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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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発表者:林京子
題目:異類出現の霊地下野岩船山

要旨:
 栃木県栃木市の岩船山は中世以来の霊山で現在も連綿と信仰されている。しかしその内実は似て非なる信仰の連続体であり、混沌の中から聖なる異類が立ち上がる霊地である。
 岩船山の聖性はこの場所の景観に由来する。北を指す船型の巨石(岩船)は、古代はカミの依代である磐座として、中世はそこに地蔵と言う死後世界のカミが顕現する場と考えられた。「伯耆大山の僧が夢告で岩船山に至り、山に住む貧しい法師が村人の頼みに応じて分身するのを見、翌日岩船の上で法師の躰を割いて出現する〈生身の地蔵〉を見て、地蔵から増える不思議なお米を貰う」という説話が中世の地蔵菩薩霊験記や大山寺縁起にも見られる。この物語は「米」を巡る宗教思想大系の一つとも考えられる。山内の夥しい板碑群があり、この山が高名な霊場であったことを示唆する。岩船山上は1584年戦火で焼失した。
 近世初期、寛永寺のテコ入れで山上に高勝寺が創建され、きわめて戦略的な「下野州岩舩山縁起」(漢文)が天海の弟子によって製作された。ところがわずか74年後には、先行する縁起とは異なる華麗な縁起絵巻「岩船山地蔵菩薩縁起」(かな)が作られ、中世の垂迹聖人と似て非なる〈新しいカミ〉が死者を救済する場として参詣者を誘引するようになった。聖なる石は子授けの陰陽石と見なされ、高勝寺は地蔵の持つ死者供養と子授け祈願の機能を持つようになった。
 近現代に入ると岩船山は「換金可能な石の山」と見なされ人々は容赦なく山を破壊した。すると破壊された山の中に中世とは似て非なる異類が顕現するようになった。さらに岩船山には天狗伝承がある。現在も高勝寺が頒布しているお札に描かれた異類は、中世のダキニ天信仰との関連が感じられる。
 発表者は山上の蓮華院高勝寺縁起類のデジタル複本作成と解題事業を行っている。本発表ではその過程で得られた知見の一部である。絵巻の未公開画像や岩船山の景観、天狗信仰などを紹介し、早急な修復が必要な高勝寺の一助になることを願うものである。(文・発表者)

以上です。
これは12月8日(土)(会場・國學院大學)に口頭発表されたものです。


次回は1月26日(土)14時に開催します。
詳細は追ってお知らせします。

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お伽草子『梅津長者物語』には、七福神に退治される貧乏神の姿が描かれている。『発心集』『沙石集』にも貧報の冠者、貧窮殿という名で貧窮を司る存在が登場するが、貧乏神という言葉が確認できるのは16世紀初頭の俳諧などからである。ただし『大乗院寺社雑事記』文明十五年条に福天と賓法神が京と和泉・堺を往来したとの記述があり、賓法神が貧乏神であるとすればより早い例として注目される。
この貧乏神の姿を絵画化したのが『梅津長者物語』であり、柿帷子を着て、団扇を手にした十四、五の禿で、大勢で行動するのが特徴である。貧乏神は、福神と共存することはできず、退散することで間接的に富を与える存在となっている。
『梅津長者物語』の貧乏神の姿は、髪を禿に切り回し、赤い直垂を着た、十四、五の子供と『平家物語』諸本に記される禿童と重なる。また同時代の作品の貧乏神の様子はどうであったかというと、俳諧や狂歌などに渋団扇に貧乏神がつくという繋がりがうかがえ、井原西鶴『日本永代蔵』に渋帷子、破れ団扇、紙子頭巾の貧乏神像が出てくるなど、室町時代末から近世にかけての貧乏神の姿に、柿色の装い、団扇という共通性が見てとれる。
まだ検証は不十分ではあるが、貧乏神の柿色の装いには被差別民の姿が投影されていると考えている。特に犬神人は柿帷子と白い覆面ないし頭巾という姿で、『日本永代蔵』の貧乏神の姿と近しい。退散することで福をもたらす貧乏神が、穢れを払う犬神人の姿と重なるのは注目すべきであろう。『梅津長者物語』の貧乏神の姿とは異なるが、両者は渋柿色でつながれている。また貞享五年刊『貧人太平記』などに、破れ団扇を手に行列する非人が描かれており、柿帷子に加えて被差別民への眼差しが重ねられていると言えそうである。

福神の流行と時を同じくして現れた柿色の貧乏神の姿には、富と関わる社会的なイメージがより強く反映されていると考えられる。そこから想像された禿童と犬神人という二つの姿を手がかりに、さらに検討を重ねたい。


以上、発表者塩川和広氏による要旨でした。
これは2012年2月24日の例会(於国学院大学)において発表したものです。
次回の会は前の記事に示したとおり、
  日時:3月23日(金)18時00分~
  場所:國學院大學学術メディアセンター一階ラウンジ

 です。詳細は下記参照。

http://irui.zoku-sei.com/Entry/54/

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