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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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タイトル:
 勘五郎火、二つに見るか?一つに見るか?
発表者:
 怪作戦テラ氏

要旨:
 「勘五郎火」に関する資料を確認していくと、当初は「一つの火」であったものが、「母と子の魂魄なら二つだろう」というイメージからか、徐々に「二つの火」が出るものとして扱われ、現在ではすっかり地域住民の認識や郷土資料上も「二つの火」が出る話として扱われていることが分かる。「勘太郎火」という呼称については、地元の資料からは確認できない。石井研堂の改変が元ではないかと考える。また「岐阜のアリマサ婆が語った」とされる部分は省かれることが多い。徳授寺は現存しており、特に現地で「勘五郎火」のアピールはされていないが、『徳授寺史』(出版元は徳授寺)でも勘五郎火について扱われており、太陽和尚による供養自体は事実ではないかと考えられる。初出である『雑話犬山舊事記』の記録者は太陽和尚の同世代人で、地域行政の責任者も勤めていた。勘五郎氏自体は「四百年前にあった話」という占い師の証言に出てくる名なので、架空の人物と思われる。しかし、岩倉や東春日井郡にも、犬山とは別の「勘五郎火」があったとすれば、尾張北部で「勘五郎火」という呼称で、母が子を探す怪火の文化があった可能性は考えられる(犬山の影響を受けて拡がった可能性もある)。
 
※これは2022年2月27日(日)にオンラインで開催された第118回異類の会の報告です。
※上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名を明記してください。
※次回は3月13日(日)16時30分オンライン開催です。

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第118回開催予告

日時:2月27日(日)15時
場所:オンライン開催(Zoom)

タイトル:
勘五郎火、二つに見るか?一つに見るか?

発表者:怪作戦テラ

要旨:
母子二つの怪火が出る事例として扱われる事の多い「勘五郎火」。
しかし、近世の資料などでは特に「二つの火が出る」内容として書かれてはいない。
また資料中で言及される寺院は現存し、資料の作者とも関連があることが分かった。
「雑話犬山舊事記」「犬山視聞図会」「犬山里語記」などに書かれた記述を確認しつつ、勘五郎火の詳細に迫りたい。


※来聴歓迎!
初めて参加する方は
 TwitterID: @iruinokai
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タイトル:
 「魂呼び」の研究
発表者:
 鈴木慶一

要旨:
「魂呼び」は古くから口承により伝えられてきた失われた習俗で、戦後には殆ど消滅してしまった。民俗学上、柳田国男が取り上げて以来総合的な分析には至っていなかった。今回の研究は全国の約八百事例を確認し、魂呼びとは何だったのかを明らかにする ことを目的としている。
 
<まとめ>
・屋根、枕元、井戸の分布には空白地帯も含め地域差が認められた。
・呼ぶ原因には難産や若者重視の傾向 等、様々で画一的ではない。
・呼ぶ場所は、原因、人、呼ぶ対象者などによって異なる傾向がある。
・魂呼びを行う人は身内以外にも近隣の人が加わるなど地域社会の中での共同性が認められた。
・従来あまり注意が払われていなかった魂呼びを行うタイミングは殆どが死亡前、謂わば生死の境であった。
・残された文献上の記述と照合すると、魂呼びの作法は数百年間あまり変化せず伝えられてきていることが分った。
 
