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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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タイトル:
酒と煙草の合戦物語について
ー江戸時代の異類合戦物『酒煙草合戦』を読むー

発表者:
伊藤慎吾

要旨:
近世中期、各地の名物・物産品が流通するようになる中で、酒や煙草といった嗜好品もまた異類合戦物の中に擬人化キャラクターとして登場するようになった。『酒煙草合戦』はそうした文化的コンテクストを背景に成立した物語と評価できるだろう。
以下、要点をまとめる。

1, 『酒煙草合戦』は徳田本及びたばこと塩の博物館A本から成る甲類と、孤本である同B本の乙類の二つの系統に分けることができる。

2,甲類の二種の伝本の関係はまだ明確ではない。しかし、A本にあるべき本文が欠落していることや勢揃えのパートに伴う軍勢総数の記述が勢揃えから離れていることなどから、A本が大幅に加筆修正したのではないかと思われる。

3, 乙類は甲類から派生したものではなく、同じコンセプトで新たな創作を試みたものと思われる。

4,
甲類乙類ともに越後の在方の酒が擬人化し、また酒造地が登場することが多い点に特色の一つがある。また、煙草は東北、甲信越の産が中心であるが、やはり煙草の産地としては全国的に無名な越後の村名が見られる。一方、越後以外の酒・煙草は主に全国的に知られたもの(伊丹諸白や国分煙草等)、越後に通じる街道筋の産物(会津、米沢、信州産等)である。このことから、本物語は、越後国内の酒・煙草の流通に通じた人物の手になるのではないかと思われる。
B本の旧蔵者が新発田藩の豪農(城下町近郷)であったことを思うと、18世紀後半の、越後国内における物産品の生産や流通に関わった地主層に注目する必要があるかもしれない。
 
なお、徳田本は近刊の『國學院大學栃木短期大学紀要』に翻刻掲載の予定である。
また、会の後、新たな知見を幾つか得たので、それらを含めて今夏までに論文に仕上げたい。
(文・伊藤慎吾)


※これは2023年2月26日(日)にオンラインで開催された第130回異類の会の報告です。
※上記の文章を直接/間接に引用される際は、
必ず発表者名を明記してください。

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