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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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タイトル:異類「リュウグウノツカイ」の怪異の諸相
発表者:寺西まさひろ氏

要旨:
 本発表では、まず大きく三つのテーマに分けて魚類・リュウグウノツカイをめぐる怪しい話題についての説明を行った。
 「名も知れぬ魚からリュウグウノツカイへ」では、リュウグウノツカイという和名が定着するまでの経緯、及びそれ以前の幕末・明治期にリュウグウノツカイという名を用いずにこの魚の出現が記録された例を示した。その上で現代においてリュウグウノツカイが紹介される際、その名前と姿による印象を反映して「神秘」「龍宮の使者」といった修辞をもって語られる傾向にあり、それらが創作物のなかのリュウグウノツカイ像にも反映されていることを示した。
 「何物かの正体としてのリュウグウノツカイ」では、この魚が「人魚」や「大海蛇(シーサーペント)」の正体とされる言説の発端や性質について概観し、それらが生物図鑑の豆知識欄などに頻繁に用いられて雑学的話題として広く受容されていることを確認した。さらに昨年からは「アマビエ」とリュウグウノツカイを関連付けた創作表現が増加しており、数名のクリエイターによるリュウグウノツカイの要素を使って表現されたアマビエのイラスト作品を参照しながら、実在生物をモチーフとした妖怪表現の特質や傾向について考察する端緒とできないかという旨を述べた。
 「凶兆・吉兆としてのリュウグウノツカイ」では、リュウグウノツカイの出現が地震など災害の前兆といわれること、また反対に豊漁などの吉兆といわれることについての具体例の確認や検証の過程について検討した。科学的な仮説として発表された地震の前兆説が曲解を含みつつ都市伝説化していった側面があること、さらに近年の検証により地震との関連が否定され、明確に「迷信」と扱われる場面が増えたことを確認した。吉兆の話題では、リュウグウノツカイが吉兆とされるのは日本の古くからの伝承と称されながら根拠が不明確であること指摘し、その具体性のなさを補うように、報道などでは個人の希望を反映したり、パワースポット観と関連した内容が記されていることを示した。それ以外では水族館のイベントやアマビエとの結びつけを経た結果、リュウグウノツカイが人々の願い・祈りと寺社と媒介する図像として機能している事例も興味深い話題として紹介した。
 最後にリュウグウノツカイが実話怪談やホラー小説でも効果的に用いられていることも紹介し、この魚が様々な領域で活躍しており、重層的に形成されていったそのイメージについて更なる分析や事例収集の余地があるのではないかという旨を述べて発表を終了した。

 質疑応答とzoomチャット欄では多岐に亘る話題提起と資料の提示していただいた。
まず発表者が取り上げていなかった資料として、『献英楼画叢』に収められた雌雄の魚(リュウグウノツカイ)の図、明治17年、24年の新聞記事などが挙げられた。記事からは漂着したリュウグウノツカイと思しき魚に酒を飲ませて海へ帰したという事例が確認でき、海亀や鮫などと同様の対応がとられた記録として興味深く思われた。海外の資料としてはルナールの人魚図、ギリシャ神話におけるケートスとリュウグウノツカイを結びつける説に関する論文が紹介された。
 このほか、説話や芸能を含む近世以前からの「龍宮」観の変遷、民話や伝説にみえるリュウグウノツカイ以外の龍宮からの使者について、龍宮からの「使者」であることの意味、中学生の世間話のなかで地震の予兆としてリュウグウノツカイの使いの名が挙がったこと、リュウグウノツカイを含む深海生物のブームについて、深海魚出現などの宏観異常現象がどのように扱われてきたか、といった話題についての議論があった。さらにはアニメ『キテレツ大百科』にリュウグウノツカイ登場回があること、リュウグウノツカイを調理して食べた結果をまとめた同人誌の紹介などもあり、各方面たいへん興味をひかれる内容となった。(文・寺西まさひろ氏)



