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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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日時:10月20日(日)15:00 
会場:オンライン(Microsoft Teams)

タイトル:
 異類の造形:たとえば大蛇、あるいは獅子

発表者:永島大輝氏

要旨:
 本発表は、民俗社会における行事の中の造形物におけるデザイン面について若干の考察をするものである。
 たとえば主に雨乞いでの大蛇の造形になぜそうしたデザインなのかについては理由は伝わっていないが、いくつかの事例から背景にある失われた理由を見出すことができる
 一方、獅子舞で現地で伝えられる造形の意味がある。こちらに関しても事例の報告をする。


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タイトル:
 福井県福井市一乗谷「安波賀春日社縁起絵」と小狐丸
 ーまたまた狐に化かされてー

発表者:
 林京子

要旨:


 小鍛冶伝承とは、「刀工の京の三条に住む小鍛冶宗近は奉納する刀剣の制作を指名されたが適任の相槌役がいないことを嘆き、氏神の稲荷明神に祈請すると、神使の狐が童男姿で相槌に現れ、刀剣が完成する。出来た神剣を宗近は小狐丸と名付けた」というもので、モチーフは①国家鎮護の神社へ刀剣の奉納②刀鍛冶三条宗近③稲荷神④狐である。


筆者は、中世には生身の地蔵出現の霊地であり、現代は著名な特撮ロケ地である栃木県栃木市岩船山と山上の高勝寺の宗教文化史研究を行っている。岩船山上には地蔵の他に孫太郎尊という狐に乗ったカラス天狗も祀られているこの孫太郎天狗を追って佐野市の孫太郎稲荷に行き、佐野の孫太郎稲荷から奈良の薬師寺の孫太郎稲荷へ連れていかれ、薬師寺の孫太郎稲荷は姫路から来たと言われて姫路に連れていかれた。姫路では「小鍛冶」が姫路の在地伝説化し、孫太郎は相槌を打った狐の名前になっていた。佐野市も姫路でも春日神社との関わりがあった。


福井市の「一乗谷朝倉氏遺跡」は、朝倉義景の自刃で壊滅した朝倉家の遺跡。「一乗谷朝倉氏遺跡博物館」(以下「博物館」)には三条宗近と相槌を打つ童男、狐が描かれた「安波賀春日神社縁起絵」(以下「縁起絵」)が複製展示されている。安波賀春日神社は11世紀藤原氏の創建で、戦国期には朝倉家の尊崇を受け、神主の吉田定澄・定富親子は吉田兼右と親交が深かった。福井藩主の松平吉品は吉田家門弟の吉田日向守を見出し、元禄十年に吉田日向守を神主として安波賀春日社を再建した。その時「安波賀春日之縁起」と「縁起絵」がセットで整備された。その時縁起本文には記述のない宇治川の合戦で佐々木高綱が着用した兜と具足三条小かぢ宗匠作刀の小狐丸の影(奉納しなかった方の刀)も神宝として神社に持ち込まれた。この神社が再興されたのは、あまりにも不幸な異変が続く福井藩主家が吉田神道の力を借りて呪いの主とされる朝倉義景を慰霊し藩主家の子孫長久を願うためだった。悪霊と化した朝倉義景を神として祀り鎮めるには「神つかい」吉田家に依頼するのが最も良い解決法と目され、安波賀社は従来から吉田家と深いつながりを持っていた。安波賀春日社が再興されると、その境内には朝倉氏を慰霊する滝殿権現が建立された。このことは藩主家の秘密であった。


幕末の福井藩主である松平慶永(号春嶽)は晩年『眞雪草紙』という回想録を残し、小狐丸の影のことや瀧殿社のことを記録した。松平春嶽は将軍徳川家斉の甥で将軍の血縁者だった。春嶽が瀧殿権現の詳しい記述を残したのも、危機的状況下の吉品と近世の終わりを体験した自らが重なるように思えた部分があったのではないか。一方「小狐丸の影」は、「享保名物帖」を作成した将軍徳川吉宗の耳にも入り、問題の刀剣は江戸城に上がったこともあった。近代に入って、松平春嶽は九条道孝が「小狐丸の影」を欲しがっているのを知り、結局春嶽が仲介して「小狐丸の影」は九条家に売却された。その後のこの刀剣の行方は不明である。また春嶽は福井県の威信の元勲なので、彼の回想録は彼の意図とは別に全て公刊された。このことで神秘だった瀧殿社のいわれも公開されてしまい、現在の神社の由緒にリターンされていることは歴史の皮肉である。


