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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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タイトル:謡曲仕立ての精進魚類合戦―『魚類扣』の紹介―
発表者:伊藤慎吾

要旨:
 異類合戦物の主要な対立軸に〈魚類×精進物〉がある。これは中世後期から行われてきたもので、『精進魚類物語』はその嚆矢として名高い。その後、近世から近代にかけて、このテーマは草双紙や講釈、歌謡、浮世絵などに展開していった。パフォーマンスとしては〈読み〉や〈語り〉にとどまるものと思われたが、最近、謡曲としての創作も行われていたことが新出の写本『魚類扣』から確認できた。

 本作品は謡曲形式ということもさることながら、登場キャラタクーには、ナマコの次郎やハララゴの太郎など、古く『精進魚類物語』の流れを汲むもの擬人名が見られる。そして最も近似する作品は「うおがせん幷しやうじんもの」である。本作品は寛文8年(1668)に刊行された『軍舞(いくさまい)』所収の一編で、本文が謡曲仕立てになっている点に大きな特色がある。『魚類扣』はストーリーの結末が異なり、本文や登場キャラクターにも異同が多いが、異本関係にあるということができる。『精進魚類物語』との距離は、両作品それぞれに相対的な親疎が認めれられることから、共通祖本から一方では絵入版本『うおがせん幷しやうじんもの』として刊行され、一方では『魚類扣』として書写されたのではないかと考えられる。


 なお、詳細は『日本文化研究(國學院大學栃木短期大学)』最新号(213月刊行予定)に掲載する予定である。

※本発表は2020年9月13日、Zoomによって開催されました。

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タイトル:天狗尽くしの系譜
発表者:久留島元氏

要旨:
従来、『天狗経』に見られる天狗尽くしは、修験者の山入りにおける除災の修法という機能から呪的側面が注目される。『花月』『鞍馬天狗』などにあらわれる天狗尽くしにもこうした天狗祭文が影響を与えたと考えられる一方で、『梁塵秘抄』以来の伝統的趣向として物尽くしという文芸的性格も切り離せない。
本報告では、お伽草子や古浄瑠璃正本、絵本などに近世初期に集中して見える天狗尽くしの事例を紹介した。ここでは言葉遊びにもとづく名前なども多く、閉鎖的な秘法の類というより俗文芸と密接に関わるものであることを指摘した。
また、中世末に成立した『月庵酔醒記』にも天狗名や霊山を列挙する祭文が収載されている。『月庵酔醒記』研究では、天台宗系の山渡り祭文にも同様のものがあることをふまえ、中世に溯る除災の天狗祭文が中下層の宗教者によって担われ、謡曲にも取り込まれたこと、記録されたものとしては最も古い例であることが指摘される。首肯すべき見通しであるが、本報告では祭文の呪的側面だけでなく、物尽くし、言葉遊びの文芸的、娯楽的側面に注目し、修験だけでなく俗文芸のなかで天狗イメージが形成されてきたことを述べた。
質疑応答では、近世仏教における魔・天狗と信仰の問題、天狗物の謡曲が作られた年代と背景についての質問、謡曲や歌謡など芸能における物尽くしと、祭文や起請文における神さま尽くしを同列に考えて良いのかという問題などが指摘された。また、「いざなぎ流」の山渡り祭文や、上今道念節の詞章にも「天狗揃」「天狗尽くし」があるという指摘があり、趣向がもつ広がりが改めて明らかにされた。(文・久留島元氏)



※当発表は6月27日オンライン開催の第100回の例会で口頭発表したものです。
※上記文章を直接的、間接的に使用する際は、必ず発表者の説であることを明記してください。
※次回は9月13日(日)午後2時オンライン開催の予定です。

 よろしくお願いします。



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共通テーマ:〈病〉と異類
発表者と各タイトル *敬称略
1 伊藤慎吾:エジプトの「死神」
2 磯野康孝:疫神
3 永島大輝:風邪の神送り
4 林京子:叡山文庫蔵『岩船地蔵誓願参日記』
5 羽鳥佑亮:貧乏神と疫病神
6 今井秀和:異類関係の薬袋
7 中根優作:アマビエブーム
8 幕張本郷猛:少年少女雑誌の奇病特集
9 式水下流:特撮作品中の病に関わる妖怪
この回の詳細は『怪と幽』vol.005(9月刊行)に毛利恵太氏が報告されています。
ぜひご購読ください。
https://www.kadokawa.co.jp/product/321910000645/

さて、今回は本会初めてのZoomによるオンライン開催でした。
多分に実験的なものであったため、1回にカウントせず、99.5回としました。
この時はまだコロナ禍がこれほどまでに長引くとは思わず、第100回を大々的に行おうという腹積もりだったからです。
その目論見が今や完全に潰えたわけですが、振り返ってみると、この回こそ、第100回に相応しい規模のものでした。
 

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『怪と幽』004号が刊行されました。
https://www.kadokawa.co.jp/product/321910000644/



本誌には毎号、異類の会の研究会レポートを載せていただいております。
今回は式水下流さん(妖怪同人誌「たわらがた」主宰)が執筆されました。

ぜひご購読ください!

