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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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タイトル:
旅するゴブリン

 ~1980年代ゲームブック、ファイティング・ファンタジーにおける
  妖精的ヒューマノイドの表現~

発表者:河津 創 氏

要旨:
1980年代の日本におけるゲームのメディア展開において、先駆的な役割の一部を担ったものとしてゲームブックがある。日本においてファイティング・ファンタジーシリーズは妖精物語である指輪物語の流れをくむファンタジー作品として1984年から1991年まで一連の作品が出版された。
本報告では、シリーズ作品に接した発表者が描き分けにくさを感じたヒューマノイド型敵対種族において、対象の外見的特徴がシリーズ作品内にて固定されるわけではなく、そのイメージが外部に開かれている事を指摘した。
1980年代に出版されタイタン世界を共有する社会思想社版の全23冊に、それに同じくタイタン世界を共有する『王子の対決(社会思想社)』と、『ソーサリー(東京創元社)』の四作品を加えた28作品のゲームブックの全テキストと挿絵を検証した。また、参照として、作品のタイタン世界を解説した『タイタンファイティングファンタジーの世界』『モンスター事典』を用いた。『タイタンファイティングファンタジーの世界』において主要な章立てがされている”悪の種族”オーク、ゴブリン、トロール、オーガー、穴小人、闇エルフと、”善の種族”エルフ、ドワーフを検証対象とした。イメージの対象は、作品ごとの演出とイラストレーターの画風によって様々に変化していた。
テキストにおいては対象が武装していること、またドワーフに髭があり小さいことが主たる特徴であった。また、テキストが部分的やあいまい、一度きりのものが多く、統一的に外見を特定することが難しいことが分かった。
挿絵においては、全対象武装していることが特徴として確認できたが”善の種族”では半数程度であった。また、テキストで言及されない、さらに一度しか言及されない特徴が確認できた、尖った耳や肌のテクスチャがこれに当たる。ドワーフが髭があり小さいことが確認できた。オーク、ゴブリン、トロール、闇エルフ、エルフに尖った耳が特徴的に確認できた。テキストにおいて”いぼだらけ”と表現されることの反映であると思われる肌のテクスチャ感がうかがえる表現がオーク、ゴブリン、トロールに特徴的に確認できた。オーク、ゴブリンにおいて牙が特徴的に確認できた。また作品によって大きく対象を特定する特徴が変わる様が確認できた。
発表では最後に日本のファイティング・ファンタジーシリーズの出版物においてタイタンを舞台としたシリーズ中では流動的であるのではと考えていることを説明した。流動的であることは仮説の段階であり今後の課題である。
質疑応答では、ゴブリンの肌が緑の表現に対して、1920年代の出版の色の教科書で推奨している補色とコントラストの表現があることを指摘したことに対して、妖精が好む色として緑色があることが言及された。また、雑誌の付録で示されてきた対象と比較できる可能性に話が及んだ。逆に、日本における妖怪が海外においてどのようにファンタジー世界で表現されているかという関心も持たれた。(文・河津創氏)


※次回は7月18日(日)15時Zoom開催です。

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「南方熊楠と鼠の文学史」

発表者:伊藤慎吾

要旨:
鼠は日本人が文字を獲得し、文学を創作するようになると、単に害獣としてだけでなく、鼠の生きる見えない世界を想像し、また古くから感じていた霊性も、民間信仰や仏教の展開に伴って文学作品に様々に描かれるようになった。
南方熊楠は、大正12年(1923)、雑誌『太陽』に掲載すべく「鼠に関する民俗と信念」を執筆した。結局、これは掲載中止となった。差し戻された当該原稿からは幾つかの論考がさらに派生的に作られた。
これらの論考に共通するのは、古今東西の文献を縦横に使いながら鼠の諸相を考察していることである。諸相というのは、具体的には鼠の嫁入り・鼠の報恩・鼠除けのまじない・異名「ヨメ」・子の日・正月の掃除・甲子祭の装束 ・鼠の妖怪・白鼠・鼠の神・大黒天・大黒(住僧の妻)・毘沙門天・作物被害・武具の鼠損などだ。
これらを取り上げる場合、熊楠には文学史的な関心が極めて低かった。古典文学に描かれた鼠の中で、熊楠の関心を惹いたのは、古代以来の白鼠の聖性、中世以来の大黒天との関わり、福神信仰との習合程度のことであった。詩歌の題や鉄鼠、月日の鼠、擬人化といった文学史的に重要な側面については無関心であったといえる。
文学資料を渉猟しながら、それらを和漢洋の古今の文献と同等に、質の違いに注意を払うことなく扱ったのであった。

※以上は2019年11月30日の発表要旨です。

なお、1月5日に南方熊楠顕彰館で「十二支考<鼠>談義」という講演会(というか、トーク・セッション)があります。
伊藤と一條宣好さんも話をします。
ぜひご参加ください。


