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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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タイトル:
 妖精は武装する・旅するゴブリン2
 ~80年台における雑誌日本版ウォーロックにおける読者投稿をめぐって~

発表者:
 河津創

要旨:

 今回の発表では、1980年台における雑誌、日本版ウォーロックはファイティングファンタジーシリーズのサポート誌として発刊され、T&Tもサポートしていく。そしてその準備誌であるゲームブックマガジンにおける読者投稿に関して調査を行った。

 前回発表(*)の調査において確認できた、ファイティングファンタジーシリーズ、タイタンの世界におけるテキストと挿絵において、目立った表現・種族があった。これらを照らし合わせ、読者投稿における共通性や傾向を探り、ファイティングファンタジーシリーズの人型の人間ではない存在たちが、いかに再表現されていたのかを探った。
 分析の方法としては前回の発表にて、特徴として見えた、”武装していること” ”耳がとがっていること” ”肌にテクスチャのようなものがあること(かけ網、ウロコ、点描、シミのような表現)”をもって傾向を探った。人物と、平均的な人物が持たない特徴を備えている人ではないものをモンスターに類するものとして分析した。また随時モンスターの名前や容姿に関する表現があればチェックした。
 調査の対象としたのは、ゲームブックマガジン創刊号から6号の読者投稿公コーナー、日本版ウォーロック創刊号から36号の読者投稿記事である「ウォーロックサロン」における、お便りのコーナー、とそこから派生した「教えて?私が答えよう!」のコーナーであった。
 ゲームブックマガジンのテキスト投稿の表現としては、ゲームブックのランキングやゲームシステムやプレイ感に関するものが多く、モンスターが取り扱われていても名前だけの端的なもので、その特徴に言及しているものは2例、イラスト全体に対しては3例見られただけであった。モンスターイラスト特集が組まれたところ、応募が多くイラストにおける投稿がすべてのイラストにおける投稿117例中67例と過半数を占めた。人型のうちとがった耳は7例見えた。テクスチャのあるものは5例、武装しているものは16例であった。またほとんどオリジナルモンスターが多く、前回の調査で対象とした種族の結果を回収するようなものは少なかった。
 日本版ウォーロックのテキスト投稿では総投稿数579件中最も言及されたのはエルフの12例次いでゴブリンの8例、トロール、ドラゴン、ドワーフの7例づつ、メデューサの6例スライムの6例と続いた、それぞれのモンスターの表現が投稿者間のやり取りにおいて繰り返して使われるという内容であり示唆的なものにとどまった。また登場モンスターをみると、ファイティングファンタジ―シリーズの作中やモンスター事典からはみ出たものが多くみられた。読者におけるゲームブック外の著作物の言及が多く見られ、最も多かったD&Dが13回、ドラゴンランスが7回、指輪物語が6回、クトゥルフが5回と、記事における表現の元がファイティングファンタジー以外の著作物に開かれていることがうかがえた。種族の容姿に関する表現はそれぞれ2、3例づつであり、前回の調査で見られたエルフにおける”背が高い”という表現と、ゴブリンにおける”醜い”という表現が1例づつであるが共通していた。
 イラスト投稿は総投稿数301例のうち人ではないと考えられるものがイラスト中に存在したのは182例で過半数であった。イラスト中に描かれた存在659例のうち人物が355例で人ではないものが304例であった。テクスチャのあるものは33例であった。名前の併記してるものは104例であった。全体としては人ではないものに関しては名前のない人型の肌にテクスチャのないとがった耳を持つものが人物に比べるとやや武装しがちで紙面を構成していた。とがった耳に関してはテキストでは触れられないが、人ではないものの表現としてベーシカルに紙面の中で用いられてきたことが前回の調査との共通点であった。一方、前回の調査において多く確認できた肌におけるテクスチャの表現は少なくなっていた。このことに関して「ウォーロック」のイラストやカットはもっとまんがっぽいのがいい。」(ウォーロック4号)という読者投稿が掲載されており、編集者と投稿者の共犯関係をうかがわせるものであった。