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タイトル:令和元年度日々の俗信・世間話報告 異類編
発表者: 永島大輝氏

 当日は早めに会場に着くと一人で座って作業をしていたのだが、楽器を抱えたグループが近くにきた。
 その中の若い兄ちゃんが「コロナウィルスって熱には弱いっぽいね」と仲間に語り始めるのが聞こえた。
 曰く、母親から朝に送られてきたLINEには、研究者の情報によるとお湯を飲むとコロナウィルスがその熱で死ぬということが書かれていたのだという。
 実は同様の言説をすでに発表者はFacebookで見ており、典型的な流言飛語と感じていた。
それを異類の会参加者に伝えると、文面の中で温度を変え、広まっていることが今回の会の参加者からも知ることが出来た(26度や27度のお湯や、36度のお湯などの説がある)が、こうした流言を目の当たりにしたのは驚いた。
 ちなみに翌朝、家族にこのことを話すと、すでにテレビのニュースで注意喚起が促されていたという。この文章を書いている2月29日現在、検索するとデマを喚起する文面ばかりなのでほぼ終息した流言だろう。
 非常時には情報が不足しそれらしい話が町にあふれる。それらも含めた日常生活の話を世間話ととらえ、今回は主として三宅島や中学校での話などを報告した。

 付け加えておくが、もちろん世間話の範囲は流言や変わった話だけではないと考えているし、広く捉えるべきと思っている。
 例えば、三宅島では噴火の際に「赤いのが出ないとダメだ」という言い回しがあると聞いた。赤いのとは溶岩のことだが、黒い噴煙だけだとなかなか止まないという。
あるいは、三宅島では五月ごろは野ダケというダシが出ないタケノコを食べており6月ごろからはニガタケを食べるという話も聞いた。こうした話も世間話と捉えることも可能だと思う。
 しかし、これは異類ではないので発表時には保留した。

 最近はかつて共有されたゲームの裏技や攻略法も世間話の題材になることが多いと思っている。
 この前は職場の同僚たちがみんなポケモンに詳しかったので話を聞いた。
 そのなかで最近のポケモンの話題に付いて行けず、流れを変えようと「けつばん」というのがあった話をこちらからした。「けつばん」というのは公式なポケモンではないが、ポケットモンスター赤・緑などで、裏技で出すことが出来たのだ(いわゆるバグポケモンとも呼ばれることがのちにネットで検索したところわかった)。
 すると、けつばんというポケモンはポケットモンスター赤・緑に出るはずだったポケモンホウホウ(公式にはポケットモンスター金・銀から出る)が、諸事情により出せず、バグとして残ったものが「けつばん」なのだという話を聞くことが出来た。

 このようにポケットモンスターという共通の知識をもとに語られる
話がある。たとえば、「考察」としてポケットモンスターにまつわる話がまことしやかに語られることもある。

 これは今の十代にも見られる現象であり、他には例えばジブリのアニメや童謡にまつわる都市伝説も共有されたコンテンツにまつわる世間話といえよう(もちろん同様のことは昔からあるわけだが、一方で土地の伝説などはあまり子どもから聞くことが出来ない)。

 他には、三宅島の忌みの日に現れるという「コウロベサマ」などの
聞き書きや、不思議な体験などの聞き書きや録音から、「怪異の個人化」が進んだのではないかとまとめた。

 フリートークでは、ポケモンファンによる状況提供や、「コウロベサマ」と「馬の角」に関する質問、そのほか学校の怪談での質問があった。
 ポケットモンスターはドラゴンクエストよりも、語られている都市伝説が多かったり、ジブリとなりのトトロが多いことが分かった。崖の上のポニョに関する都市伝説は大学生からは聞くことが出来るが、中学生はあまりポニョの話をしていないということが参加者たちの観測範囲からは分かるようだ。
 これら録音などはまだ雑誌など報告ができておらず、作業を進めたい。(文・発表者)
 

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2009/09/15
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新宿ミュンヘンで誕生。

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