異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
「南方熊楠と鼠の文学史」
発表者:伊藤慎吾
要旨:
なお、1月5日に南方熊楠顕彰館で「十二支考<鼠>談義」 という講演会(というか、トーク・セッション)があります。
発表者:伊藤慎吾
要旨:
鼠は日本人が文字を獲得し、文学を創作するようになると、 単に害獣としてだけでなく、鼠の生きる見えない世界を想像し、 また古くから感じていた霊性も、 民間信仰や仏教の展開に伴って文学作品に様々に描かれるようにな った。
南方熊楠は、大正12年(1923)、雑誌『太陽』 に掲載すべく「鼠に関する民俗と信念」を執筆した。結局、 これは掲載中止となった。 差し戻された当該原稿からは幾つかの論考がさらに派生的に作られ た。
これらの論考に共通するのは、 古今東西の文献を縦横に使いながら鼠の諸相を考察していることで ある。諸相というのは、具体的には鼠の嫁入り・鼠の報恩・ 鼠除けのまじない・異名「ヨメ」・子の日・正月の掃除・ 甲子祭の装束 ・鼠の妖怪・白鼠・鼠の神・大黒天・大黒(住僧の妻)・ 毘沙門天・作物被害・武具の鼠損などだ。
これらを取り上げる場合、 熊楠には文学史的な関心が極めて低かった。 古典文学に描かれた鼠の中で、熊楠の関心を惹いたのは、 古代以来の白鼠の聖性、中世以来の大黒天との関わり、 福神信仰との習合程度のことであった。詩歌の題や鉄鼠、 月日の鼠、 擬人化といった文学史的に重要な側面については無関心であったと いえる。
南方熊楠は、大正12年(1923)、雑誌『太陽』
これらの論考に共通するのは、
これらを取り上げる場合、
文学資料を渉猟しながら、それらを和漢洋の古今の文献と同等に、 質の違いに注意を払うことなく扱ったのであった。
※以上は2019年11月30日の発表要旨です。
※以上は2019年11月30日の発表要旨です。
なお、1月5日に南方熊楠顕彰館で「十二支考<鼠>談義」
伊藤と一條宣好さんも話をします。
ぜひご参加ください。
次回の例会は1月11日(土)14時から武蔵大学で開催します。
発表者は一條宣好氏です。
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日時:11月30日(土)17時30分~19時30分
会場:新宿区若松地域センター 第2集会室B
※最寄り駅=都営大江戸線若松河田駅(河田口より徒歩2分)
発表者:伊藤慎吾
タイトル:南方熊楠と鼠の文学史
要旨:
戦前の博物学者南方熊楠は十二支に関わる動物の一つとして鼠を調べ、「十二支考」の一編として論考をまとめた。
他の「十二支考」論考と同様に古今東西の文献を縦横に使いながら、本論でも鼠の諸相を考察している。
雑誌掲載を見送られたこの論考から、さらに派生した未発表・未定稿の草稿が数種残っている。
本発表では、鼠の文学史を概観しつつ、 これら熊楠の鼠論考を整理し、 日本文学史研究の視点からその意義を考えていきたい。
※来聴歓迎!
※来聴歓迎!
「山梨県長源寺『蟹坊主』伝説について」
発表者:田中教如氏
要旨:
山梨県の中心部、山梨市の万力にある「長源寺」という曹洞宗の寺 院には「蟹沢山」という山号が付いており、それに合わせるように 『回国の僧が蟹の化け物を退治した』という伝説が縁起として残さ れている。
伝説の内容としては、
『夜な夜なこの地に化け物が現れて人々が苦しんでいたところ、密 教の法印がそれを退治しようとやって来る。法印は「両足八足大足 二足横行自在」の問答に打ち勝つことにより、化け物の正体を蟹だ と見破り、独鈷で蟹の殻を叩き割る。倒された蟹からは千手観音が 現れ、その後法印は「ここは禅林の地だ」といって曹洞宗の僧に頼 み、ここに長源寺を建てた。』
というものである。
由緒書きによるとその密教の僧は『中山救蟹庵主』なる人物である らしいのだが、今一つ調べてもどんな人物なのかはっきりとしない 。
更にこの伝説に似た話は各地に存在しており、殆どが曹洞宗や禅宗 に関わるものであった。やはり『問答』という要素と禅宗は切って も切り離せないのであろう。
そこで問題になってくるのが、何故長源寺の蟹坊主伝説は曹洞宗の 話であるのに、主人公は密教の法印であるのかということである。 これは、堤邦彦『近世説話と禅僧』に見られるように、曹洞宗の布 教活動、地方進出の作戦のひとつではないかと結論付けた。
曹洞宗は地方に根を広げるにあたって、土着の宗教がそのまま曹洞 宗の外護者であったという伝説を作ってしまうことがよくある。
つまり、密教と禅宗が混ざりあったようなこの不思議な伝説は、元 からその地方に根付いていた密教を、あとから進出してきた曹洞宗 が、形を変えずにそのまま飲み込むための方法だったのである。
(発表者談)
私が発表させていただいたのは、ひとまずここまでであったのです が、質疑応答で・鉄人伝説と共通するところがある・問答に漢字の 知識を前提としている等々、様々な有意義なアドバイス、助言を頂 き、まだ調べが甘かったことを痛感いたしました。調べる範囲も多 く、今後研究を続けていくとすれば、何かしらテーマを絞り、 そこを深く掘り下げていくような研究をしていきたいと思いました 。御静聴ありがとうございました。
(以上、発表者識す)
伝説の内容としては、
『夜な夜なこの地に化け物が現れて人々が苦しんでいたところ、密
というものである。
