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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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タイトル:
 澁澤龍彦『東西不思議物語』と柴田宵曲『妖異博物館』その他

発表者:
 伊藤慎吾

要旨:
 エッセイストであり小説家でもある澁澤龍彦(1928-1987)の著書『東西不思議物語』(1977年)は古今東西の怪異・オカルトの文献を縦横に使って書かれたエッセイをまとめた作品である。欧州のオカルト、モンスターをもっぱら取り上げてきたこれまでのエッセイに比べ、日本の怪異・妖怪を中心に紹介しているのが特色だろう。
 今回は、澁澤が執筆にあたって利用した文献がどのようなものであったか、柴田宵曲『妖異博物館』を中心に見てきた。
 『東西不思議物語』は、同時期に執筆された『思考の紋章学』と同様に、日本の〈不思議〉に力点を置いて執筆されたものだった。しかし、執筆姿勢は対照的に、不思議な事柄を考察するのではなく、紹介にとどまるものだった。したがって資料探求に手間をかけず、旧稿を流用したり、手近な文献を参考にしたりして執筆された記事も多い。その主要な参考文献として位置付けられるのが柴田宵曲『妖異博物館』であった。
 『妖異博物館』の引用には、明記して使う場合もあるが、多くの場合、明記せずに、近世随筆に見られるエピソードを孫引きのために使ったのだった。中には、記事全体が『妖異博物館』の記述に従うものもあるほどである。このようなエッセイの執筆態度は、「9 自己幻視のこと」における吉村博任『泉鏡花・芸術と病理』、「14 ウツボ舟の女のこと」における柳田國男「うつぼ舟の話」、「20 キツネを使う妖術のこと」における幸田露伴『魔法修行者』、「22 トラツグミ別名ヌエのこと」における『善庵随筆』、「23 幻術師果心居士のこと」における古賀三樹『見世物の歴史』についても同じである。
 澁澤の日本回帰の流れの中で、特に〈不思議〉や〈妖怪〉に関わる事柄について、『妖異博物館』の与えた影響は大きいのではないだろうか。
 今後はこれを手掛かりに、1960年代以降の妖怪文化史の中で、『妖異博物館』がどのような役割を持っていたのかを考えていきたい。(文・伊藤慎吾)

*これは2024年12月27日(金)にオンライン(Zoom)で開催された第150回の要旨です。
*上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名を明記してください。
*次回は1月26日(日)15時にオンライン(Zoom)で開催予定です。

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日時:12月27日(金)15:00 
会場:オンライン(Zoom)

タイトル:
 澁澤龍彦『東西不思議物語』と柴田宵曲『妖異博物館』その他

発表者:伊藤慎吾


要旨:
 エッセイストであり小説家でもある澁澤龍彦(1928-1987)の著書『東西不思議物語』(1977年)は古今東西の怪異・オカルトの文献を縦横に使って書かれたエッセイをまとめた作品である。欧州のオカルト、モンスターをもっぱら取り上げてきたこれまでのエッセイに比べ、日本の怪異・妖怪を中心に紹介しているのが特色だろう。今回は、澁澤が執筆にあたって利用した文献がどのようなものであったかを考えていく予定である。特にそれらの文献の中でも興味深いのが柴田宵曲『妖異博物館』なので、その受容実態を中心に見ていきたい。

※来聴歓迎! 初めて参加する方はX(舊Twitter)
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タイトル:
 「豊都鬼城」からみる現代中国における鬼のイメージ

