸ジャンルが生き残っていたが、異類合戦物は新たな題材・表現を用いながらもその枠内で新作が作られていた。草双紙『雑具魚鳥山海餅酒読切大合戦』(明治10年刊)、落語「遣繰軍記」(明治32年口演)、一万斎芳政画「道戯大合戦」をはじめ、ジャンルは多岐に亘る。また口承文芸の早物語の受容も看過できないだろう。
その後、江戸文化を否定する傾向に伴い、各ジャンルの異類合戦物も衰退する。
また児童文学が発達する中、昔話や西洋の翻案の寓話、創作などの子ども絵本が多く作られるようになる。異類物自体はこのように新たに開拓されていくが、しかし合戦をテーマとした作品は求められなくなる。
児童向け読み物も発達するが、そこでは博物的、科学的関心を深めるという啓蒙志向が顕著に出て来るようになった点に新たな異類物の意義があるが、やはり合戦はテーマにされなかった。
このように異類合戦物は明治期に入り、衰退の一途をたどるが、SF文芸の中に異類の要素は受け継がれることになった。これは直接影響関係があるということではなく、世界観やキャラクターの設定に類似点があるという程度だったと思われる。
その一方で、漫画やアニメーションといった子ども向けの新たなメディアの誕生は、異類合戦物を再起させることになった。
アニメでいえば、猿軍vs白熊軍の戦いを描いた「お猿の三吉 突撃隊」(昭和9年)や日本の昔話のキャラクターたちvs侵攻するミッキーマウスたちを描いた「オモチャ箱 第三話 絵本」(昭和11年)など、近代以前の異類合戦物同様に単純なストーリーや世界の設定によるものが典型的な作例である。
戦後はテレビや映画というメディアの普及、漫画やゲームの増加といった大衆娯楽産業の拡大の中、異類合戦物は生み出されていった。もちろん、双六のようなボードゲームでは〈合戦〉に類する〈競争〉が戦前から扱われてきて今日に続く(「むしのうんどうかい」など)。
現代は擬人物が特殊に流行しており、従来の傾向と異なる娯楽産業と密接に関わりながら作品が生み出されている。
すなわち従来は異類は外見も異類(蜂なら蜂の姿のまま、もしくはそれに近い形態)であった。今日も児童文化の枠内では主にその形態を踏襲するが、サブカルチャーの領域では美少女化・イケメン化する傾向が強い。
そして合戦物は戦略SLGとして発達している。
その一方でトレーディングカードゲーム、さらにカードバトルRPGの流行に伴い、多種多様な異類(主にモンスター)の合戦物が生み出されている。

以上のように、近代以降の異類合戦物は、児童文化から派生した娯楽文化において数々の作品を生み出していった。
その一方で、合戦というテーマはゲームに適したものであることから、コンピュータゲームやカードゲームの発達により、多種多様な世界観・キャラクターが現れるようになった。(文・発表者 伊藤慎吾)

以上、異類の会第52回例会(2015年4月4日・於大東文化大学)発表の要旨です。

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日時:4月4日(土)14時
会場:大東文化会館K-403教室
(東武東上線「東武練馬」駅より徒歩5分)
http://www.daito.ac.jp/file/block_41815_01.pdf

発表者:伊藤慎吾
題目:「近代日本における異類合戦物の諸問題」

要旨:異類合戦物とは、人間以外の存在(異類)同士が戦いを繰り広げることをテーマとする作品を指す。その起源は判然としないが、中世後期には物語草子として現れ、近世前期には絵物語や歌謡等、その後に草双紙や地方の語り物文芸、錦絵などのジャンルでさまざまに展開していくことになる。
では近代社会を迎えてからはどうなったのであろうか。残念ながら、それ以降の展開はいまだ不明な点が多く、課題が山積している状況である。
そこで、本発表では近代の異類合戦物を捉えるために、西洋の文芸の影響、新たなメディアの誕生などに留意しつつ、問題点を整理して、その展開を素描してみたい。




追伸
阿部健一監修『五感/五環―文化が生れるとき』(昭和堂、2015年3月)という本が出ました。
前回の発表者今井秀和氏の「虫の妖怪と俗信」という御論が掲載されています。

