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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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タイトル:
 「魂呼び」の研究
発表者:
 鈴木慶一

要旨:
「魂呼び」は古くから口承により伝えられてきた失われた習俗で、戦後には殆ど消滅してしまった。民俗学上、柳田国男が取り上げて以来総合的な分析には至っていなかった。今回の研究は全国の約八百事例を確認し、魂呼びとは何だったのかを明らかにする ことを目的としている。
 
<まとめ>
・屋根、枕元、井戸の分布には空白地帯も含め地域差が認められた。
・呼ぶ原因には難産や若者重視の傾向 等、様々で画一的ではない。
・呼ぶ場所は、原因、人、呼ぶ対象者などによって異なる傾向がある。
・魂呼びを行う人は身内以外にも近隣の人が加わるなど地域社会の中での共同性が認められた。
・従来あまり注意が払われていなかった魂呼びを行うタイミングは殆どが死亡前、謂わば生死の境であった。
・残された文献上の記述と照合すると、魂呼びの作法は数百年間あまり変化せず伝えられてきていることが分った。
 
<補足>発表の後の諸意見質問から次のような点を補足しておきたい。
(ア) 魂呼び行われるタイミングは生死の境である。
(イ) 呼ぶ人は身内や地域の人々で宗教者は基本的に関与しない。
従って
・斎藤英喜論文にある「魂魄の出現」について、魂呼びとの関係は当論文(283頁)にあるのは病気治療延命となっており、また宗教者関与でもあり、異なる作法と位置付けられる。
・タイラーの『原始文化』にやはり宗教者が関与していない例がみられるというのは有力な参考意見となる。(手元にある本の一部で確認したが見当たらないため、後日全文で確認予定。)
・「魂よばい」を仏教側から批判した「塵添壒囊鈔」に先立ち「塵袋」にも同様の批判がみられる。従って「魂呼び」が鎌倉時代から広く行われていたことが分った。(なお、当指摘は赤田光男が『祖霊信仰と他界観』で同様に指摘しているが「魂呼び」の事例の中に宗教者が実施するものを含めているので正確に捉えているとは言い難い。)
・山岸凉子「籠の中の鳥」はやはり宗教者の行う儀礼 に該当するが、タイミングからは生死の境の習俗を描いたと思われる。
・『棗と石榴』にある「魂呼び」は「叫魂」となっており、大修館書店の中日大辞典によると「主に子供などが病気でひきつけたり、人事不省になったりしたとき」家にお帰りよとどなることという意味合いをもつことになる。所謂「魂呼び」とは異なり生死の境よりはやや病気対応の儀礼に近いようになる。しかし『棗と石榴』の文中ではむしろ死亡後であり「魂呼び」に近い状況で名を呼んでおり使用する道具(箕)も場所(屋根)も類似。日中文化比較上参考になる興味深い事例 。
・呼称の問題について、単純に名称だけで比較すると最も多いのが呼び戻し(或は呼び戻す)で次が呼び返し、以下魂呼び、魂よばいの順となる。但し中にはタマスヨブ(青森県)のように地域的なものも存在。
一方「魂呼び」といっても死者の霊魂を呼ぶ場合の表現もあり、例えば赤城山だったと思いますが盆などに霊魂を呼ぶ習俗があり柳田国男が「魂呼び」と紹介。呼称の紛らわしさは魂呼びの研究自体の中で解決していかなければならない問題と考えている。

これは2022年1月29日に開催された第117回異類の会の報告です。
上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名、本サイト名及び記事URLを明記してください。
※次回は2月27日(日)15時オンライン開催です。

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