異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
ゼロ年代以降、ライトノベル作品には、日本の妖怪が登場するものが多くみられるようになった。
本発表では、そこに描かれる妖怪の傾向を捉えようとしたものである。
もともと、このジャンルではRPG的世界観に基づく冒険・退魔物が主流であったが、2000年代以降、和風のものが増えていく。その際、陰陽師や巫女が活躍することになるが、現代を舞台とする場合は、西洋的な剣と魔法に、陰陽師・巫女の術と剣術の混成が一般化する。
また、伝承妖怪を取り入れる際、『画図百鬼夜行』『絵本百物語』がしばしば用いられることも注意される。これは90年代の国書刊行会刊行本の流布が要因だろう。(文・伊藤慎吾)
※次回の例会は10月22日(土)14時、國學院大學若木タワー14階打ち合わせ室で開催します。
詳細は追ってお知らせします。
本発表では、そこに描かれる妖怪の傾向を捉えようとしたものである。
もともと、このジャンルではRPG的世界観に基づく冒険・退魔物が主流であったが、2000年代以降、和風のものが増えていく。その際、陰陽師や巫女が活躍することになるが、現代を舞台とする場合は、西洋的な剣と魔法に、陰陽師・巫女の術と剣術の混成が一般化する。
また、伝承妖怪を取り入れる際、『画図百鬼夜行』『絵本百物語』がしばしば用いられることも注意される。これは90年代の国書刊行会刊行本の流布が要因だろう。(文・伊藤慎吾)
※次回の例会は10月22日(土)14時、國學院大學若木タワー14階打ち合わせ室で開催します。
詳細は追ってお知らせします。
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コンピュータゲーム作品における〈妖怪〉や想像上の存在のデザイン方法は大きく
分けると三つある。
1◆見ただけで〈妖怪〉とわかるデザイン(天狗・河童・鬼・ろくろ首・狐・狸・
からかさおばけ・ちょうちんおばけなど)
2◆妖怪図鑑や書籍・美術書などにおさめられている〈妖怪〉を素材としたデザイ
ン
3◆あらたにつくられたデザイン
3のなかには、足利・徳川期の作品郡にもひろくつかわれているデザイン手法が見
られる。器物や無生物にそのまま目や手足をつけただけのデザインしたもの(黒本な
どにある主人公を襲う器物の妖怪と非常に近い)連想・地口・鞄語など言葉の上での
かたちをそのままデザインしたもの(「くちぐるま」=「人間のくち+車」といった
絵にするというやりかた)などである。
ゲームに登場する〈器物の妖怪〉にはからかさおばけやちょうちんおばけ、器物に
目や手足がついたものが多かった(文字が画面上に表示されないというゲームが古く
は機器の制限などから多かったという点も考えられる)また、鳥山石燕『百器徒然
袋』から登場する〈器物の妖怪)の名前やデザインの使用(それとからんでくる付喪
神という解説なども併せて)が1990年代中頃から目立ってゆく過程と、3の手法であ
らたにつくられた〈器物の妖怪〉とのバランス関係などについてをまとめた。
以上のことから、おおまかにゲームにおける〈妖怪〉をまとめると次のようなもの
である。
甲◆画面に登場する敵キャラとしてのデザイン・動きの要素が高い妖怪(妖怪であ
るという情報の提示の重要性が低い)
アクションゲームやシューティングゲームなど
ロールプレイングゲーム(3の手法も多く含む 数多く登場する敵キャラのバ
リエーションとして)
乙◆ストーリー上・画面表示上で出される設定情報や名前としての要素が高い妖怪
(妖怪であるという情報の提示の重要性が高い)
ノベルゲームや、ロールプレイングゲームのイベント的なもの