次回の例会は1月11日(土)14時から武蔵大学で開催します。
発表者は一條宣好氏です。

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幕張本郷猛氏
少年少女雑誌・児童書における妖怪記事の基礎知識

要旨:
少年少女雑誌の妖怪記事は、「ポスト怪獣ブーム」として生まれたものではなかった。
昭和39年怪奇記事は急増し、昭和40年には妖怪記事大隆盛を迎えた。怪獣ブームの時点で既に妖怪ブームであったのだ。
この時期に活躍したのが、「少年ブック」の北川幸比古、「少女フレンド」の斎藤守弘だ。バックベアード、さかさ男は我が国が生んだ代表的なモンスターだ(?)。
同時期に中岡俊哉が彗星のごとく現れた。『世界のモンスター』の山内重昭が児童誌に執筆を開始したのもこの時期だ。ブームは昭和43年まで続くが、その後の妖怪研究に多大なる影響を与えた。
さらに「マーガレット」の武田武彦、「少年キング」の永山秀雄・間羊太郎、「少年マガジン」の宮崎惇など、単行本とならなかった作家達の記事を漏らさず研究することが大事だ。
妖怪記事は、大伴昌司・水木しげるの独占では決してなかった。
各誌が切磋琢磨したゆえの産物である少年少女雑誌の妖怪文化は、日本の妖怪史において決して軽視してはならないと考える。(文・幕張本郷猛氏)

※2018年3月31日、青山学院大学総研ビル(14号館)での口頭発表の内容です。
次回は6月中に開催する予定です。


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杉山和也氏
ちりめん本に於ける日本昔噺と、その翻訳の諸相
―『瘤取』の鬼の描写を中心として―


本発表ではまず、ヘボン訳・ちりめん本『瘤取』と、『宇治拾遺物語』所収話「鬼ニ瘤被取事」(第三話)、ならびにグッドウィンの論文に所収の翻訳の三者の関係性について、表現の分析を通して検討を行った。
結果、ヘボンは『宇治拾遺物語』の本文に独自に当たっていることが想定される。
そして、その本文は刊本系の本文であった可能性が高いと考えられる。
ただし、ヘボンが1875年3月15日、横浜にて開催された日本アジア協会・例会で、グッドウィンの論文の内容を聴いているという事実が確認できる以上、当該論文に収録されるホールの翻訳を参考にしていた可能性については退けることができない。
むしろ、先行の訳として、併せて参照していたと考える方が自然であろう。
そして、そうした状況が想定できる以上、従来考えられてきたように、ちりめん本『瘤取』で「訳されなかった部分」については、『宇治拾遺物語』の描く世界観や日本文化が理解できていなかったという要因ばかりではなく、併せて訳者のヘボンによる取捨選択もあったということを考える必要がある。
そこには小冊子故の字数の制約、或いはちりめん本の出版に際して狙い所となった購買層への配慮といった事情も背景にある可能性があり、この点についてはちりめん本全体の検討を通して考える必要のある問題であろう。今後の課題と致したい。

また、本発表の最後には、フランス語版・スペイン語版・ドイツ語版の表現の比較を試みた。
結果、いずれも基本的に英語版からの翻訳であると考えることができた。
(文・杉山和也氏)。


以上は、2018年2月24日、異類の会例会(於・青山学院大学)での発表要旨です。
次回は3月31日14時から同所で開催予定です。

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永井荷風の日記『断腸亭日乗』の太平洋戦争前後の記事(とくに昭和15年から16年にか けて)には、他者による投書や落書がたびたび引用されている。その中には、近世の俳文や黄表紙を模して動物などの〈異類〉を活躍させたものや、近世の落書を模した上で、政治批判を〈妖怪〉の姿に託したものなどもある。
本発表では、戦時下において、こうしたある種の江戸趣味に基づく作品がいかなる意味を持ち合わせて創作・受容されていたのかについて若干の考察を試みた。『断腸亭日乗』に記録された戦時下の投書および落書は、“匿名の作者が特定の人物(ここでは荷風)を目指して行った表現行為”と、“匿名の作者が不特定多数の人物を対象にして行った表現行為”に二分できる。さらに、これらは、匿名の作者による表現行為と、それを自らの筆で記録する荷風という、重層的な構造によって後世に残された作品でもあった。
また、以上の考察を通して、新たに以下のようなテーマも浮上してきた。一つは、前近代の〈異類〉と、近代以降の〈異類〉の接点と差異である。もう一つは、主として子供向けに発展した“キャラクター”的な意味合いを持つ〈異類〉と、大人向けに発展した、諧謔を通じた政治・世相批判を含む〈異類〉の役割の差である。今後は、戦時下の〈異類〉たちを含めたかたちで、こうした大局的な問題についても考察を深めていきたい。(文・発表者 今井秀和氏)

以上、異類の会第51回例会(2015年3月18日・於大東文化大学)発表の要旨です。


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2009/09/15
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新宿ミュンヘンで誕生。

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