小鍛冶伝承は彼の居住地とされる粟田口周辺や、彼を助けたとされる伏見稲荷周辺の多数の寺社の縁起に取り込まれている。さらに遠方まで伝承が伝播した背景には「漂泊する鍛冶屋の伝承がみちのくまで北上していったこと」「稲荷神が鍛冶神として鍛冶の人々の信仰を集めて」おり「漂泊する琵琶法師によって語られる小狐説話と、同じように漂泊する鍛冶の人々の三条宗近の伝承が各地で交流することは十分考えられる」などの指摘がある。「博物館」学芸員宮永氏は、由緒の物語の創出に長けていた吉田家の関与、熊野御師などの関与などにより、広範囲に広がり受容されていた三条宗近と小狐丸の物語が一乗谷に伝来したのではないかと推測されている。寺社が「小鍛冶」を縁起に取り込んでいくのは、稲荷が鍛冶職の神であることや火除けの利益を唱導して参詣者を誘引する為であろう。また鍛冶職の人々とこの物語は現在も強く結びついている。現在も三条宗近の名刀三日月宗近の影や彼の物語は作成され続けている


中世の日光は吒枳尼天信仰が盛んで近世には東照三所権現の一つである摩多羅神と習合した。摩多羅神が異端視されるようになっていくと、吒枳尼天は飯綱権現や稲荷と理解されていった。宮家準氏や山本ひろ子氏は「天狗と吒枳尼天と稲荷と摩多羅神は中世以来互換する」と指摘し、その実態は捉えがたい。


安波賀社の社宝である「小狐丸(の影)」が重要であったため、縁起絵に書き込まれている三匹の狐に関心が向けられることはなく狐の名前は特に伝承されていない。唯一の「孫太郎」の記述は安波賀社の石の鳥居の寄進が本多孫太郎による、というものである。筆者の先祖は本多孫太郎長員に仕官した。筆者の実家は六角氏被官でその後朝倉氏に仕え、近世は本多家に仕えた戦国武将(下層クラス)のイエである。自分たちが朝倉旧臣で本多家旧臣であるという「物語」が実家の人々を支えてきた。発表者が様々な困難にめげず岩船山の宗教文化史研究を続けているのも「岩船山は時折仮面ライダーと共振する」という自分だけの物に支えられている。畏るべし「物語の力」!


一乗谷安波賀春日社の「小鍛冶」伝承は、寺社の縁起に取り込まれた「小鍛冶物」とは異なり、神社再興の由緒の創出として導入されたもの。当初は義景の御霊を慰霊祭祀によって福井藩の守護神に変換するための神社再興であったが、その過程で広く人々に知られた物語として「小鍛冶」伝承が縁起に入り込んだ。伝承は独自に成長し、近世の終焉を体験した藩主によって詳細な回想が記録された。藤原家の祖鎌足と狐・鎌・吒枳尼天という物語が、幸若舞などを通し福井でも受容されていたので「小鍛冶」伝承も問題なく受容されたのではないか。


今回の発表で福井県立文書館の先生のコメントを頂けたことは本当に幸運だった。今後も現地の研究機関と連携できないか探っていきたい。
(文・林京子氏)

*これは9月22日(日)にオンライン(Zoom)で開催された第147回の要旨です。
*上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名を明記してください。
*次回は10月20日(日)15時にオンライン(Zoom)で開催予定です。