 質疑においては、
日本版ウォーロックという雑誌の読者投稿欄はその他のゲーム関係の雑誌と傾向が違うこと。D&Dのマガジンにおける表現はどうだったかということ。同人誌や漫画情報誌に投稿するような人たちがゲーム雑誌に人ではない存在を描くようになった可能性も指摘された。また肌におけるテクスチャ表現に関しては雑誌としての見栄えと採用の問題、はがきという形式もあるのではないかという指摘があった。
 さらなる媒体やゲームシステム、表現の中で対象を探る課題が残されるものであった。
(文・河津創氏)

*前回発表=第110回「旅するゴブリン~1980年代ゲームブック、ファイティング・ファンタジーにおける妖精的ヒューマノイドの表現~」


*これは8月31日(日)にオンライン(Zoom)で開催された第146回の要旨です。
*上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名を明記してください。
*次回は9月2日(日)15時にオンライン(Zoom)で開催予定です。

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第146回開催のご案内
日時:8月31日(土)17:00 
会場:オンライン(Zoom)

タイトル
妖精は武装する・旅するゴブリン2
~80年台における雑誌日本版ウォーロックにおける読者投稿をめぐって~

発表者河津創氏

要旨:
1980年台に日本においてファイティング・ファンタジーのタイタンの世界を共有するゲームブックが発刊された。2009年に該当シリーズの携帯ゲーム化においてイラストを担当した発表者は、ゴブリンとオークの表現が画一性を持たせたりかき分けることに関して難しさをもっていることへの疑問から出発し、一連のファンタジーシリーズを通してみることで、その善の種族・悪の種族においてイラストとテキストの偶発的な関係を当会において、旅するゴブリンとして発表した。モンスター・怪物・化け物・妖怪(日本語版における原文訳)の表現についてはソーサリーシリーズ2巻の巻末の安田均による解説でその存在について補足されるが、作中の表現は作品外部の表現を参照するよう開かれていた。日本における公式的な言及はモンスター事典を待たねばならないがそこで用いられるイラストは一連のシリーズから再利用されているものが多い。そういった中で、日本版ウォーロックでは、読者と雑誌という関係の中でヒューマノイドタイプの異類たちがどう取り扱われてきたのか、タイタンを背景世界としたゲームブックを取り巻く表現としてゲームブックマガジン、ウォーロックの創刊号から89年12月までを対象に読者投稿を中心とした分析を試みる。

※来聴歓迎! 初めて参加する方はX(舊Twitter)
  @NarazakeMiwa
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タイトル:
 最強の薬を手に入れたと思ったら戯文だった件。
 ― 薬に模した教化戯文における表現の方法に関する小攷 ―


発表者:
 羽鳥佑亮
要旨:

 江戸時代の雑多な戯文のうち、薬の喧伝に模したもの、殊に何らかの教化の方便となす戯文に注目し、いかなる表現によって薬の喧伝らしくしているかを、こころみに考察した。


 愚考には、大きく、「枠組」、「内容」、「語感」とにその表現を分け、さらに、「枠組」のなかに、「形式」(形式に文言をあてはめる)、「構成」(構成に文言を羅列する)を、「内容」のなかに、「連想」(喧伝の文言から連想される教化の文言の配置)、「音韻」(喧伝の文言に適した音韻の教化の文言の配置)を、「語感」のなかに、「掛詞」(喧伝の文言と教化の文言を同じ音にする)、「譬喩」(喧伝の文言と教化の文言を同じ音にする)を、それぞれ設け整理した。


 質疑においては、片仮名での名称を用いた場合や、それぞれの文言がいずれも「らしさ」をもっていないが組合わせてはじめて「らしさ」が漂う場合をいただいたが、今回とりあげた薬の喧伝に模したものでは応用がきかず、答えを導くことができず心残りである。今後の課題としたい。また、薬の喧伝に模した戯文を集めたものとして、江戸時代後期『視薬霞報條』を御教示いただいた。感謝を申し上げる。


 こころみの論としたが、現状においては、いずれの分野の俎上にも載せ難い。今後、論の位置づけを整備していきたい。

(文・羽鳥佑亮氏)

*これは7月28日(日)にオンライン(Zoom)で開催された第145回の要旨です。
*上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名を明記してください。
*次回は8月31日(日)17時にオンライン(Zoom)で開催予定です。

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第145回開催のご案内
日時:7月28日(日)16:00 
会場:オンライン(Zoom)

