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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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日時:3月30日(日)15:00 
会場:オンライン(Microsoft teams)

1. タイトル:
 殺生石の破損を巡るSNS上の言説

発表者:森下陽向

要旨:
 2022年3月5日、栃木県の那須に存在する殺生石が割れていることが発覚した。この事象はその物珍しさからか連日多くの憶測が飛び交い、またその話題の注目の高さからニュースなどでも取り上げられるまでに至った。その一連の流れの中でも特に興味深かったのが、TwitterなどのSNSを通じて拡散された、「殺生石に封じられていた狐が出て来た」という、従来の伝説とは異なる物語が付与された事だ。このような既存の伝説の変容、新たな物語性の付与にどのような傾向があり、またそこから何を読み取ることができるのか、噂の伝播など研究を参考に考察していく。


2. タイトル:
 「霊魂を感じてしまう人」たちのライフヒストリー 
  ー出産・宗教・地域性からルーツを探るー

発表者:野村美緒

要旨:
 私の母方家系には5名、霊魂を感じてしまう。5名の共通点は全員が女性であること。この五名のライフヒストリーを基に、祖母の怪火の話から死を悟る、虫の知らせを感じることへの真偽を事例や母方家系の信仰宗教などから仮説・立証していく。また、女性という共通点から妊娠・出産の関与について民俗的観念から調査を行った。祖母や曾祖母の実家がある地域の民間宗教なども調査し、なぜ遺伝したのか、経緯やルーツを探る。

※来聴歓迎! 初めて参加する方はX(舊Twitter)
  @NarazakeMiwa
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タイトル:
 絵馬友の会の小絵馬の図像と絵馬趣味


発表者:
 間所瑛史氏

要旨:

 日本絵馬友の会は1978年に日本絵馬協会によって結成された会である。協会の主催する絵馬展を見たコレクターからの要望で設立し、毎月会員に絵馬を頒布し、1993年まで活動していた。友の会は関東と関西に支部を持ち、講演会などのイベントをおこなっていたほか会報を発行し、会員との交流をおこなっていた。


 頒布された絵馬は各地の社寺のもののほか、協会に所属する絵馬師によって複製されたものが存在した。頒布される絵馬のなかで「古式」と呼ばれるものは各地に奉納された絵馬を複製したものである。「古式」絵馬の典拠は、石子順造の『小絵馬図譜』に掲載された絵馬が最も多く、次に岩井宏實の『絵馬』に掲載されたものが多かった。そのほか、北条時宗や西沢笛畝などが刊行した絵馬図集に共通する絵馬も存在した。頒布された絵馬には解説書も同封されていたが、初期は当時、大阪市立博物館の学芸員だった岩井が解説を執筆しており、解説の内容は『絵馬』の中の説明と一致した。また、七重浜海津見神社に残されていた資料からは、友の会の会員が複製してほしい絵馬のリクエストをおこなっていることがわかり、その際に過去に出版された研究者や有名なコレクターの本を参照した可能性を指摘した。


 これまで絵馬は信仰の文脈で研究されることが多かった。しかし、明治以降は郷土玩具とともに絵馬は収集の対象となっていった。友の会の頒布した絵馬からは信仰だけではなく、美術、趣味としての絵馬というもうひとつの側面が浮かび上がってくる。


 質疑応答では1930年代の趣味雑誌のコレクターの特徴との関連性や交換会についてのコメントがあった。現在の寺社でオリジナルな絵馬が販売されるようになった経緯や友の会が発行していた会報については今後の課題としたい。(文・間所瑛史氏)


*これは2025年2月24日(月)にオンライン(Zoom)で開催された第152回の要旨です。
*上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名を明記してください。
*次回は3月30日(日)15時にオンライン(Zoom)で開催予定です。

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日時:2月24日(月/振替休日)15:00 
会場:オンライン(Zoom)

タイトル:
 絵馬友の会の小絵馬の図像と絵馬趣味

発表者:間所瑛史氏

要旨:
 戦後、絵馬師による団体によって「絵馬友の会」が結成された。友の会は全国の絵馬趣味の会員に毎月小絵馬を頒布しており、その点数は400点を超える。現在、友の会が頒布した小絵馬はコレクターの手を離れ博物館などの研究機関に寄贈されたものもある。絵馬は寺社で作られる小絵馬をまとめて購入したものの他に「古式」と呼ばれる、奉納された絵馬を絵馬師が模写したものも存在する。本発表では「古式」の絵馬を中心に、友の会が頒布した絵馬の典拠を調べ、そこから近現代の絵馬趣味の一端を考えていく。

※来聴歓迎! 初めて参加する方はX(舊Twitter)
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タイトル:
 琵琶湖の魚をめぐる近世の「知」の世界
 ーー「ガナイタ」に注目してーー