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日時:9月22日(日)15:00 
会場:オンライン(Zoom)
タイトル:
 福井県福井市一乗谷「安波賀春日社縁起絵」と小狐丸
 ーまたまた狐に化かされてー
発表者:林京子氏
要旨:
 発表者は栃木県栃木市の「特撮爆破ロケ聖地」岩船山の宗教文化史研究を行っている。岩船山には享保4年に流行神として大ブレイクした地蔵と天狗の孫太郎尊が祀られている。天狗も近世には商売繁盛・戦死除けの流行神となった。この孫太郎を祀る神社をたどっていくと、なぜか孫太郎が狐になっていて、三条宗近の相槌として名刀「小狐丸」を作刀していた。つまり能の「小鍛冶」が姫路の地域伝承になっていたのだった。
 ところで福井県福井市一乗谷は、戦国武将朝倉氏の拠点である。栄華を極めた一乗谷であるが、織田信長の攻撃で当主の朝倉義景は自刃、谷は戦火で廃墟となった。その後福井藩の中心は北ノ庄に移りこの場所は放棄されたため、タイムカプセルのように戦国時代の遺物が次々に出土した。それらを集めた福井県立一乗谷朝倉氏遺跡博物館の常設展示には「安波賀春日社縁起絵」が展示されている。そこには三条宗近と童男の鍛刀と狐が描かれていた。この神社には近世を通し「小狐丸(影)」が所蔵されていた。なぜ福井にも「小鍛冶」伝承があるのか。小狐丸(影)とは何なのか。この謎を解明すべく、発表者は泣く泣く北陸新幹線に乗り再び一乗谷を訪れた。17世紀末、福井藩の藩主である松平吉品(よしのり)は朝倉義景の祟りを鎮めなければならない状況に追い込まれていたという。福井藩の藩主家にどんな祟りがあったのか。小狐丸(影)は今も一乗谷にあるのか。最後に明かされた発表者と孫太郎の因縁とは。22日はこのようなお話を予定しています。期待せずご参加ください。

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タイトル:
 妖精は武装する・旅するゴブリン2
 ~80年台における雑誌日本版ウォーロックにおける読者投稿をめぐって~

発表者:
 河津創

要旨:

 今回の発表では、1980年台における雑誌、日本版ウォーロックはファイティングファンタジーシリーズのサポート誌として発刊され、T&Tもサポートしていく。そしてその準備誌であるゲームブックマガジンにおける読者投稿に関して調査を行った。

 前回発表(*)の調査において確認できた、ファイティングファンタジーシリーズ、タイタンの世界におけるテキストと挿絵において、目立った表現・種族があった。これらを照らし合わせ、読者投稿における共通性や傾向を探り、ファイティングファンタジーシリーズの人型の人間ではない存在たちが、いかに再表現されていたのかを探った。
 分析の方法としては前回の発表にて、特徴として見えた、”武装していること” ”耳がとがっていること” ”肌にテクスチャのようなものがあること(かけ網、ウロコ、点描、シミのような表現)”をもって傾向を探った。人物と、平均的な人物が持たない特徴を備えている人ではないものをモンスターに類するものとして分析した。また随時モンスターの名前や容姿に関する表現があればチェックした。
 調査の対象としたのは、ゲームブックマガジン創刊号から6号の読者投稿公コーナー、日本版ウォーロック創刊号から36号の読者投稿記事である「ウォーロックサロン」における、お便りのコーナー、とそこから派生した「教えて?私が答えよう!」のコーナーであった。
 ゲームブックマガジンのテキスト投稿の表現としては、ゲームブックのランキングやゲームシステムやプレイ感に関するものが多く、モンスターが取り扱われていても名前だけの端的なもので、その特徴に言及しているものは2例、イラスト全体に対しては3例見られただけであった。モンスターイラスト特集が組まれたところ、応募が多くイラストにおける投稿がすべてのイラストにおける投稿117例中67例と過半数を占めた。人型のうちとがった耳は7例見えた。テクスチャのあるものは5例、武装しているものは16例であった。またほとんどオリジナルモンスターが多く、前回の調査で対象とした種族の結果を回収するようなものは少なかった。
 日本版ウォーロックのテキスト投稿では総投稿数579件中最も言及されたのはエルフの12例次いでゴブリンの8例、トロール、ドラゴン、ドワーフの7例づつ、メデューサの6例スライムの6例と続いた、それぞれのモンスターの表現が投稿者間のやり取りにおいて繰り返して使われるという内容であり示唆的なものにとどまった。また登場モンスターをみると、ファイティングファンタジ―シリーズの作中やモンスター事典からはみ出たものが多くみられた。読者におけるゲームブック外の著作物の言及が多く見られ、最も多かったD&Dが13回、ドラゴンランスが7回、指輪物語が6回、クトゥルフが5回と、記事における表現の元がファイティングファンタジー以外の著作物に開かれていることがうかがえた。種族の容姿に関する表現はそれぞれ2、3例づつであり、前回の調査で見られたエルフにおける”背が高い”という表現と、ゴブリンにおける”醜い”という表現が1例づつであるが共通していた。
 イラスト投稿は総投稿数301例のうち人ではないと考えられるものがイラスト中に存在したのは182例で過半数であった。イラスト中に描かれた存在659例のうち人物が355例で人ではないものが304例であった。テクスチャのあるものは33例であった。名前の併記してるものは104例であった。全体としては人ではないものに関しては名前のない人型の肌にテクスチャのないとがった耳を持つものが人物に比べるとやや武装しがちで紙面を構成していた。とがった耳に関してはテキストでは触れられないが、人ではないものの表現としてベーシカルに紙面の中で用いられてきたことが前回の調査との共通点であった。一方、前回の調査において多く確認できた肌におけるテクスチャの表現は少なくなっていた。このことに関して「ウォーロック」のイラストやカットはもっとまんがっぽいのがいい。」(ウォーロック4号)という読者投稿が掲載されており、編集者と投稿者の共犯関係をうかがわせるものであった。

