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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
タイトル:
 
菌類妖異考―ハドリアヌスタケ,天狗の麦飯,七面山の珪藻土―
発表者:
 糟谷大河

要旨:
 題目:菌類妖異考―ハドリアヌスタケ,天狗の麦飯,七面山の珪藻土―
発表者:糟谷大河氏
 
要旨:
菌類とは,きのこ,カビ,酵母などを含む生物群を指す。演者は菌類学を専門とし,菌類の中でも,特にきのこ類の系統進化,分類,多様性,分布などを明らかにするための研究を続けている。そのため,日本列島の各地で野外調査(つまり「きのこ狩り」)を行っているが,その過程で,菌類がかかわる何とも奇妙で,不思議な現象・対象に遭遇する機会を得た。今回は,菌類がかかわる3つの「妖異」について話題提供を行った。

 (1)ハドリアヌスタケ:和歌山県白浜町の公益財団法人南方熊楠記念館には,「ハドリアヌスタケ」と称される液浸標本が収蔵・展示されている。この標本は,インドより輸入され,倉庫の中に保管されていた綿花の塊から南方熊楠が発見・採集したもので,スッポンタケ科のきのこの一種ではないかと推測されている。しかし,標本の写真や,南方熊楠の描画記録を見る限り,これがそもそも,本当にきのこの仲間なのか否かも判然としない。そこで「ハドリアヌスタケ」の標本の形態的特徴の観察結果や,炭素安定同位体比分析を行った結果を報告し,その実体について議論した。

 (2)天狗の麦飯:長野県の黒姫山や,長野・群馬県境の浅間山,湯ノ丸山周辺の土壌中には,「天狗の麦飯」と称される微生物の塊が産生する場所がある。「天狗の麦飯」は「食べられる土」とも呼ばれ,長野県の北信・東信地域では,「飯砂」あるいは「謙信味噌」などとも称され,修験者が山岳修行の際に食用としていたとか,飢饉の際の食糧とした,といった言い伝えが残されている。この「天狗の麦飯」の実体を明らかにするため,明治中期より様々な生物学者が研究に取り組んできた。近年では,「天狗の麦飯」は10種以上の細菌類からなる微生物の集合体であるとされているが,その生成に関わる生物群集や,生成機構の全容解明には至っていない。そこで,演者らは黒姫山産「天狗の麦飯」標本中に存在する菌類の調査や,湯ノ丸山での野外調査を行い,「天狗の麦飯」中に存在する菌類群集の解明を進めている。ここでは現在までに得られたこれらの調査結果を報告した。

 (3)七面山の珪藻土:山梨県身延町の敬慎院脇に「無熱池(一の池)」と呼ばれる池がある。池の底泥は白く,洗って乾燥させたもの(白土)が切り傷や腫物などの皮膚の傷に,また,熱さましに効能があるとされ,約500年前から利用されていた。甲州庶民伝によれば,マラリアで苦しむ兵士たちにこの妙薬を飲ませたところ,百人近い病人が元気を取り戻したという。この白土は,植物プランクトンの一群である珪藻類の殻が,長年にわたり池の底に堆積して形成された珪藻土である。演者らは,マラリアに効くと言い伝えられる「無熱池」の白土の実体を菌類学の視点から,そして,池の形成年代や地形発達史について,地形学・地質学の視点から明らかにする計画であり,調査を始めている。ここではその概要を報告し,今後の展望を議論した。
(文・糟谷大河氏)
 
※これは2021年12月19日に開催された第116回異類の会の報告です。
※上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名、本サイト名及び記事URLを明記してください。
※次回は1月29日(土)15時オンライン開催です。

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