異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
「化け物寺」や「化け物問答」という空き寺に動植物や古道具の化物が現れる昔話を整理。全体的な傾向として、空き寺に現れる「器物の怪」は器物そのままの名前や姿を形容した名前が使われ、「動物の怪」は、漢字を音読みにした謎になっている。
東北北部と九州南部・沖縄では器物が化けたものが現れる話が色濃く、「遠方の一致」が認められる。こうした現象を周圏論から、「器物の怪」は古く、自身の名前(正体)を音読みで名乗る「動物の怪」は後から広まったものと考えられる。
①「器物の怪は化け物寺において古い型」②「蜘蛛の怪は化け物寺において古い型」③「椿の話は西日本に分布」④「器物の怪のみのものの後、問答において家の中の器物が外の化け物(主として動物)を呼び寄せる型が広まっていった」⑤「動物だけの問答は数が少ないがさらに④から器物の欠落から成立」とした。
蜘蛛の怪に関しても東北と沖縄に分布していることを根拠に、上記②のことを述べた訳だが、質疑応答において沖縄という地域の特殊性について指摘がなされたため、蜘蛛に関しては留意したい。同様に沖縄の口承文芸についてはさらに事例を集めたうえで検討が必要になろう。また、西日本に「ていていこぼし」などと呼ばれる「椿の化け物」がみられることに際して、東北では「梅の化け物」になっていること、「椿の化け物」の名前にある「ていてい」や「デンデン」は形容するためのオノマトペであろうと指摘した。
さらに韓国の妖怪「トケビ」と日本の「器物の怪」との類似性を指摘。「絵巻に書かれた器物の妖怪」との比較を行った。(ここでの参考文献としては 金容儀「韓国のトケビと日本の「付喪神」 器物の妖怪としての韓国のトケビの性格」小松和彦編『妖怪文化の伝統と創造』せりか書房2010年 を使用)
また、「付喪神」という語の使用について、児童書や漫画、文芸作品や学術書からエポックになると思われるものを抽出した。90年代前半の語の使用の流れや、前回までの異類の会での発表をおさらいするとともに、語の定義が曖昧であることに言及。
また、昔話以外の「器物の怪」として「マット」(久保孝夫『女子高生が語る不思議な話』青森県文芸協会出版部 1997年)や「PS2」(伊藤慎吾編『妖怪・憑依・擬人化の文化史』笠間書院 2016年)などを挙げ、新たな怪が生まれては消えていくことを紹介した。
質疑応答、フリートークでは、「椿の槌」の怪異性について議論がなされた。また「器物の怪」についても、ベトナムの漢文に参考になりそうな類話が見られるという情報などが出た。アジアの類話についても調べることは必要になりそうである。『一休諸国物語』と『宿直草』の挿絵についても質疑がなされた。また、字解きの謎の類例として室町の天台宗のものに既に見られること。「ていていこぼし」と同様に東北の樹木の怪にや昔話にオノマトペを名前にもつフレーズあるいは妖怪が分布しているという指摘など、示唆に富んだ意見を聞くことができた。「付喪神」という研究者間でも定義がまちまちである概念を今後どうしていくべきかということなども質疑がなされた。以上のように多くの課題が見つかり議論が盛り上がった。今後検討して還元していきたい。(文・永島大輝)
以上異類の会68回例会(2016年11月26日・於國學院大學若木タワー)の要旨発表の要旨です。
東北北部と九州南部・沖縄では器物が化けたものが現れる話が色濃く、「遠方の一致」が認められる。こうした現象を周圏論から、「器物の怪」は古く、自身の名前(正体)を音読みで名乗る「動物の怪」は後から広まったものと考えられる。
①「器物の怪は化け物寺において古い型」②「蜘蛛の怪は化け物寺において古い型」③「椿の話は西日本に分布」④「器物の怪のみのものの後、問答において家の中の器物が外の化け物(主として動物)を呼び寄せる型が広まっていった」⑤「動物だけの問答は数が少ないがさらに④から器物の欠落から成立」とした。
蜘蛛の怪に関しても東北と沖縄に分布していることを根拠に、上記②のことを述べた訳だが、質疑応答において沖縄という地域の特殊性について指摘がなされたため、蜘蛛に関しては留意したい。同様に沖縄の口承文芸についてはさらに事例を集めたうえで検討が必要になろう。また、西日本に「ていていこぼし」などと呼ばれる「椿の化け物」がみられることに際して、東北では「梅の化け物」になっていること、「椿の化け物」の名前にある「ていてい」や「デンデン」は形容するためのオノマトペであろうと指摘した。
さらに韓国の妖怪「トケビ」と日本の「器物の怪」との類似性を指摘。「絵巻に書かれた器物の妖怪」との比較を行った。(ここでの参考文献としては 金容儀「韓国のトケビと日本の「付喪神」 器物の妖怪としての韓国のトケビの性格」小松和彦編『妖怪文化の伝統と創造』せりか書房2010年 を使用)
また、「付喪神」という語の使用について、児童書や漫画、文芸作品や学術書からエポックになると思われるものを抽出した。90年代前半の語の使用の流れや、前回までの異類の会での発表をおさらいするとともに、語の定義が曖昧であることに言及。
また、昔話以外の「器物の怪」として「マット」(久保孝夫『女子高生が語る不思議な話』青森県文芸協会出版部 1997年)や「PS2」(伊藤慎吾編『妖怪・憑依・擬人化の文化史』笠間書院 2016年)などを挙げ、新たな怪が生まれては消えていくことを紹介した。
質疑応答、フリートークでは、「椿の槌」の怪異性について議論がなされた。また「器物の怪」についても、ベトナムの漢文に参考になりそうな類話が見られるという情報などが出た。アジアの類話についても調べることは必要になりそうである。『一休諸国物語』と『宿直草』の挿絵についても質疑がなされた。また、字解きの謎の類例として室町の天台宗のものに既に見られること。「ていていこぼし」と同様に東北の樹木の怪にや昔話にオノマトペを名前にもつフレーズあるいは妖怪が分布しているという指摘など、示唆に富んだ意見を聞くことができた。「付喪神」という研究者間でも定義がまちまちである概念を今後どうしていくべきかということなども質疑がなされた。以上のように多くの課題が見つかり議論が盛り上がった。今後検討して還元していきたい。(文・永島大輝)
以上異類の会68回例会(2016年11月26日・於國學院大學若木タワー)の要旨発表の要旨です。
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