お伽草子『伊吹童子』は酒呑童子が誕生して大江山に至るまでを描いた物語である。
伝本はいずれも絵巻物である(ただし赤木文庫旧蔵本は奈良絵本を絵巻に仕立てたもの)。
本文の系統はA類(国会図書館所蔵本他)、B類(赤木文庫旧蔵本他)の2系統に分類できる。
さて、今回新出本として紹介したものは幕末~明治大正期(恐らく近写本)の巻子本である。
しかも後半のみの残欠本である。
ところがその本文はB類本の赤木文庫本と同系統であった。
この系統はほかに個人蔵の絵巻が1巻あるが、もともと赤木文庫本のツレである。
したがって、赤木文庫本のみの孤本と言ってよいものであった。
今回、それと同系統の伝本が出てきたことは、赤木文庫本の本文(『室町時代物語大成』2所収)校訂や性格を見る上で有益であろうと考える。
本文をつぶさに比較するに、若干の異同が認められる。
また、新出本の親本もしくは祖本にあったであろう挿絵の位置(改行部分を挿絵料紙挿入箇所と判断)と異なる。
したがって両者は直接的な親子関係にあるものではなく、また姉妹関係にあるものでもないと思われる。
以上、発表者伊藤慎吾による要旨でした。
次回は2月25日18時から、国学院大学で開催します。
第16回例会のご案内です。
日時 1月28日(金曜日) 18時
場所 国学院大学
※待ち合わせ場所は次の通りです。
学術メディアセンター(図書館が入っている建物)
1階ラウンジ
http://www.kokugakuin.ac.jp/content/000007812.pdf
伊藤慎吾
お伽草子『伊吹童子』新出本の紹介
『伊吹童子』は酒呑童子が誕生し、大江山に〈鬼が城〉を築くまでを描いたお伽草子である。
系統は2つに大別される。
新出本は江戸末~明治期のごく新しい写本であるが、巻末に絵が一図見られるから一種の絵巻と看做される。
今回は本資料の本文を翻刻して、参加者から種々の意見を賜りたく思う。
本発表では、日本の古典作品に登場するクジラに関する認識の諸相を概観した。従来、古典文学に見られるクジラは現実の生物の問題のみに還元して考えられがちであったが、必ずしもには現実のクジラの問題のみには還元できない問題を多く孕んだ存在であったということが確認できた。
漢籍の「鯢」字の解釈の問題に端を発して、空想的存在としてしか説明のつかない四つ足の大魚としてのクジラ像も生み出された例に顕著なように、日本に於けるクジラの認識、ひいては日本に於ける自然認識というものは、必ずしも日本人が実見できる自然環境との対話のみから育まれた訳ではなかったことが窺える。漢籍や仏典の情報、或いは日本の古典の知識に基づいて再解釈され、また読み替えられることによって、在来の自然認識が多分に異なった、新たな自然認識が創成されていったものと思われる。
以上、発表者杉山和也氏による要旨でした。
次回は1月28日18時、国学院大学にて開催します。
本作品は続帝国文庫の万物滑稽合戦記にも翻刻されているが、それは2巻本である。 これに対して、架蔵本は3巻本。 どちらも馬喰町の吉田屋小吉板で、どちらが先行するのは不明。 おそらく3巻本であろう。 もともとストーリーとは関係なく、機械的に3巻に分けたものを、後に中盤のストーリーの切れ目のいいところで分けて2巻本にし、その際、後半を「世帯平記諫略巻」と改題したのだろうと思われる。
なお、ネーミングについては下記の記事を参照されたし。
http://blogs.yahoo.co.jp/warszawa11045/20545047.html
以上、発表者伊藤慎吾による要旨でした。
次回は12月27日13時、新宿にて開催します。
詳細は追ってお知らせします!