 質疑においては、
日本版ウォーロックという雑誌の読者投稿欄はその他のゲーム関係の雑誌と傾向が違うこと。D&Dのマガジンにおける表現はどうだったかということ。同人誌や漫画情報誌に投稿するような人たちがゲーム雑誌に人ではない存在を描くようになった可能性も指摘された。また肌におけるテクスチャ表現に関しては雑誌としての見栄えと採用の問題、はがきという形式もあるのではないかという指摘があった。
 さらなる媒体やゲームシステム、表現の中で対象を探る課題が残されるものであった。
(文・河津創氏)

*前回発表=第110回「旅するゴブリン~1980年代ゲームブック、ファイティング・ファンタジーにおける妖精的ヒューマノイドの表現~」


*これは8月31日(日)にオンライン(Zoom)で開催された第146回の要旨です。
*上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名を明記してください。
*次回は9月2日(日)15時にオンライン(Zoom)で開催予定です。

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第146回開催のご案内
日時:8月31日(土)17:00 
会場:オンライン(Zoom)

タイトル
妖精は武装する・旅するゴブリン2
~80年台における雑誌日本版ウォーロックにおける読者投稿をめぐって~

発表者河津創氏

要旨:
1980年台に日本においてファイティング・ファンタジーのタイタンの世界を共有するゲームブックが発刊された。2009年に該当シリーズの携帯ゲーム化においてイラストを担当した発表者は、ゴブリンとオークの表現が画一性を持たせたりかき分けることに関して難しさをもっていることへの疑問から出発し、一連のファンタジーシリーズを通してみることで、その善の種族・悪の種族においてイラストとテキストの偶発的な関係を当会において、旅するゴブリンとして発表した。モンスター・怪物・化け物・妖怪(日本語版における原文訳)の表現についてはソーサリーシリーズ2巻の巻末の安田均による解説でその存在について補足されるが、作中の表現は作品外部の表現を参照するよう開かれていた。日本における公式的な言及はモンスター事典を待たねばならないがそこで用いられるイラストは一連のシリーズから再利用されているものが多い。そういった中で、日本版ウォーロックでは、読者と雑誌という関係の中でヒューマノイドタイプの異類たちがどう取り扱われてきたのか、タイタンを背景世界としたゲームブックを取り巻く表現としてゲームブックマガジン、ウォーロックの創刊号から89年12月までを対象に読者投稿を中心とした分析を試みる。

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プロフィール
HN:
異類の会
年齢:
15
性別:
非公開
誕生日:
2009/09/15
自己紹介:
新宿ミュンヘンで誕生。

連絡先:
gijinka☆way.ocn.ne.jp
(☆を@にかえてください)
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