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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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原辰吉氏「「歩兵の髪切り」と髪切り」

 江戸期の随筆に記録された髪切りや絵画や狂歌に描かれた髪切りの表象を辿り、岡本綺堂「歩兵の髪切り」(『半七捕物帳』)・澁澤龍彦「髪切り」(『うつろ舟』)といった髪切りが登場する文学作品の分析を試みた。
 綺堂の「歩兵の髪切り」では髪切りの手触りとして「天鵞絨か獣の毛のように」という文がある。これは歌川芳藤作の浮世絵『髪切の奇談』に「恰も天鵞絨のごとくなりしとぞ」という記述を意識したものである可能性がある。また作品内で、正体不明の髪切りに対しての解釈が転移していくが、これらの解釈は江戸期の随筆に書かれているものと重複するところがある。従来の髪切りにない要素の付け加えとして、作品の最後に髪切り事件の被害者が死亡するという記述がある。これは理屈のわからない怪談を目指した綺堂の意識のあらわれであろう。
 澁澤龍彦の「髪切り」においては、髪切りが修験者のしわざであるとされる。朝川善庵『善庵随筆』や喜多村信節『嬉遊笑覧』といった随筆において髪切りの正体が修験者と示唆される部分と重複する。澁澤龍彦の「髪切り」においては、髪とそれを切られるという被害を通して、主人公であるお留伊の女性の自覚が描かれていると考えられる。
 文学作品内に描かれる怪異を、その怪異の背景を含めてテキストに還元することによって、明らかになる創作意識もあるのではないだろうか。
 今後の課題としては、映像化資料の分析、髪切りに対する細かな調査(髪切虫との関連、海外で同様の怪異があるか)等があげられた。(文・原辰吉氏)

以上、8月8日例会の要旨でした。

※次回は9月30日(土)14時開催です。

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