由緒書きによるとその密教の僧は『中山救蟹庵主』なる人物である
更にこの伝説に似た話は各地に存在しており、殆どが曹洞宗や禅宗
そこで問題になってくるのが、何故長源寺の蟹坊主伝説は曹洞宗の
曹洞宗は地方に根を広げるにあたって、土着の宗教がそのまま曹洞
つまり、密教と禅宗が混ざりあったようなこの不思議な伝説は、元
(発表者談)
私が発表させていただいたのは、ひとまずここまでであったのです
(以上、発表者識す)
日時:10月26日(土)14時
会場:武蔵大学3号館2階3201教室(院生GS)
※最寄り駅=西武池袋線江古田駅/西武有楽町線新桜台駅/都営大江戸線新江古田駅
発表者:田中教如氏
タイトル:
山梨県長源寺『蟹坊主』伝説について
山梨県長源寺『蟹坊主』伝説について
要旨:
山梨県山梨市万力という場所に『蟹沢山長源寺』という曹洞宗の寺院があり、そこには縁起として『蟹の化け物に問答を出され、それに答えて化け物を調伏した』という伝説が伝わっています。
化け物に問答を出される話は数々ありますが、しかし長源寺の伝説は少し変わっており、曹洞宗の寺院でありながら伝説の主人公は『密教の僧』でありました。
その違和感を元に、文献資料やフィールドワークでお聞きした話等 を合わせ吟味し、長源寺の蟹坊主伝説の発祥と変遷について考察す るレポートとなっております。
※来聴、歓迎です。
※来聴、歓迎です。
「山田野理夫 その怪談と妖怪と美」
発表者:式水下流氏
発表者:式水下流氏
水木しげるの妖怪解説にも多く影響を与えたのが、
山田野理夫は仙台に生まれ、 両親から土地の民話を聞いて育っていた。( 原話者に両親の名前も)その後、農林省の調査員、 宮城県の編纂委員として色々な土地に赴いたことから東北を中心に 聞書を行い、怪談収拾ノートとしてまとめていった。 ノートは聞書した話だけでなく、 調査した文献から抜き出した話も記載されていたことが、 著作から推測できる。
そこから話を膨らませて、 土地土地の個性を崩さないように歴史的強度的抒情を意識したとあ るので、一つの話(『宮城の民話』と『仙台伝説集』) を参考に創作の傾向を確認した。地の文を会話文にしたり、 同一登場人物の別の話を組み込んだりもするが筋は大きく変えてい ないが、原文に書いていない誇張表現が幾つが見られた。
この創作技法が妖怪に対してどのように使われているかを山田野理 夫が多く採用している藤澤衛彦『妖怪畫談全集〜日本篇上』 のキャプションとの比較も行った。取り扱った妖怪はうわん・ イヤミ(否哉)・おとろし・神舞など藤澤衛彦の創作を採用し、 山田野理夫が話を膨らませたケースやぬらりひょんや目目連のよう に山田野理夫がオリジナルで創作したケースを上げて、 水木しげるやそれ以降の妖怪解説(図鑑・特撮・ゲーム等) に採用されている事例をあげた。 真贋の判定が難しい上手い匙加減で創作されているものもあるが、 明らかに誇張しすぎてしまっている例もあり、 それらは用例があってもそのような妖怪であるとは思われていない 。
また、 別項でわいらと赤舌という二体の妖怪に関して細かく分析を行った 。元々それらは図だけの特に説明のない妖怪であったわいらは「モグラを掘り食ふ」 と藤澤がキャプションを入れたものに、 雄と雌の色の話やモグラを食べているのを茨城県の医者が見たとい う話を更に水木しげるが自論を追加して、 拡散されたがためにわいらが茨城の妖怪であるという話やモグラを 食べるという話がわいらの要素になってしまっている。
赤舌は「関口を開き悪業の田を流す」 という藤澤のキャプションから農林省時代の水利や治水などの知識 から青森の水争いの話とし、 赤舌が水門を開くことで解決したという話を創作した。 これらは山田野理夫が何を元にしてどのように話を膨らませている かが、よく分かる事例である。
そこから話を膨らませて、
この創作技法が妖怪に対してどのように使われているかを山田野理
また、
赤舌は「関口を開き悪業の田を流す」
確かに辿れる情報が得られない状態では、学術的な視点としては、 それらを典拠とすることは危険であると言えるが、 山田野理夫は学術的に作品を発表していないので、 その作品としては決して悪いと言うことにはならず、 寧ろ民話や怪談や妖怪話として、情景が浮かび、 流麗で読みやすい、 素晴らしい作品であることは多くの人に知っていただきたい。
今後は創作に使われた素材(実際にある伝承であれば、 それを明示していく)がどのように変化したのか、 それが発表されて以降どのように流布されていったかは引き続き調 査していく。 情報自体は個々の嗜好や研究の対象として取捨選択は異なると思う が、妖怪の変遷を考える上では、 山田野理夫が与えた影響は避けては通れない道なので、 少なからず整備はしていきたい。(文・発表者)
(2019年9月21日於武蔵大学)
次回は今月26日午後2時、武蔵大学にて開催します。
詳細は追ってお知らせします。
詳細は追ってお知らせします。
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プロフィール
HN:
異類の会
年齢:
15
性別:
非公開
誕生日:
2009/09/15
自己紹介:
新宿ミュンヘンで誕生。
連絡先:
gijinka☆way.ocn.ne.jp
(☆を@にかえてください)
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