伝承に基く必要性が濃厚 バリエーションの豊富さは必要ではない
丙◆キャラクター数の豊富さの引き出しのひとつしての妖怪(特に蒐集性を前提と
したゲーム)
一般の情報環境で引き出せる妖怪の〈名前〉が年ともに増えてきたことによる
伝承に基く必要性が濃厚である バリエーションの豊富さ(しかし〈名前〉の
ない石燕以外の〈器物の妖怪〉はこの分野で増えづらい)
ゲーム作品については変遷を深くたどるための作品把握や情報や開発についての証
言資料などの蓄積が万全であるといえない部分も多い。今後もその点に注意しつつ、
把握や保全につとめていきたい。(文・発表者 氷厘亭氷泉氏)
※次回は7月22日2時(於・國學院大學)からとなります。
発表者:伊藤慎吾
タイトル:「ライトノベルの妖怪について(仮)」
分けると三つある。
1◆見ただけで〈妖怪〉とわかるデザイン(天狗・河童・鬼・ろくろ首・狐・狸・
からかさおばけ・ちょうちんおばけなど)
2◆妖怪図鑑や書籍・美術書などにおさめられている〈妖怪〉を素材としたデザイ
ン
3◆あらたにつくられたデザイン
3のなかには、足利・徳川期の作品郡にもひろくつかわれているデザイン手法が見
られる。器物や無生物にそのまま目や手足をつけただけのデザインしたもの(黒本な
どにある主人公を襲う器物の妖怪と非常に近い)連想・地口・鞄語など言葉の上での
かたちをそのままデザインしたもの(「くちぐるま」=「人間のくち+車」といった
絵にするというやりかた)などである。
ゲームに登場する〈器物の妖怪〉にはからかさおばけやちょうちんおばけ、器物に
目や手足がついたものが多かった(文字が画面上に表示されないというゲームが古く
は機器の制限などから多かったという点も考えられる)また、鳥山石燕『百器徒然
袋』から登場する〈器物の妖怪)の名前やデザインの使用(それとからんでくる付喪
神という解説なども併せて)が1990年代中頃から目立ってゆく過程と、3の手法であ
らたにつくられた〈器物の妖怪〉とのバランス関係などについてをまとめた。
以上のことから、おおまかにゲームにおける〈妖怪〉をまとめると次のようなもの
である。
甲◆画面に登場する敵キャラとしてのデザイン・動きの要素が高い妖怪(妖怪であ
るという情報の提示の重要性が低い)
アクションゲームやシューティングゲームなど
ロールプレイングゲーム(3の手法も多く含む 数多く登場する敵キャラのバ
リエーションとして)
乙◆ストーリー上・画面表示上で出される設定情報や名前としての要素が高い妖怪
(妖怪であるという情報の提示の重要性が高い)
ノベルゲームや、ロールプレイングゲームのイベント的なもの
伝承に基く必要性が濃厚 バリエーションの豊富さは必要ではない
丙◆キャラクター数の豊富さの引き出しのひとつしての妖怪(特に蒐集性を前提と
したゲーム)
一般の情報環境で引き出せる妖怪の〈名前〉が年ともに増えてきたことによる
伝承に基く必要性が濃厚である バリエーションの豊富さ(しかし〈名前〉の
ない石燕以外の〈器物の妖怪〉はこの分野で増えづらい)
ゲーム作品については変遷を深くたどるための作品把握や情報や開発についての証
言資料などの蓄積が万全であるといえない部分も多い。今後もその点に注意しつつ、
把握や保全につとめていきたい。(文・発表者 氷厘亭氷泉氏)
※次回は7月22日2時(於・國學院大學)からとなります。
発表者:伊藤慎吾
タイトル:「ライトノベルの妖怪について(仮)」
南方熊楠はしばしば、怪異・妖怪の伝承に対して、自然科学の知識を用いてその「正体」を合理的に解釈している。
こうした書きようは、博覧強記で世界各地の伝承を数多く知識として持ちつつ、植物採集により鍛えられた冷静な観察眼と自然科学の知識を併せ持つ、文理相持つ熊楠ならではといえる。
