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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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お伽草子『梅津長者物語』には、七福神に退治される貧乏神の姿が描かれている。『発心集』『沙石集』にも貧報の冠者、貧窮殿という名で貧窮を司る存在が登場するが、貧乏神という言葉が確認できるのは16世紀初頭の俳諧などからである。ただし『大乗院寺社雑事記』文明十五年条に福天と賓法神が京と和泉・堺を往来したとの記述があり、賓法神が貧乏神であるとすればより早い例として注目される。
この貧乏神の姿を絵画化したのが『梅津長者物語』であり、柿帷子を着て、団扇を手にした十四、五の禿で、大勢で行動するのが特徴である。貧乏神は、福神と共存することはできず、退散することで間接的に富を与える存在となっている。
『梅津長者物語』の貧乏神の姿は、髪を禿に切り回し、赤い直垂を着た、十四、五の子供と『平家物語』諸本に記される禿童と重なる。また同時代の作品の貧乏神の様子はどうであったかというと、俳諧や狂歌などに渋団扇に貧乏神がつくという繋がりがうかがえ、井原西鶴『日本永代蔵』に渋帷子、破れ団扇、紙子頭巾の貧乏神像が出てくるなど、室町時代末から近世にかけての貧乏神の姿に、柿色の装い、団扇という共通性が見てとれる。
まだ検証は不十分ではあるが、貧乏神の柿色の装いには被差別民の姿が投影されていると考えている。特に犬神人は柿帷子と白い覆面ないし頭巾という姿で、『日本永代蔵』の貧乏神の姿と近しい。退散することで福をもたらす貧乏神が、穢れを払う犬神人の姿と重なるのは注目すべきであろう。『梅津長者物語』の貧乏神の姿とは異なるが、両者は渋柿色でつながれている。また貞享五年刊『貧人太平記』などに、破れ団扇を手に行列する非人が描かれており、柿帷子に加えて被差別民への眼差しが重ねられていると言えそうである。

福神の流行と時を同じくして現れた柿色の貧乏神の姿には、富と関わる社会的なイメージがより強く反映されていると考えられる。そこから想像された禿童と犬神人という二つの姿を手がかりに、さらに検討を重ねたい。


以上、発表者塩川和広氏による要旨でした。
これは2012年2月24日の例会(於国学院大学)において発表したものです。
次回の会は前の記事に示したとおり、
  日時:3月23日(金)18時00分~
  場所:國學院大學学術メディアセンター一階ラウンジ

 です。詳細は下記参照。

http://irui.zoku-sei.com/Entry/54/

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第27回異類の会例会

日時:3月23日(金)18時00分~
場所:國學院大學学術メディアセンター一階ラウンジ

※学術メディアセンターは図書館が入っている建物です。
 

http://www.kokugakuin.ac.jp/content/000007812.pdf


大坪舞氏
「鷹と恋―「こちく」を中心に」

要旨
:鷹のとまる木である「木居(こゐ)」が「恋」と通じることもあり、鷹狩は恋歌として多く詠じられるが、これに加え鷹書の中では有名な恋物語がある。「せいらい」が渡来人の鷹飼から鷹道を伝授されるために「こちく」という美女を娶わせるもので、この説話が起源となる「故竹流」という流派の名すら確認されるほど広範な影響が見られる。
 本発表では、鷹書の世界を「こちく」の説話を中心として検討したい。


なお、前回(第26回)の発表要旨は追って掲載します。しばしお待ちを。

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第26回異類の会例会

日時:2月24日(金)18時30分~
場所:國學院大學学術メディアセンター一階ラウンジ

※学術メディアセンターは図書館が入っている建物です。
 

http://www.kokugakuin.ac.jp/content/000007812.pdf


塩川和広氏
「柿帷子と渋団扇~貧乏神のイメージ」

要旨
:お伽草子『梅津長者物語』には、七福神に退治される貧乏神の姿が描かれる。柿帷子と渋団扇という貧乏神の装いには、どのようなイメージがかさねられているのか考察する。


なお、今回の会場は教室ではないので、もしかしたら寒いかも知れません。
ご注意を。

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本発表では、まず現在確認できる十点のリストを掲げ、『こほろぎ物語』諸本の概観を試みた。あわせて伝本の紹介を中心とする研究状況を確認した。
従来、新たな伝本が紹介される際に、基準とされてきた内閣文庫本だけでは、諸本把握の目安とはなりにくく、九曜文庫本を加えて検討する必要があるとの見解を述べた。
その上で、これまで存在は知られていたものの、文学研究の側からはほとんど言及されることがない『照国公御母堂賢章院夫人遺芳録』所載本文を取り上げ、
諸本間に異同がみられる和歌に関して考察をおこなった。
最後に、今後の展望として、賢章院を『こほろぎ物語』の作者とする言説について、幕末・近代における薩摩の文化状況をふまえて検討する必要があろうことを述べて締めくくりとした。


以上、発表者宮腰直人氏による要旨でした。
これは2012年1月27日の例会(於青山学院大学)において発表したものです。
なお、次回例会は2月24日(金)18:00~です。

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第25回異類の会例会のご案内

日時:1月27日(金)18時30分~
場所:青山学院大学14号館(総研ビル)6階14605教室
※正門を入って直ぐ右手に見える銅像のついた建物です。

宮腰直人氏

「『こほろぎ物語』小考」

要旨:
『こほろぎ物語』は、一名を虫三十六歌仙ともいい、虫による歌合せをテーマとする異類物の一つである。
比較的マイナーな作品ながら、本作が興味深いのは、作者を島津斉彬の母・賢章院に比定する説がある点であろう。
本発表では、物語や和歌の読解とともに、この説に注目し、『こほろぎ物語』をめぐる文化状況に関して若干の考察を試みることを目的とする。
虫の歌合わせがなぜ賢章院の作とされ、それがどんな意味をもっていたのか。まずは問題点の把握からはじめてみたい。

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2009/09/15
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新宿ミュンヘンで誕生。

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