タイトル
最強の薬を手に入れたと思ったら戯文だった件。
― 薬に模した教化戯文における表現の方法に関する小攷 ―


発表者:羽鳥佑亮
要旨:
 江戸時代の雑多な戯文には、しばしば薬の喧伝に模したものが散見される。これを享受した人々は、戯文ながらも、実際の薬の広告と共通する、いわば「薬の喧伝らしさ」を感じとったであろう。実際、実際の薬の広告とともに伝承された戯文もある。では、その「薬の喧伝らしさ」の正体は何だろうか。
 本発表では、
戯文のなかでも、比較的にどこが戯文としての箇所であるか判断のつきやすい、何らかの教化の方便となす戯文(「教化戯文」と定義)をとりあげる。これらから薬の喧伝に模したものを用い、何をもって「薬の喧伝らしさ」を醸しだし漂わせているかを考察する。
※来聴歓迎! 初めて参加する方はX(舊Twitter)
  @NarazakeMiwa
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タイトル:
 2023年浅草寺歳の市にみられる『藤娘』の羽子板について

発表者:
 平井優香
要旨:

 江戸時代東海道沿いの宿場、大津追分で製作・販売されていた大津絵は土産物として買い求められてきた。そして後に人形浄瑠璃、歌舞伎の演目に採用されさらに人気を博していった。


 その大津絵の中でも「藤娘」は主要な画題であった。黒の塗笠を被り藤の花房を担いだ着物姿の若い女性という姿は歌舞伎舞踊の演目や人形、羽子板に描かれており現在も知られている。


 本発表は2023年に東京都台東区浅草寺において12月17日から19日まで開かれていた浅草寺歳の市(通称羽子板市)で確認した167事例の「藤娘」を描いた羽子板を分析し、その造形の多様さを示すことを目的としている。


 衣裳の面では、大津絵「藤娘」は黒を基調とした柄もわずかな着物姿であるのに対し、歌舞伎舞踊「藤娘」は藤模様が施された華やかで色彩に富んだ衣裳である。羽子板の事例においては歌舞伎舞踊「藤娘」と共通した色彩、模様の衣裳が多く、大津絵ではなく歌舞伎舞踊「藤娘」から直接的影響を受けた造形と言える。


 また、藤の花については花房が描かれていない事例が複数見られた他、笠を被らず手に持つという事例も複数確認した。


 これらは、舞踊の最中に笠を被らず花房も持たない場面があることから、歌舞伎舞踊の演目に取り入れられたことで身体性を獲得した「藤娘」が見せた姿が多様化した故であると考えられる。さらに、笠に藤の模様が描かれた事例が多く、これは大津絵、歌舞伎舞踊の「藤娘」ともに見られない特徴である。


 最後に面相(藤娘の顔)についてであるが、丸顔のものが殆どであり、歌舞伎役者を連想させるような面長の面相を持つ事例は167件中わずか4件であった。


 文化・文政期に登場し、人気を博した押絵羽子板は役者のブロマイドとして作られていた歴史的背景が存在する。しかし、女性的な丸顔の面相をした事例、その中でも大きな目をした幼さを感じる面相も複数確認できたらことから、面相に対して需要の変化があったことが考えられる。


 本発表では、167件の「藤娘」の羽子板から衣裳、笠と藤の花、面相という点に注目して分析を行った。


 その結果、衣裳面と笠や藤の花の描かれ方からは歌舞伎舞踊の影響を受けているという結論に至った。また、笠に藤の花を描くという大津絵、歌舞伎舞踊には見られない特徴を確認することができた。 


 一方で、面相に関しては歌舞伎役者のブロマイドの影響は薄れて丸顔の顔立ちが殆どであった。


 このように、本発表では昨年の浅草寺歳の市における「藤娘」の羽子板における造形の多様さを具体的に示すことができた他、その背景に歌舞伎舞踊の影響が存在することまで言及するに至った


 今後は羽子板という造形物自体が持つ特徴や人々の認識、「藤娘」の羽子板に対する人々の需要に注目し研究を進めることを予定している。


(文・平井優香氏)

*これは6月30日(日)にオンライン(Zoom)で開催された第144回の要旨です。
*上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名を明記してください。

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プロフィール
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異類の会
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15
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非公開
誕生日:
2009/09/15
自己紹介:
新宿ミュンヘンで誕生。

連絡先:
gijinka☆way.ocn.ne.jp
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