<補足>発表の後の諸意見質問から次のような点を補足しておきたい。
(ア) 魂呼び行われるタイミングは生死の境である。
(イ) 呼ぶ人は身内や地域の人々で宗教者は基本的に関与しない。
従って
・斎藤英喜論文にある「魂魄の出現」について、魂呼びとの関係は当論文(283頁)にあるのは病気治療延命となっており、また宗教者関与でもあり、異なる作法と位置付けられる。
・タイラーの『原始文化』にやはり宗教者が関与していない例がみられるというのは有力な参考意見となる。(手元にある本の一部で確認したが見当たらないため、後日全文で確認予定。)
・「魂よばい」を仏教側から批判した「塵添壒囊鈔」に先立ち「塵袋」にも同様の批判がみられる。従って「魂呼び」が鎌倉時代から広く行われていたことが分った。(なお、当指摘は赤田光男が『祖霊信仰と他界観』で同様に指摘しているが「魂呼び」の事例の中に宗教者が実施するものを含めているので正確に捉えているとは言い難い。)
・山岸凉子「籠の中の鳥」はやはり宗教者の行う儀礼 に該当するが、タイミングからは生死の境の習俗を描いたと思われる。
・『棗と石榴』にある「魂呼び」は「叫魂」となっており、大修館書店の中日大辞典によると「主に子供などが病気でひきつけたり、人事不省になったりしたとき」家にお帰りよとどなることという意味合いをもつことになる。所謂「魂呼び」とは異なり生死の境よりはやや病気対応の儀礼に近いようになる。しかし『棗と石榴』の文中ではむしろ死亡後であり「魂呼び」に近い状況で名を呼んでおり使用する道具(箕)も場所(屋根)も類似。日中文化比較上参考になる興味深い事例 。
・呼称の問題について、単純に名称だけで比較すると最も多いのが呼び戻し(或は呼び戻す)で次が呼び返し、以下魂呼び、魂よばいの順となる。但し中にはタマスヨブ(青森県)のように地域的なものも存在。
一方「魂呼び」といっても死者の霊魂を呼ぶ場合の表現もあり、例えば赤城山だったと思いますが盆などに霊魂を呼ぶ習俗があり柳田国男が「魂呼び」と紹介。呼称の紛らわしさは魂呼びの研究自体の中で解決していかなければならない問題と考えている。

これは2022年1月29日に開催された第117回異類の会の報告です。
上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名、本サイト名及び記事URLを明記してください。
※次回は2月27日(日)15時オンライン開催です。

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第117回開催予告

日時:1月29日(土)15時
場所:オンライン開催(Zoom)

タイトル:
「魂呼び」の研究

発表者:鈴木慶一氏

要旨:
 魂 呼 び は 古 く か ら 伝 承 さ れ て き た 習俗で 、人 間 が 生 死 の 境 に 臨 ん だ 状 態 を 、霊 魂が身 体 か ら 遊 離す る こ と に よ り 死 亡 の 危 機 に 見 舞 わ れ て い る と 考 え 、そ の 遊 離 した魂 を 身 体 に 呼 び 返 す た め 、大 声で そ の 人 の 名 を 呼 ぶ な ど し て 、蘇 ら せ る こ と を 目的と し て い る 。こ れ は 儀 礼 的 な も の と し て 考 え られるが 所 定 の 作 法 に 基 づ い た も のでも な く 、 人 か ら 人 へ 伝 え ら れ て き た も の で ある。
 文 献 上 で は 、平 安 時 代 中 期 の『 小 右 記 』で 、屋 根 の 上 か ら の 魂 呼 び が 行 わ れ て いたこ と が 記 さ れて い る が 、類 似 の 儀 礼 と し て の 招 魂 が 、中 国 で は『 礼 記 』に 記 さ れ ている 。ま た 、東 ア ジ ア で は 他に 韓 国 に も 似 た よ う な 習 俗 が み ら れ て い る 。
 民俗学上はじめて取 り 上 げ た の は 、 柳田國男 である が 、 資 料 不 十 分 で 簡 単 な 説 明 程 度 で あ った。そ の 後 、井 之 口 章 次 に よ り あ ら ま し が 捉 え ら れ た 。し か し そ の 後 の 研 究 で も 総合的 な 分 析 に は 至 って いない。( 五 来 重、板橋春夫、藪元晶ほか) その要因 として 1 9 5 0 年 頃 に は ほぼ 消滅 し て し まっ た 習 俗 で 、実 態 を 把 握 す る こ と が 困 難 で 、推 測 に 頼 っ て 論 を 展 開し てい た こ と に あ る と い え よ う 。今 回 の 研 究 は 全 国 の 約 800 事 例 を 確 認 し 、 魂 呼び とは 何 だ っ た の か を 明 ら か に す る も の で あ る 。