熊楠はそうした「正体」を、大きく3つの類型で説明する。
①自然界に存在する事物や事象で説明
例:天狗の爪→サメの歯の化石 セントエルモの火→静電気
②人間の誤解や思い込み
例:スッポンはバラバラにするとその肉片から生まれる→スッポンの肉を食うタガメの誤認
③古代の制度や慣習の残存
例:千匹狼の伝承→獣に扮して凶事を働いた人間の仕業
こうした熊楠の「自然科学の知識を用いて民間伝承をとらえなおす」姿勢は、ネイチャー誌上から発した、ロシア人投稿者のオステン=サッケンとのブーゴニア(ミツバチは牛の死体から化生する、という古代の伝説)をめぐるやりとりにその初発があると思われる。
こうした熊楠の多角的な視点を重要視する姿勢は、学問のシステムが整えられ、専門性が重視されるようになるにつれて、扱いかねるものとなっていく。
(ネイチャー誌への投稿があまり採択されなくなっていく、など)
しかし熊楠の多角的な視野は、怪異・妖怪のような伝承を考えるにあたって、参考になるものと思われる。
(文・発表者 飯倉義之氏)
※以上、第63回発表(2016年4月27日 於國學院大學)の発表要旨です。
こうした書きようは、博覧強記で世界各地の伝承を数多く知識として持ちつつ、植物採集により鍛えられた冷静な観察眼と自然科学の知識を併せ持つ、文理相持つ熊楠ならではといえる。
熊楠はそうした「正体」を、大きく3つの類型で説明する。
①自然界に存在する事物や事象で説明
例:天狗の爪→サメの歯の化石 セントエルモの火→静電気
②人間の誤解や思い込み
例:スッポンはバラバラにするとその肉片から生まれる→スッポンの肉を食うタガメの誤認
③古代の制度や慣習の残存
例:千匹狼の伝承→獣に扮して凶事を働いた人間の仕業
こうした熊楠の「自然科学の知識を用いて民間伝承をとらえなおす」姿勢は、ネイチャー誌上から発した、ロシア人投稿者のオステン=サッケンとのブーゴニア(ミツバチは牛の死体から化生する、という古代の伝説)をめぐるやりとりにその初発があると思われる。
こうした熊楠の多角的な視点を重要視する姿勢は、学問のシステムが整えられ、専門性が重視されるようになるにつれて、扱いかねるものとなっていく。
(ネイチャー誌への投稿があまり採択されなくなっていく、など)
しかし熊楠の多角的な視野は、怪異・妖怪のような伝承を考えるにあたって、参考になるものと思われる。
(文・発表者 飯倉義之氏)
※以上、第63回発表(2016年4月27日 於國學院大學)の発表要旨です。
本発表は南方熊楠が集めた南紀熊野地方の妖怪情報にどのようなものがあり、またどのようなところから収集したのかを主に考察したものである。
熊楠の聞書資料として、日記巻末への書き込みや抜書類(『課余随筆』『ロンドン抜書』『田辺抜書』)への書き込みがある。
まず日記巻末や『田辺抜書』から妖怪資料を整理して示し、それらから論考上の進展があることを指摘する。
ついで熊楠の妖怪研究の継承者として雑賀貞次郎、宮本恵司を挙げ、その実績を紹介する。
※以上、第62回の会(2016年3月23日)の広川英一郎氏「南方熊楠と紀南の妖怪」の発表要旨です(文責・伊藤慎吾)。
※次回の異類の会は4月27日18時から同じ会場で行います!
熊楠の聞書資料として、日記巻末への書き込みや抜書類(『課余随筆』『ロンドン抜書』『田辺抜書』)への書き込みがある。
まず日記巻末や『田辺抜書』から妖怪資料を整理して示し、それらから論考上の進展があることを指摘する。
ついで熊楠の妖怪研究の継承者として雑賀貞次郎、宮本恵司を挙げ、その実績を紹介する。
※以上、第62回の会(2016年3月23日)の広川英一郎氏「南方熊楠と紀南の妖怪」の発表要旨です(文責・伊藤慎吾)。
※次回の異類の会は4月27日18時から同じ会場で行います!