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永井荷風の日記『断腸亭日乗』の太平洋戦争前後の記事(とくに昭和15年から16年にか けて)には、他者による投書や落書がたびたび引用されている。その中には、近世の俳文や黄表紙を模して動物などの〈異類〉を活躍させたものや、近世の落書を模した上で、政治批判を〈妖怪〉の姿に託したものなどもある。
本発表では、戦時下において、こうしたある種の江戸趣味に基づく作品がいかなる意味を持ち合わせて創作・受容されていたのかについて若干の考察を試みた。『断腸亭日乗』に記録された戦時下の投書および落書は、“匿名の作者が特定の人物(ここでは荷風)を目指して行った表現行為”と、“匿名の作者が不特定多数の人物を対象にして行った表現行為”に二分できる。さらに、これらは、匿名の作者による表現行為と、それを自らの筆で記録する荷風という、重層的な構造によって後世に残された作品でもあった。
また、以上の考察を通して、新たに以下のようなテーマも浮上してきた。一つは、前近代の〈異類〉と、近代以降の〈異類〉の接点と差異である。もう一つは、主として子供向けに発展した“キャラクター”的な意味合いを持つ〈異類〉と、大人向けに発展した、諧謔を通じた政治・世相批判を含む〈異類〉の役割の差である。今後は、戦時下の〈異類〉たちを含めたかたちで、こうした大局的な問題についても考察を深めていきたい。(文・発表者 今井秀和氏)

以上、異類の会第51回例会(2015年3月18日・於大東文化大学)発表の要旨です。


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日時:3月18日(水)14時~
会場:大東文化会館 K403室
(東武東上線「東武練馬」駅より徒歩5分)
http://www.daito.ac.jp/file/block_41815_01.pdf


発表者:今井秀和氏
題目:「戦時下の〈異類〉たち ー荷風が記録した投書、落書からー」
要旨:
永井荷風の日記『断腸亭日乗』の太平洋戦争時の部分には、他者による投書や落書がたびたび引用されている。その中には、近世の俳文や黄表紙を模して動物などの〈異類〉を活躍させたものや、近世の落書を模した上で、政治批判を〈妖怪〉の姿に託したものなどもある。本発表では、戦時下において、こうしたある種の江戸趣味に基づく作品がいかなる意味を持ち合わせて創作・受容されていたのか、少しばかりの考察を試みたい。

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平家物語の宇治川の先陣争いに登場するする墨といけずきについてそれぞれ覚一本、長門本、延慶本を使い比較を行うと延慶本に他の諸本とは異なる大きな特徴が見られた。まず、する墨の名前が異なること。また、その命名の由来になぜか頼朝の馬であったのに二位殿が出てくること。そして、いけずきの名前の由来について延慶本に関しては二つの説を取り上げ、また非常に詳しく書かれているということである。
まず、する墨の名前についてであるが、延慶本では「ウスヾミ」となっており、命名の由来に二位殿が出てくる。平家物語で二位殿というと平清盛の妻である平時子であるが、この馬は頼朝所有の馬であるので、そこに平家方の名前が出てくるのは不自然である。これに関しては源仲綱と平宗盛間で奪い合われた木の下や煖廷、平知盛から奪われ院に献上された井上黒などの例から見て当時、馬を奪い合う習慣があり、このウスヾミも元は平家方の馬だった可能性があると推測された。 
そして、いけずきに関しては延慶本においてはその命名の由来譚から伝承的要素が見られるのではないかと推測された。また、「いけずき」の表記に関してはさらに考察の必要性が感じられる。
以上がする墨といけずきに関しての諸本比較における考察であるが、その他にも延慶本には平山季重が頼朝から目糟毛という名馬を与えられ意気込むのに、橋桁を渡る際に下馬してしまうという描写や、頼朝が梶原景季を嫌っていたからいけずきを与えず、父の供養をしていた為に遅参した佐々木高綱には与えるといった他の諸本には見られない描写があった。今後は平家物語の他諸本も使い比較をし、する墨といけずきに関しては伝承についても調べていきたい。
(文・発表者 野中くれあ氏)

以上、異類の会第50回例会(2015年2月25日・於大東文化大学)発表の要旨です。

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2009/09/15
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