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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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「山田野理夫 その怪談と妖怪と美」

 発表者:式水下流氏

 水木しげるの妖怪解説にも多く影響を与えたのが、山田野理夫である。その話の初出を辿ろうとすると藤澤衛彦(前回参照)『妖怪畫談全集〜日本篇上』に行き着くが、それ以前までは辿れない。故に山田野理夫の評価は原義とは異なった妖怪の要素を(水木しげるを通して)流布させた人物として捉える人は少なからずいる。然しながら、山田野理夫の創作の経緯や技法、水木しげる以外に影響を与えた作品などを通して見ながら、その軌跡を俯瞰することで、現在の妖怪の情報の変遷とその価値を見ていった。
 山田野理夫は仙台に生まれ、両親から土地の民話を聞いて育っていた。(原話者に両親の名前も)その後、農林省の調査員、宮城県の編纂委員として色々な土地に赴いたことから東北を中心に聞書を行い、怪談収拾ノートとしてまとめていった。ノートは聞書した話だけでなく、調査した文献から抜き出した話も記載されていたことが、著作から推測できる。
 そこから話を膨らませて、土地土地の個性を崩さないように歴史的強度的抒情を意識したとあるので、一つの話(『宮城の民話』と『仙台伝説集』)を参考に創作の傾向を確認した。地の文を会話文にしたり、同一登場人物の別の話を組み込んだりもするが筋は大きく変えていないが、原文に書いていない誇張表現が幾つが見られた。
 この創作技法が妖怪に対してどのように使われているかを山田野理夫が多く採用している藤澤衛彦『妖怪畫談全集〜日本篇上』のキャプションとの比較も行った。取り扱った妖怪はうわん・イヤミ(否哉)・おとろし・神舞など藤澤衛彦の創作を採用し、山田野理夫が話を膨らませたケースやぬらりひょんや目目連のように山田野理夫がオリジナルで創作したケースを上げて、水木しげるやそれ以降の妖怪解説(図鑑・特撮・ゲーム等)に採用されている事例をあげた。真贋の判定が難しい上手い匙加減で創作されているものもあるが、明らかに誇張しすぎてしまっている例もあり、それらは用例があってもそのような妖怪であるとは思われていない
 また、別項でわいらと赤舌という二体の妖怪に関して細かく分析を行った。元々それらは図だけの特に説明のない妖怪であったわいらは「モグラを掘り食ふ」と藤澤がキャプションを入れたものに、雄と雌の色の話やモグラを食べているのを茨城県の医者が見たという話を更に水木しげるが自論を追加して、拡散されたがためにわいらが茨城の妖怪であるという話やモグラを食べるという話がわいらの要素になってしまっている。
 赤舌は「関口を開き悪業の田を流す」という藤澤のキャプションから農林省時代の水利や治水などの知識から青森の水争いの話とし、赤舌が水門を開くことで解決したという話を創作した。これらは山田野理夫が何を元にしてどのように話を膨らませているかが、よく分かる事例である。
 確かに辿れる情報が得られない状態では、学術的な視点としては、それらを典拠とすることは危険であると言えるが、山田野理夫は学術的に作品を発表していないので、その作品としては決して悪いと言うことにはならず、寧ろ民話や怪談や妖怪話として、情景が浮かび、流麗で読みやすい、素晴らしい作品であることは多くの人に知っていただきたい。
 今後は創作に使われた素材(実際にある伝承であれば、それを明示していく)がどのように変化したのか、それが発表されて以降どのように流布されていったかは引き続き調査していく。情報自体は個々の嗜好や研究の対象として取捨選択は異なると思うが、妖怪の変遷を考える上では、山田野理夫が与えた影響は避けては通れない道なので、少なからず整備はしていきたい。(文・発表者)

(2019年9月21日於武蔵大学)


次回は今月26日午後2時、武蔵大学にて開催します。
詳細は追ってお知らせします。

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日時:9月21日(土)14時
会場:武蔵大学3号館2階3201教室(院生GS)
    ※最寄り駅=西武池袋線江古田駅
          西武有楽町線新桜台駅