発表者:
 李江龍

要旨:
 現在、中国重慶市の「豊都鬼城」は鬼に関する観光地として人気がある。
 1980年代に成立した「豊都鬼城」は中国の重慶市豊都県に位置し、冥界や鬼を題材として、鬼の文化を宣伝する場所である。そこでは、冥界の鬼たちのオブジェや「天子殿」、「鬼門関」など有名な冥界の風景を再現している。豊都には「あの世の都がある」という伝説が流れたため、「幽都」、「鬼都」などの別称もある。
 現在、中国で鬼が幽霊のことを指すのは一般の認識である。しかし、現在、中国の重慶市豊都県に位置する鬼に関する観光地「豊都鬼城」の事例から見れば、鬼のイメージは必ずしも幽霊ではなく、非常に多様化している。既存の研究は、豊都鬼城の歴史文化や文学、観光開発に注目しているが、観光対象と化した鬼の持つイメージへの関心は充分とは言えない。本研究は中国重慶市の豊都鬼城に焦点を当て、具体的に鬼の姿かたちと鬼に関する説話を手掛かりに、現代中国における鬼のイメージの具体像を捉える。
 豊都鬼城において、鬼のオブジェは「鬼門関」と「天子殿」という2つの建造物に集中している。「鬼門関」にある鬼の像が「酒鬼」「才鬼」のように、身体や道具の誇張化と肥大化を特徴とするのに対して、「天子殿」の鬼は黒色を主としている。
 大きな桶を抱く「酒鬼」に祈願すれば、酒仙と同じくらいお酒に強くなり、才鬼が挙げる巨大な硯に触れば、試験の成績が上がると言う。この例にみるように、観光地における鬼のイメージを理解するには、観光客の存在が与える影響を見過ごすことはできない。また、鬼が纏う黒色は、中国の民間信仰では常に葬式や死と結びつき、不吉なイメージを強く帯びている。また、黒色の鬼が成立した一因は、中国の風水思想を切口に豊都鬼城と深い関係がある道教の神様、鄷都北陰大帝からの影響に求められる。このように、豊都鬼城における鬼のイメージが形成される過程では、死に関する民間信仰や道教からの影響を受け、観光客が抱く現世利益の要望と絡み合っている。
 一方、観光客と地域社会は常に軋轢が生じている。豊都県で鬼に関する伝説が流布しており、鬼が観光地で潜んでいる矛盾を読み解く媒体となる。鬼の娯楽化及び観光開発に対して、地域社会が観光化された鬼のイメージをそのまま受け入れることは難しく、その反発する姿勢が見られる。(文・李江龍氏

*これは11月23日(土)にオンライン(Zoom)で開催された第149回の要旨です。
*上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名を明記してください。
*次回は12月27日(金)15時にオンライン(Zoom)で開催予定です。

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日時:11月23日(土)15:00 
会場:オンライン(Zoom)

タイトル:
 「豊都鬼城」からみる現代中国における鬼のイメージ

発表者:
李江龍

要旨:
 1980年代に成立した「豊都鬼城」は中国の重慶市豊都県に位置し、冥界や鬼を題材として、鬼の文化を宣伝する観光地である。そこでは、冥界の鬼たちのオブジェや「天子殿」、「鬼門関」など有名な冥界の風景を再現している。豊都には「あの世の都がある」という伝説が流れたため、「幽都」、「鬼都」などの別称もある。
 本報告では、現地調査の成果を踏まえて、中国重慶市の豊都鬼城に焦点を当て、具体的に鬼の姿かたちと鬼に関する説話を手掛かりに、現代中国における鬼のイメージの具体像を捉える。 

※来聴歓迎! 初めて参加する方はX(舊Twitter)
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タイトル:
 異類の造形:たとえば大蛇、あるいは獅子

発表者:
 永島大輝

要旨:
 祭礼の中の造形物や図像におけるいくつかの共通項から、現在では失われたその「お約束」の意味を捉える。具体的には今回の発表では、主に雨乞い(「脚折雨乞い」「ジャガマイタ」)での大蛇の造形をもとに共通項を見ていく。そうしてある類型を見出すと蛇に耳があり、尾に剣がついていることが言える。
 まず、ただの蛇ではない大蛇には耳があることだが、伝説や世間話として報告や研究できる。伊藤龍平『ヌシ』や南方熊楠の『十二支考』でも言及があり、従来の通り、俗信や口承文芸として研究できる。
 次に、力のある異類の尻(尾?)に剣が造形されることである。現在、何故かはわからないが造形されている。事例から異形とくに力を持っていることが想定される。言葉というより造形による伝承。四国の牛鬼の尻にも剣があるほか、尻に剣のようなものが見える獅子舞についても紹介した。
 近世期には共通の理解があったものと思われる。近世の怪談本の『諸国百物語』一の十三/越前の国永平寺の新発意が事や『新御伽婢子』三の一則身毒蛇などには尾に剣のある蛇の挿絵がある。ただしこれは、一つ目のものと違い俗信として研究できるのだろうか。少なくとも本文では記述されず、民間伝承でも巨大な蛇に剣が生ずるようなことは見られない。もちろんヤマタノオロチと剣など、蛇と剣は無縁のものではないはずではあるが、芸能レベルの知識が生活の中まで下りてきているとは言えないと思われる。どう扱っていくべきか、今後の課題としたい。
 質疑では妖怪@老中さんより大本敬久「牛鬼論 妖怪から祭礼の練物へ」の論文をご教示いただいた。牛鬼の尾の剣は、折れると人が死ぬなどの俗信をともなうことがあるようだ。
(文・永島大輝氏)

*これは10月20日(日)にオンライン(Zoom)で開催された第148回の要旨です。
*上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名を明記してください。
*次回は11月23日(土)15時にオンライン(Zoom)で開催予定です。

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プロフィール
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異類の会
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15
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非公開
誕生日:
2009/09/15
自己紹介:
新宿ミュンヘンで誕生。

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