発表者:
 服部友香氏

要旨:
 18世紀以降、本草学・博物学が発展をみせる中で、琵琶湖の魚に焦点をあてた水生動物誌や博物図譜が複数制作された。本発表においては、そうした博物学的資料の一部において取り上げられている正体不明の魚「ガナイタ」に注目した。
 この「ガナイタ」は、2023年11月にX(旧Twitter)でtera(寺西政洋)氏が紹介したことで話題となった。寺西氏が紹介したのは、幕府の奥医師、博物学者であった栗本丹洲(1756-1834)の遺稿を子孫や門人がまとめて出版した『皇和魚譜』の「ガナイタ」図である。そこには細長い体と長いヒレ、つぶらな目、3本の長い髭が伸びる上顎と突出した下顎を持つ魚が左向きで描かれている。添えられた解説によれば琵琶湖に生息しており、体長は5、6寸(15~18㎝)、鋭いトゲがありギギよりも激しく人を刺すという。ナマズ目の魚に似てはいるものの、日本の淡水魚の鬚はいずれも偶数本で、左右で対になっている。「ガナイタ」のように奇数本の鬚を持つものはいない。また鰭も日本の淡水魚にはあまり見られない形である。
 本発表では、このような特異な「ガナイタ」の図像が生み出された背景を、近世の博物図譜の制作状況と絡めて論じた。近世の博物図譜は、常に著者が状態のよい生体を写生できるわけではないことから、不正確な描写や先行の図譜の転写を多分に含んでいる。また先行の図譜における魚の絵図に問題が多いことから、文字情報から新たに図像を描き起こした事例も存在する。そうした状況が、現存する日本の淡水魚の形状から大きく逸脱した「ガナイタ」の図像を生んだと考えられる。また「ガナイタ」の3本の鬚は上唇の中央と両端に描かれているのだが、東京大学附属図書館が所蔵する『京阪淡水魚圖』という博物図譜の「アユモドキ」図も、上唇の中央に1本の鬚を生やした姿で描かれている。アユモドキをはじめとするドジョウ科の魚の上唇の周辺に密集した鬚が、このように誤認された可能性は否定できない。
 また、発表においては諸資料に見える「ガナイタ」において概観し、19世紀における博物誌や図譜の制作、ことに琵琶湖周辺の藩における水生動物誌制作のムーブメントの中で、「ガナイタ」がどのように取り扱われてきたのかを明らかにした。そして琵琶湖の一地域における方言であったこの魚名が、膳所藩の医師であった渡邉奎輔の『淡海魚譜』に取り上げられ、それが江戸の丹洲に参照されるというルートで広まった可能性を示した。実は、『淡海魚譜』や丹洲の肉筆の図譜である『栗氏魚譜』における「ガナイタ」の解説は、『皇和魚譜』のそれと相違するところが多い。これは、丹洲没後に子孫や門人が『栗氏魚譜』を資料として『皇和魚譜』を編む過程で、付近に描かれた別の魚(アカザ)の解説を「ガナイタ」の絵図に結びつけてしまったことによると考えられる。そして以降、丹洲への信頼を背景として、『淡海魚譜』・『栗氏魚譜』の「ガナイタ」、『皇和魚譜』の「ガナイタ」がそれぞれに後続の図譜に転写・踏襲されてゆくこととなる。しかし日本の魚類研究に西洋からもたらされた分類学的な視点が導入されると、存在が確認できず学名をつけるための標本を作れない「ガナイタ」は切り捨てられ、やがて忘れ去られてしまうのである。

 質疑にあたっては、本発表の準備の際に多大なご助言をいただいた滋賀県立琵琶湖博物館学芸員の金尾滋史氏から、「ガナイタ」に類似した特徴を持つ淡水魚の写真をお見せいただいた。また、質疑の中では、当時の博物誌・図譜における、生体を確認することが叶わない状態で各地の呼称を収集するという状況に注目が集まった。それが他の魚との混同や、一地方の方言などが独立して、元の魚とは異なる「魚名」として扱われることの契機となった可能性が示された。食品として市場などで流通する魚ではなく、その姿形や実在性を確認するのが難しかったことが、博物誌・図譜において「ガナイタ」が転写され続けてきたことに繋がっていたのではないか。
 なお、発表後、新たに「ガナイタ」関連の資料の存在を確認することができた。いずれ、何らかの形でご紹介させていただければ……と思っている。(文・服部友香氏)


*これは2025年1月26日(日)にオンライン(Zoom)で開催された第151回の要旨です。
*上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名を明記してください。
*次回は1月26日(日)15時にオンライン(Zoom)で開催予定です。
 

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日時:1月26日(日)15:00 
会場:オンライン(Zoom)

タイトル:
 琵琶湖の魚をめぐる近世の「知」の世界
  ーー「ガナイタ」に注目してーー

発表者:服部友香氏

要旨:
 2023年11月、X(旧Twitter)でtera(寺西政洋)氏が紹介した「ガナイタ」という謎の魚の図像が話題となった。
 この図像は幕府の奥医師、博物学者であった栗本丹洲(1756-1834)の『皇和魚譜』に見えるもので、細長い体と長いヒレ、つぶらな目、3本の長い髭が生えている上顎と突出した下顎が特徴的である。添えられた解説によれば琵琶湖に生息しており、トゲがあって人を刺すという。ナマズ目の魚に似てはいるものの、このような特徴を有する魚の存在は確認されていないため、UMAとして扱う向きもある。
 本発表では、近世後期に琵琶湖周辺の諸藩の藩士により行われた湖魚研究や丹洲をはじめとする博物学者の著作において、「ガナイタ」がどのように扱われてきたかを明らかにする。そして湖魚に関する先行の資料を引用、転写する過程で『皇和魚譜』の「ガナイタ」が生み出されたことを指摘するとともに、それが丹洲の著作への信頼を背景として後続の図譜などに踏襲されていった可能性を示したい。

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プロフィール
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15
性別:
非公開
誕生日:
2009/09/15
自己紹介:
新宿ミュンヘンで誕生。

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