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タイトル:
 
菌類妖異考―ハドリアヌスタケ,天狗の麦飯,七面山の珪藻土―
発表者:
 糟谷大河

要旨:
 題目:菌類妖異考―ハドリアヌスタケ,天狗の麦飯,七面山の珪藻土―
発表者:糟谷大河氏
 
要旨:
菌類とは,きのこ,カビ,酵母などを含む生物群を指す。演者は菌類学を専門とし,菌類の中でも,特にきのこ類の系統進化,分類,多様性,分布などを明らかにするための研究を続けている。そのため,日本列島の各地で野外調査(つまり「きのこ狩り」)を行っているが,その過程で,菌類がかかわる何とも奇妙で,不思議な現象・対象に遭遇する機会を得た。今回は,菌類がかかわる3つの「妖異」について話題提供を行った。

 (1)ハドリアヌスタケ:和歌山県白浜町の公益財団法人南方熊楠記念館には,「ハドリアヌスタケ」と称される液浸標本が収蔵・展示されている。この標本は,インドより輸入され,倉庫の中に保管されていた綿花の塊から南方熊楠が発見・採集したもので,スッポンタケ科のきのこの一種ではないかと推測されている。しかし,標本の写真や,南方熊楠の描画記録を見る限り,これがそもそも,本当にきのこの仲間なのか否かも判然としない。そこで「ハドリアヌスタケ」の標本の形態的特徴の観察結果や,炭素安定同位体比分析を行った結果を報告し,その実体について議論した。

 (2)天狗の麦飯:長野県の黒姫山や,長野・群馬県境の浅間山,湯ノ丸山周辺の土壌中には,「天狗の麦飯」と称される微生物の塊が産生する場所がある。「天狗の麦飯」は「食べられる土」とも呼ばれ,長野県の北信・東信地域では,「飯砂」あるいは「謙信味噌」などとも称され,修験者が山岳修行の際に食用としていたとか,飢饉の際の食糧とした,といった言い伝えが残されている。この「天狗の麦飯」の実体を明らかにするため,明治中期より様々な生物学者が研究に取り組んできた。近年では,「天狗の麦飯」は10種以上の細菌類からなる微生物の集合体であるとされているが,その生成に関わる生物群集や,生成機構の全容解明には至っていない。そこで,演者らは黒姫山産「天狗の麦飯」標本中に存在する菌類の調査や,湯ノ丸山での野外調査を行い,「天狗の麦飯」中に存在する菌類群集の解明を進めている。ここでは現在までに得られたこれらの調査結果を報告した。

 (3)七面山の珪藻土:山梨県身延町の敬慎院脇に「無熱池(一の池)」と呼ばれる池がある。池の底泥は白く,洗って乾燥させたもの(白土)が切り傷や腫物などの皮膚の傷に,また,熱さましに効能があるとされ,約500年前から利用されていた。甲州庶民伝によれば,マラリアで苦しむ兵士たちにこの妙薬を飲ませたところ,百人近い病人が元気を取り戻したという。この白土は,植物プランクトンの一群である珪藻類の殻が,長年にわたり池の底に堆積して形成された珪藻土である。演者らは,マラリアに効くと言い伝えられる「無熱池」の白土の実体を菌類学の視点から,そして,池の形成年代や地形発達史について,地形学・地質学の視点から明らかにする計画であり,調査を始めている。ここではその概要を報告し,今後の展望を議論した。
(文・糟谷大河氏)
 
※これは2021年12月19日に開催された第116回異類の会の報告です。
※上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名、本サイト名及び記事URLを明記してください。
※次回は1月29日(土)15時オンライン開催です。

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プロフィール
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異類の会
年齢:
15
性別:
非公開
誕生日:
2009/09/15
自己紹介:
新宿ミュンヘンで誕生。

連絡先:
gijinka☆way.ocn.ne.jp
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