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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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日時:10月19日(日)15:00開始
会場:オンライン(Zoom)
タイトル:
 橘正一、佐藤清明と妖怪研究ネットワーク
発表者:神川隆氏
要旨:
 発表者は伊藤慎吾氏・氷厘亭氷泉氏『列伝体 妖怪学前史』(勉誠社、2021年)を数年前に読んで妖怪研究のネットワークに関心を持った。その後、民俗学成立期に発行された様々な雑誌を調べる過程でこのネットワークが当時の民俗・方言研究のネットワークに含まれていることに気が付いた。本発表では本書であまり取り上げられなかった橘正一と彼の発行した『民間信仰』(『化け物研究』)、当時の同好者・研究者ネットワークを佐藤清明『現行全国妖怪辞典』(中国民俗学会、1935年)を例にして紹介した。
 今回の発表の前提となる近年の民俗学史の研究動向も紹介した。民俗学成立期には小さな雑誌(リトルプレス)が各地域で発行されており、同好者・研究者がこれらの雑誌に集まっていた。特定の地域で発行されていた雑誌にも全国に読者・投稿者がいた。これらの雑誌上のネットワークの形成・離散、別の場所での再形成が民俗学史の一面であった。今回紹介した雑誌や同好者・研究者ネットワークもその一部である。
 橘の『民間信仰』は『化け物研究』として広告が出されのみで実際に発行されていないとされていたが、発表者が調査して実際に発行されていたことが分かった。この雑誌は1931年7月1日に発行され佐藤清明も投稿していた。しかしながら、橘が期待していたよりも読者が集まらず1号で廃刊となってしまった。
 また、橘は方言調査カードを全国の同好者・研究者に送付して方言研究に協力してもらっていた。その調査結果は橘の雑誌『方言と土俗』に発表されていた。この形式の共同研究は愛知県の加賀紫水の『土の香』や杉山正世の『愛媛県周桑郡郷土研究彙報』でもおこなわれていた。これらの報告には方言、地域名ではなく協力者の名前も記載されているという特徴があった。ここから当時の方言蒐集・研究の同好者・研究者ネットワークの広がりを明らかにでき、地域名から協力者をある程度推測することができるようになった。
 その例を近年顕彰・研究が進められている佐藤清明『現行全国妖怪辞典』を例にして紹介した。この書籍には妖怪名と地域名が記載されており、岡山県外の妖怪名を提供した可能性のある協力者を推測した。しかしながら、今回協力者が推測できなかった地域も多く今後の課題である。
(文・神川隆氏)

*これは2025年10月19日(日)にオンライン(Zoom)で開催された第160回の要旨です。
*上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名を明記してください。
*次回は11月23日(日)15時にオンライン(Zoom)で開催予定です。

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第160回開催のご案内

日時:10月19日(日)15:00開始
会場:オンライン(Zoom)


タイトル:
 橘正一、佐藤清明と妖怪研究ネットワーク


発表者:神川隆氏


要旨:
伊藤慎吾・氷厘亭氷泉編『列伝体妖怪学前史』(勉誠社、2021年)に発表者の関心を持っていた民俗学研究者が多く取り上げられていたため、きわめて興味深く読み妖怪研究のネットワークがあったことを知った。その後、発表者の関心である民俗学・郷土研究者と彼らの発行していた雑誌の調査を進める過程で発行されていないと考えられていた橘正一の『化け物研究』(『民間信仰』)を発見したり、当時の方言蒐集・研究ネットワークと妖怪研究のネットワークが一部重なっていることに気がついたりした。
今回の発表では『妖怪学前史』で取り上げられなかった先行者の仕事と妖怪研究ネットワークを紹介する。特に橘正一と彼の発行していた『化け物研究』(『民間信仰』)、佐藤清明『現行全国妖怪辞典』に寄与したと考えられる同好者・研究者のネットワークに注目する。
(敬称略)

