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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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 近年、早物語4種を収録する幕末明治期の写本が現れた(個人蔵)。今回はその翻刻、釈文を作成し、また関連資料を提示した。

1、蚤虱地方争い

これは従来早物語としては知られて来なかったもの。
板倉政談のパロディでもある。

2、和尚蜂合戦(仮題)

これは従来から知られている「清盛蜂合戦」に基づくものと思われる。
鎌倉建長寺の和尚と蜂たちの戦いを描く。

3、蓼地蔵(仮題)

これは菅江真澄『ひなのひとふし』に見える早物語と同根と思われる。
ただし、真澄採録の物語が化け地蔵の所作の滑稽さに重きを置いているのに対し、こちらは地蔵霊験として語られている点に違いがある。

4、酒餅論(仮題)

これは仮名草子『酒餅論』の酒造之丞(擬人化された酒)の言動を抜き出した語り物。『酒餅論』の影響が早物語に及んでいたことを示すのみならず、文字テクストが語り物化した実例である点も貴重。

総じて、早物語のみから成る写本(幕末明治期)は例がなく、且つ、以上のように従来知られていなかったもの、また知られていても異なるモティーフをもつものが出現してきたことで、早物語の伝承の広がりを窺う新たな材料を得たことになる(文・伊藤慎吾)

以上、異類の会第58回例会(2015年11月14日)の発表要旨です。

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艶笑譚は大きくわけて性器や精力の大小を話題の中心とするもの、知恵を以て不倫を行うもの、言葉や物を性的なものと掛けるものに分けられる。
性器・精力の大小は格外能力者のテーマと、不倫は狡智譚のテーマと重なることから、同じ話の場である閉じられた同性集団において語られ易い興味の方向であった。
また、話の主人公としては男性・女性ともに特定の職業者であることが多く、不可侵のものであるからこそ破りたくなる禁忌の侵しの話でもある。
口承資料においては、獣姦譚の報告は少ないが、精力旺盛や巨根といった興味の方向は同一であり、より効果的に話を伝える技術であった。


以上、発表者堀口祐貴氏による要旨でした。

次回の例会は予定では来月10月29日夕方6時から国学院大学にて開催となります。
内容は擬人化の研究史。
詳細は追ってお知らせします。

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前回取り上げた、人魚(エイ、ジュゴン)を漁師が磯で犯すという伝承を大正十二年の沖縄採訪時のノートに折口信夫も書き留めてり、翌大正十三年『三田評論』「信田妻の話」に祖先祭祀における動物始祖伝承を考察する中で儒艮を「先祖の儘の姿で居るといつた骨肉感を抱く様にな」ったものと位置付けている。
この他、南方熊楠が汎アジア的な前記伝承の記述を見出した“支那志”(『Tratados Historicos Politicos Etnicos y Religiosos de la Monarquia de China』1676 マドリッド)について、熊楠の摘記した「ロンドン抜書」の内容と照らし、グーグルブックスがPDF化したスペイン語原書と極めて近い版であると考える事が出来る。


以上、発表者広川英一郎氏による要旨でした。

今月の例会は21日夕方6時からとなります。
詳細は追ってお知らせします。

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口承文芸研究史において、異類と人との性的な接触は異類婚姻譚として扱われてきた。
それは柳田國男の性的な事例を排除するという姿勢とともに、「幸福な結婚」を日本人の重要な人生目標とする。
彼の学問的仮定に根ざしており、以降の昔話の話型の選定にも大きく影響を及ぼしてきたと言える。
無論、異類婚姻譚というタームの正当性は否定できないが、「犬婿入」や、河童聟入りから排除された「遠野物語」の不思議な力で無理矢理娘に通ってくる河童など、「婚姻」譚とするには整合性を欠く説話も多い。
人間の不快感に訴えるような刺激そのものが求められるサスペンス性や、淫靡性に価値が見出されていた部分は排除されてきた結果と言える。
『奇異雑談集』の当該話は、漁師がエイ(鱗を持つ魚よりも人に近い異類として描かれる)を劣情のままに犯し、人ならぬ子どもが生まれるという「奇異」な話であり、南方熊楠によれば東アジア的な広がりを持つことが予想される。
また、文字には残らないが海洋生物と性交渉を行うという実際的な習俗の存在が予想され、日本人の異類に対する感覚の新しい側面が見えてくる可能性がある。


以上、広川英一郎氏による第3回例会発表の要旨でした。

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本日の例会は無事終了しました。
近世前期の『奇異雑談集』に見られる漁師と鱏(エイ)との交歓譚についての発表がおこなわれました。

まず昔話の話型としての異類婚姻譚の問題点を示し、交歓譚という概念の可能性を論じました。
そして具体的事例として上記説話の考察を試みました。

詳細は追って発表者自身によって要旨示されます。
しばらくお待ちください。


なお、次回は年明けの1月26日、午後2時。待ち合わせ場所および会場は今日と同じです。
題材は2009年度同人誌擬人化本の概要把握を試みます。
ではよろしく~。

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2009/09/15
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新宿ミュンヘンで誕生。

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