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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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式水下流氏・永島大輝氏
福島(いわき)・栃木の調査報告 河童・狐を中心に

永島大輝、式水下流の二人で四月に行ったいわき市の調査報告、及び永島の単独での聞き書きの報告発表である。四つのトピックから個々の視点から発表を行った。


 


①湯本豪一コレクションにおける猫鬼、魔像等いわき市由来のものに関する調査報告


 現地に行き、いわき市暮らしの伝承郷で、湯本豪一『日本の幻獣図譜』『古今妖怪纍纍』に記載されている内容を確認するとともに、魔像に関してはそれらがあったとされる「威徳院」の地域が実際に廃仏毀釈の風潮が強かった地域であったことが知れた。しかしながら、市史における廃仏毀釈の記述には威徳院と言う寺院は存在はしないと言う。話を聞き、新聞調査を行なったが、猫鬼・魔像ともに歴史的・民俗的な背景を確認することはできなかった。新聞記事の確認での取りこぼし部分など、細かい調査はできるかもしれないが、これ以上の調査は難儀であると思われる。ただし、それは調査を行った現時点での結果でしかない。今回確認できなかった歴史的・民俗的な背景が出てこないとは言い切れないので、今後の追加情報や類例のコレクションの発見などに期待したい。


 


②家伝薬として伝わる河童の膏薬等河童に関する調査報告


 ①でいわき市暮らしの伝承郷で話を聞いた際に河童の膏薬と呼ばれている家伝薬がいわき市内に存在することを伺い、実際に現地に赴いた。


 話を要約すると実際にはその家では河童の膏薬として伝わっているものではなく、祖先(三代か四代前のお祖父さん)が栃木で習得した骨接ぎの調合を持ち帰った家伝薬であると言うこと。その高い効能と川辺に家があったことから河童と結びついたのではないかと言う話を聞いた。


 『怪異・妖怪伝承データベース』より「河童 薬」で検索をかけた結果から分布と類型をまとめた。いたずらをした河童を懲罰(捕縛、腕切り)した結果、見逃してやる(解放、腕を返却)ことで、薬の調合を教わると言うケースは全国に分布している。今回の調査では河童とは関係ないと言う回答だったが、高い効果から河童の薬と見られる周囲からの見え方の違いに面白さを感じた。PCの不調にて全てを見せられなかったが、実際に薬を塗布するまでの、映像も一部公開した。


 同じくいわき市内では河童の祠を祀っている場所もあり、河童伝承がほど近くに点在することも知れた。


 和歌山でのガシャンボの足跡の話とからめ、妖怪は「不思議さを共有する」ためのものではないか、また、それは場の力によって妖怪とされたり、されなかったりするということを報告した。


 


③狐の話を中心に栃木県の調査報告


 狐の話は現在でも多く聞くことができる。栃木県内の狐の嫁入り(オトカの嫁入り、狐の嫁どり)の場所を確認した。


 オトカとは、お稲荷の音読みだろうが、なぜ狐をオトカと呼ぶかは分からないまま、そういわれていたりする。私自身、それが見えたという現地へ行ったこともないが、話を聞いて不思議さを共有していた。今回場所を確認したが、裏を返せば、実際の風景は伝承に必要ない場合がある。


 また、那須の九尾の狐伝説は「しもつかれ」の由来に関係があり、その由来譚もいくつかのバリエーションがある。録音した音源で共有した。


 「しもつかれ」は初午の食べ物であり、稲荷の祭日である、そうしたところから「しもつかれ」と九尾の狐が結びついたと考えられる。


 


④写真


 狐などが写真に写ったとされる事例を紹介し、写真も見ていただいた。一例をあげると、稲荷神社で写した写真のロウソクの火の形が狐の形になっていたという話。


 


以上の調査・報告を行った。


 


・式水まとめ


 十数年、伝承の実際の体験者あるいは体験者から直接話を聞いた人の話を聞くことは難しくなるといい続けている。確かに年が経てば立つほど、そう言った情報は得られ難くなることは間違いないが、今回永島氏に同行させていただき、まだ拾える話はあると痛感した。


 


・永島まとめ


 調査では多くの方に優しくしていただいた。これからも調査も報告もしていくのだと思う。


 無理なのはわかったうえで、調査体験を共有して一緒に考えてもらいたかった。うまくいったかはわからない。


 今回アカデミックな集まりというよりも「お化け友の会」の側面の強い集まりとなっていた(本会にはそうした側面は強くあり、広く門戸は開かれている。現に発表者たちも研究と職業は関係ない)。


 報告では、妖怪というのは「感覚を共有する」ためのものだというのを言おうとしたのだと思う。それは「恐怖」だとか「不思議」かもしれない。


 妖怪に関して「いるの いないの」という問いを避けてきたと思う(参考『妖怪談義』など)。しかし、発表を聞いてくださった方からご教示を受け、その後考えたが(参考『UMA事件クロニクル』彩図社)、UMAやUFOに顕著な「「いるの いないの」と問わせるような感覚」をメインに共有させる妖怪もいる。ガシャンボや河童は妖怪だが、時折UMA的である。今後の課題とする。


 繰り返しになるが、多くの方に優しくしていただいた。ここでお礼を述べさせていただきます。ありがとうございました。


 


(文・永島大輝/式水下流)


以上、6月30日、國學院大學にて開催された異類の会の報告でした。



 

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