※来聴歓迎! 
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日時:9月21日(日)15:00-17:50
会場:オンライン(Zoom)
タイトル:
 松永貞徳『なぐさみ草』説話記事について―貞徳の怪異への視点など
発表者:池上保之氏
要旨:
『徒然草』は14世紀中期に成立したが、広く享受されるようになるのは近世になってからである。出版活動に上手く乗ったことや、内容が当時の人々に受け入れたことなど、様々な理由が考えられる。そうして、江戸人に読まれる中で、注釈活動も盛んになる。秦宗巴『寿命院抄』、林羅山『埜鎚』、伊藤栄治『鉄槌』に続いて出されたのが松永貞徳『なぐさみ草』である。『なぐさみ草』の頭注部分は『鉄槌』によっているため、オリジナルな部分は挿絵と「大意」ということになる。松永貞徳が『徒然草』の一段をどう読んだかを記す大意は、当時の『徒然草』享受を考える上でも重要である。そこでは『徒然草』の内容にひっかけて貞徳が様々な話を展開する。一段の要点を上手く捉えて、『徒然草』の理解を促すことがある一方で、『徒然草』の内容はさておき、貞徳の話したいことを長文で展開することもある。貞徳が体験した出来事や聞き知った話などを記すこともあり、そこでは戦国武将や茶人も登場する。信長や玄旨法印(細川幽斎)、古田織部、千利休など、これらの人物のあまり知られていないエピソードを載せていることもある。
本発表では、特に「怪異」を視点に、『徒然草』と『なぐさみ草』の見解を確認した。
『徒然草』では、第73段、第194段などで、説話のように語り伝えられる怪しい話は根拠のないそらごとだと断じ、そのようなものは信じるべきではないとする。ただし、神仏の奇特、験者の伝記も同様に否定するべきではないが、深く信じることはせず、距離を置くべきとする。また、いくつかの章段では化け物が話題になるが、(第50段女の鬼・第89段猫又)、いずれも人々が噂して思い込んだだけで、実際に変化のものが現れることはなかった。第206・207段では徳大寺実基の合理的判断を称揚する。中世、一般的に人間を化かすものとされる狐についても、第218段では「狐は人に食いつくものなり」とその動物性を指摘する。第230段では、モノノ怪が出ることで有名な五条内裏に出たのは(化け損じの)狐だった。兼好は怪異的存在に対し、かなり懐疑的であったと考えられる。ただし、それは近代科学的な視点とは、また区別する必要はあるだろう。
続いて『なぐさみ草』の大意から貞徳の怪異への考えを探った。例えば第206段について、大意では、玄旨法印のエピソードを載せる。ある時、屋根の置石が多く落下するということが起こったが、恩斎という食客は、愛宕へ祈祷をさせるべきだと主張するが、玄旨法印は「下石がひとりでに上に登ったならば怪異だが、上のものが下に落ちるのに何の不思議があるのか」と取り合わなかった。果たして何ごともなかった。貞徳は玄旨法印の判断を尊重している。貞徳は不吉だ、化け物だ、怪異だと騒ぎ立てることには否定的なようである。
一方で、230段の大意などから、神仏の咎め、前世の因縁などは重視していることが伺われる。それ以外の怪奇現象はすべて狐狸が化かしているもので、化け物は存在しないのだとする。
この点は、『徒然草』とは大きく相違するように思われる。『徒然草』では、怪異には懐疑的で、狐も動物的な側面が強調されていた。一方で、貞徳は、化け物は存在しないが、すべて狐狸の仕業としているのである。
発表後、様々なご質問・ご指摘を賜った。感謝申し上げる。例えば『なぐさみ草』大意は『徒然草』に関連しつつも、貞徳の思ったことを随筆的に記しているともとれ、それは『可笑記』などの仮名草子に通じる面があるとの指摘も賜った。また、大意に現れる説話的な内容について、その出典の可能性も示唆していただいた。
今後は、『なぐさみ草』大意の説話部分のさらなる出典の追及が必要である。そして、内容をより精査して、近世初期の『徒然草』享受の一端を明らかにし、ひいては『徒然草』読解の手掛かりとしたい。
(文・池上保之氏)


*これは2025年9月21日(日)にオンライン(Zoom)で開催された第159回の要旨です。
*上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名を明記してください。
*次回は10月19日(日)15時にオンライン(Zoom)で開催予定です。

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第159回開催のご案内

日時:9月21日(日)15:00開始
会場:オンライン(Zoom)


タイトル:
 松永貞徳『なぐさみ草』説話記事について
 ―貞徳の怪異への視点など


発表者:池上保之氏


要旨:
松永貞徳の徒然草注釈書である『なぐさみ草』(慶安5年跋)は先行する注釈書の影響も受けつつ成立した。一方で独特な点として、貞徳の徒然草1段ごとの解釈を示す「大意」を有する。(154図に及ぶ挿絵も重要)この大意では、徒然草の内容に引き付けて、貞徳自身の体験や、連想される説話を記す所がある。そこでは幽霊やキツネが話題となることもある。また信長やキリシタンへの言及など、多様である。今回は、『なぐさみ草』大意の説話記事を整理し、その特徴を探ってみたい。

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タイトル:
 『日本擬人名辞典 お伽草子編』を作ってみたい

発表者:伊藤慎吾

要旨:
一般に擬人名というと、名無しの権兵衛や助兵衛、土左衛門、坂東太郎といった、慣用的に社会で用いられる名詞を指すことが多い。
戦前に宮武外骨が『日本擬人名辞書』を、戦後に鈴木棠三が『通名・擬人名辞典』を編み、それらを網羅した。
今回はまずその概要と特色、問題点を示した。
鈴木は「擬人法による作り名の最も多く登場」するのがお伽草子異類物であることを指摘しながらも、辞典には採用しなかった。
そこで、鈴木のやり残した「お伽草子作品に見られる擬人名」を集め、どのように辞典としてまとめることができるのか、検討してみた。
まず、全体のコンセプトとしては、素材とキャラクターを中心とする擬人名辞典とする。
キャラクター名(「磯の和布」「鰤丹後守」「鼠の権守」など)の扱いや、付録資料、索引の条件など説明。
これを大枠として個々の問題点を抽出して対処法を説明した。
またカテゴリー設定の問題点に言及し(たとえば蛙や蛇を「虫」とするか現代のように「両生類」「爬虫類」とするか。また食材としての魚を「魚介」としていいのか等)。
近世の異類合戦物の進展とともに、お伽草子の擬人名とそれらの膨大な擬人名データを繋げる必要が出て来るだろう。
辞典作りの段階で、どのような布石を打っておくかが今後の課題となる。
(文・伊藤慎吾)



*これは2025年8月31日(日)にオンライン(Zoom)で開催された第158回の要旨です。
*上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名を明記してください。
*次回は9月31日(日)15時にオンライン(Zoom)で開催予定です。

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16
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誕生日:
2009/09/15
自己紹介:
新宿ミュンヘンで誕生。

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