忍者ブログ
異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
1  2  3 
 お伽草子作品『花鳥風月の物語』は、月と花の戦を描いた異類合戦物である。本発表では、花方の勢揃え場面に見られる「花尽くし」を中心に取り上げ、季語に注目しつつ物語の構造を解析した。
 物語は、秋を象徴する月と、春を象徴する花との座敷論という「春秋優劣論」に始まる。着到付の場面では、まず、到着順に春の花々が挙げられ、次に諸国の軍勢として夏・秋の植物が紹介される。ここから、花の中でも春の花々が主力であることが分かる。一方、月方へは月や星が馳せ参じ、天の川原に陣を取る。合戦の場面では、「秋の野の郎等露草(別名:月草)」対「仲秋の名月」という構図となり、深手を負った満月は片破月となる。この場面では「秋対秋」あるいは「月対月」となっている。互いに犠牲を出し、落首などの遣り取りがなされるが、最後は嵐という「秋」の援軍によって月方の勝利が決まった。花は散り行き、月も天に帰り天下太平となる。伝統的な春秋優劣論の系列と同じく、秋の勝利による幕引きである。
 本文にはおよそ三十三種の植物名が織り込まれている。今回は『枕草子』『源氏物語』『徒然草』における「花尽くし」と比較し、また『花情物語』『浄瑠璃物語』『胡蝶物語』などお伽草子作品との共通点も指摘した。また、少なくとも五箇所以上に『和漢朗詠集』の影響が見られる。先行研究では、『和漢朗詠集』をもじった落首に「落花不語」の語がないことから「直接参看したものではない」との指摘があるが、発表者はしほりんたう討死の場面に「落花不語」が見えることから意図的に改変した可能性を述べた。
 本発表では、登場人物(植物や自然現象)の季語から作品を読み解いた。その結果、『花鳥風月の物語』は短編の物語ながら「物尽くし」の手法によって、場面ごとに対比効果と抑揚を生み出していることが分かった。(文・発表者 北林茉莉代氏)


以上、異類の会第44回例会(2014年4月25日・於青山学院大学)発表の要旨です。

拍手

PR
奥浄瑠璃の滑稽物の一種である『虫合戦』を通して、滑稽物と異類合戦物との関わりなど諸問題を取り上げた。
東北の奥浄瑠璃や九州の琵琶説経には短編の異類物が語り物として、また歌として伝承されている。奥浄瑠璃では『雑具合戦』『虫合戦鳥獣の助太刀』『餅合戦』などが主要なものである。
戦前の芸能研究者宮本演彦のノートに記される「虫合戦」は現在確認されるものとは異なるものだったようである。
聞書が残る『虫合戦鳥獣の助太刀』は浮世草子『虫合戦物語』を改作したものと思われる。一方『大寄席噺尻馬』収録の同題作品はその後の改作本ではないかと想像される。
寄席との関わりはまだ明確に指摘できないが、石井研堂が『万物滑稽合戦記』収録の『世帯平記諌略巻』末尾に講釈師が口演したものともいうという付言をしている点に注目し、おどけ講釈や豆蔵講釈において、軍談や軍書咄のパロディとしての異類合戦物の口演の可能性を説いた。(文・発表者 伊藤慎吾)