          都営大江戸線新江古田駅

発表者:式水下流氏

タイトル:
山田野理夫 その怪談と妖怪と美

要旨:
山田野理夫(1922/7/16- 2012/1/24 詩人・作家・編集者)という名前を見た時におばけや妖怪などの異類を嗜好とする人々は、実際には伝承されていない(と思われる)妖怪の話を創作し、水木しげるの妖怪解説に影響を与えた人物として連想される方が多い。実際に有名なところでは「わいら」という妖怪がモグラを食べているのを茨城県の医者が見たという話(『おばけ文庫2 ぬらりひょん』)や青森県での水争いを「赤舌」という妖怪が解決したという話(『東北怪談の旅』)などは、確かに辿れる情報が得られないので、学術的な視点としては、それらを典拠としすることは危険であると言える。
しかしながら、山田野理夫は学術的な資料として作品を発表している訳ではない点は言うまでもなく、山田野理夫が書いたものが、作品として決して悪いと言うことにはならない。
当発表では山田野理夫が参考にした資料や実際に聞き書きを行った実例、水木しげる以外に影響を与えた作品などを通して見ながら、妖怪の情報の変遷と山田野理夫の軌跡を俯瞰していく。

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〈藤澤衛彦〉関連資料展示会
―御田鍬;・氷厘亭氷泉・飯倉義之3氏所蔵コレクション―


児童文学者、民俗学者など様々な顔を持つ藤澤衛彦に関する資料の数々を展示した。
資料の所蔵者は御田鍬;・氷厘亭氷泉・飯倉義之の3氏である。
まず、氷泉氏による藤澤の経歴や著作に関する詳細な説明のあと、3氏それぞれの資料に関する解説がなされた。

なお、3氏の主たる所蔵資料は下記の通りである。

御田鍬;氏:『新少年』関連資料や日本伝説叢書刊行会関連資料、『日本伝説叢書』自筆原稿や高木敏雄自筆資料など
氷泉氏:『新少年』『風俗雑誌』『猟奇画報』『科学』等の雑誌類や『財団法人紫城建設趣旨』(昭和11年)など
飯倉氏:大小種々の写真類多数

今回の合同展示会の中で、飯倉氏所蔵の写真の幾つかが『雑誌風俗』に使用されていることが判明した。
今後藤澤の著作や携わった雑誌を精査することで、写真と藤澤の著述との関係が明らかになるだろう。
(文責:S・I)


上記は2019年7月27日(於・國學院大學)で開催した第94回例会の報告です。

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〈藤澤衛彦〉関連資料展示会

日時:7月27日(土)17時
会場:國學院大學3号館3301教室
   ※正門左側(神殿の向かい)、食堂の入っている棟の3階です。
 
内容:
藤澤衛彦(1885-1967)は20世紀初頭から伝説研究に携わり、また児童向けの読み物も多く手掛けてきました。
その一環で妖怪関連の著述を行い、それらには貴重な資料も紹介されています。
今回、御田鍬;氏の所蔵品をはじめ、氷厘亭氷泉氏、飯倉義之氏の所蔵品など数多くの貴重な資料を展示します(各氏解説付き)。
初公開のものも少なくないので、この機会を見逃さず、ご参加ください。
 
※どなたでもご参加可能です。
※※上記三氏のほかに、藤澤自筆資料や旧蔵書、初版本などの関連資料をお持ちの方はご持参いただけると幸いです。
※※※藤澤については、下記のページもご参照ください。
  妖怪仝友会HP「藤澤衛彦情報まとめメモ」

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「UFO現象の文化的研究について 円盤搭乗員の分析を中心に」
発表者:小山田浩史氏


本発表は、1947年以来世界各地で目撃報告がなされるようになった「空飛ぶ円盤(UFO)」とその搭乗員(宇宙人)に関する語りが文化的・社会的にどのような意味をも
つのかを考察したものである。
まず「空飛ぶ円盤」という言葉の誕生とUFOに関するヴァレやメウストの見解を整理した。ついで『マゴニアへのパスポート』におけるイーグルリバー事件(1961年)を分析し、西洋の妖精伝承と関連付ける説を紹介する。そして1957年のソ連のスプートニク2号打ち上げに連動する目撃事件と考えられるエベリッツタウン事件、ノックスビル事件に言及した。
これらを踏まえて、
1)「宇宙人」概念の発生と変遷
2)フィクションなどにおける「宇宙人」と報告された目撃事例の相互作用
3)円盤搭乗員の奇妙な振る舞いにはどこまで文化的な意味があるか
といった課題・展望を提唱した。(文責:S・I)



上記は2019年6月29日(於・武蔵大学)で開催した会の報告です。
次回は7月27日(於・國學院大學)での開催を予定しております。

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