以上、異類の会第39回例会(7月26日・青山学院大学)発表の要旨です。

拍手

石井研堂は異類合戦物をテーマにした『万物滑稽合戦記』を明治34年(1901)に刊行した。本書は今日入手困難であるが、異類物の歴史を考える上で有益な資料だと思われる。そこで本発表では本書の概要とその今日的な価値とについて私見を述べた。
明治期、近世文学があまり顧みられず湮滅するのを危惧して刊行された正続100冊の帝国文庫の1冊として刊行されたものである。
研堂は本書に先行して前年明治33年に続帝国文庫『日本漂流全集』を出している。研堂は日本の漂流文学の先駆者と評されるだけあって、今日でも漂流関係の著述中で言及されることが多い。
しかし『万物滑稽合戦記』については存命中からほとんど評価されずに今日に至っている。
少年向けの読み物多数執筆したこと、戦前の明治文化研究を主導したこと、錦絵の収集・研究、漂流記の収集・読み物化が高く評価されているが、それとは対象的である。
本書に収録される作品はお伽草子・仮名草子・浮世草子・黄表紙・洒落本・戯文である。
これらは戯作とそれ以前の作品、またその周辺の戯文である。
研堂は『明治事物起原』(大正15年改訂・春陽堂版以降)において万亭応賀に代表される明治期の戯作を「低級文学」と酷評しているが、『万物滑稽合戦記』に収録される諸作品はいずれも「低級文学」と評される類のものであり、自身の編著を否定したものとも受け取れる。
ただそれは、西洋文学の影響下に生まれた近代小説に対する相対的なものであったようである。
研堂は児童向け読み物を数多く手掛けたが、中でも『動物会』(明治22年)や「虫国議会」(『小国民』3-13~4-24、明治24~25年、所収)のような、応賀の『虫類大議論』(明治6年)を彷彿させる異類物を創作している。
また『日本全国 国民童話』(明治44年)序文には童話(昔話・伝説の類)の目的は幼童の教育・啓蒙ではなく「心意上に慰安と歓楽」をもらたすことであると説いている。
これは『万物滑稽合戦記』収録作品の価値を「たゞ、あゝ面白いと云ふ勝鬨(かちどき)の声をあげしめんことを期するのみ」という点に求めていることと同じである。
つまり、本書収録の異類合戦物作品は一種の児童読み物として研堂に捉えられていたのではないかと思われる。
研堂の児童向けの作品は『理科十二ヶ月』や『少年工芸文庫』からも知られるように、理科や工作、博物といった面を重視していた。
多種多様な擬人化された生物がそれぞれの特性を生かして合戦を繰り広げる描写は十分その方面の魅力を伝えるものであった。
文学としては低級だが、児童読み物としては意義のあるものと評価していたのではないかと思われる。
では今日における本書の価値はどこにあるのだろうか。
1つはその先駆性である。室町期から幕末期に至る物語作品から擬人化キャラクターたちが合戦を繰り広げるものを収集し、異類合戦物の大枠を捉えている。
もう1つはその資料性である。本書所収の作品はもともと価値が低く、今日散逸してしまったものが多い。本書以外では翻刻されていないものが10作品、現在所在不明のものが5作品ある。
本書によって示された異類合戦物諸編を手かがりに、今後は錦絵類を含めた各ジャンルの該当作品を発掘・蒐集していくことが必要となろう。


以上、伊藤慎吾「石井研堂編『万物滑稽合戦記』の再評価」(2013年3月例会)の発表要旨でした。
4月例会については追ってお知らせします。

拍手

日時:3月12日(火)14:00~17:00

  
場所:専修大学 神田キャンパス 7号館6階763教室
   ※最寄り駅―地下鉄の九段下駅あるいは神保町駅
    7号館―一番高い建物のわきにある、比較的あたらしいグレーの建物

http://www.senshu-u.ac.jp/univguide/profile/access/kanda_campus.html

伊藤慎吾
「石井研堂編『万物滑稽合戦記』の再評価」

要旨
『万物滑稽合戦記』は続帝国文庫の1冊として石井研堂が明治34年に刊行したものである。
近年、お伽草子研究を中心に、中世から近世にかけての〈異類合戦物〉の物語・絵画が注目されるようになってきた。石井はいち早くこれら群小の諸作品を〈万物滑稽合戦記〉というタームで拾い集め、紹介したのだった。
本発表では本書の概要とその意義について所見を述べてみたいと思う。



※初めて参加を希望される方は、一応、下記にご一報くださるとありがたいです。
 本ブログ右側のプロフ記載の連絡先、もしくは@NarazakeMiwa(ツイッターID)

 

拍手

作品の概要を取り上げ、ネーミングについて解釈を加える。
本作品は続帝国文庫の万物滑稽合戦記にも翻刻されているが、それは2巻本である。 これに対して、架蔵本は3巻本。 どちらも馬喰町の吉田屋小吉板で、どちらが先行するのは不明。 おそらく3巻本であろう。 もともとストーリーとは関係なく、機械的に3巻に分けたものを、後に中盤のストーリーの切れ目のいいところで分けて2巻本にし、その際、後半を「世帯平記諫略巻」と改題したのだろうと思われる。
なお、ネーミングについては下記の記事を参照されたし。
http://blogs.yahoo.co.jp/warszawa11045/20545047.html

以上、発表者伊藤慎吾による要旨でした。
次回は12月27日13時、新宿にて開催します。
詳細は追ってお知らせします!

拍手

カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 26 27
28 29 30
フリーエリア
最新コメント
[10/24 浅井悠太]
[10/24 木下 誠]
[09/26 永島大輝]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
異類の会
年齢:
14
性別:
非公開
誕生日:
2009/09/15
自己紹介:
新宿ミュンヘンで誕生。

連絡先:
gijinka☆way.ocn.ne.jp
(☆を@にかえてください)
バーコード
ブログ内検索
P R
カウンター
異類の会 Produced by 異類の会  AD :忍者ブログ [PR]

SimpleSquare 和心 ver.2 Edit by : 飛雄