※5月30日に開催した第109回の報告です。
 なお、次回は6月27日午後3時Zoomでの開催となります。

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第109回 異類の会

日時:2021年5月30日(日)15時開始
場所:Zoom

タイトル:異類「リュウグウノツカイ」の怪異の諸相

発表者:寺西まさひろ氏

要旨
 リュウグウノツカイはその特異な外見と名称および希少性のため、海岸に漂着しただけでもニュースになるなど深海魚・珍魚の代表格ともいうべき存在感をもつ魚である。かつては名も知れぬ奇魚として扱われることもあったが、今やその名や姿は多くの人に知られている。
 この魚の到来は地震の前兆であるとまことしやかに囁かれたり、反対に幸運の前兆と捉えられることもある…らしい。
 また人魚や大海蛇といった想像上の存在の「正体」だとする言説が流布し、2020年にはかのアマビエと結びつくなど、リュウグウノツカイは異類として興味を惹かれる特質をもっている。
 発表では各種媒体における「リュウグウノツカイ」解説や受容の事例を紹介・比較しつつ、“神秘”の魚に向けられてきた視線から、俗信の変遷や妖怪キャラクター造形の手法の一端なども考察してみたい。

※参加歓迎。
 初めて参加希望の方は、「異類の会広報用」(TwitterID:@iruinokai)にDMを。

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タイトル:日中における動物観の比較─お伽草子・『聊斎志異』を中心に―
発表者:穆雪梅氏

要旨:
 本発表では、お伽草子の時代における日中の動物観、異郷観について、お伽草子、『聊斎志異』を通して、考察を試みた。両者に描かれている動物の変身の作品、擬人化の作品及び、描かれて動物の住処である異郷の考察を通して、それぞれの特徴・相違点がみられる。日本においては、「アニミズム」精神が根底にあり、動物が人語を語るなど擬人化させ、人間と動物との関係は同等でありながら、人間は人間、動物は動物という両者の間には明確な境界があり、区別しようとする意識がみられる。『聊斎志異』においては、人間が動物より優れた存在や、人間が動物を支配するなどの一面がみられない。人間中心の精神がありながら、人間と動物との共生という従来の人間と動物との関係を大きく変え、動物を人間と区別する意識が希薄であろうと論じた。お伽草子と『聊斎志異』との比較を通して、日中伝統文化でのアニミズム精神、お伽草子の時代における日中の動物観、異郷観の相違がみられた。
質疑応答では、次の御指摘を頂いた。
 1、「擬人化」、「変身」の定義についてより明確にしたうえで、考察を深めていくべきであること。
 2、対象とした作品は、動物の登場する作品だけではなく、鬼、精、植物といった他の異類も研究対象にすべきであること。
 3、中国の東北地方、西南地方などの少数民族の文学作品も着目すべきであること。
 4、文献の参照、先行文献の引用について、より明確にすべきであること。
これらの御教示に従い、今後の課題にしたい。
 
 
※次回は5月30日(日)15時、寺西まさひろ氏によるリュウグウノツカイに関するご発表です。

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第108回 異類の会

日時:2021年4月25日(日)15時開始
場所:Zoom

タイトル:日中における動物観の比較
                  ─お伽草子・『聊斎志異』を中心に―

発表者:穆雪梅氏

要旨
 近年、お伽草子の研究では、絵画史、民俗史、宗教史など多方面にわたって行われている。
 発表者は、これらの優れた研究を踏まえながら、お伽草子の「異類物」特に、その中の動物の登場する作品に着眼し、動物の擬人化・変身について、研究を行っている。
 本発表では、これまでの研究を基に、お伽草子のみならず、中国の怪異小説の白眉とされている『聊斎志異』も取りあげ、作品における動物の変身、異郷の描写などを比較する。
 両者の作品に登場する動物がどのように描かれているのか。それぞれの特徴・独自性及び、相違点がみられるのか。
 これらの疑問を明らかにした上で、これまでの日中文学の比較研究とは異なる視点から、お伽草子の時代における日中の動物観、異郷観を検討したい。

※参加歓迎。
 初めて参加希望の方は、「異
類の会広報用」(TwitterID:@iruinokai)にDMを。



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タイトル:日本中世の地震と異類ーー龍神説の形成と展開
発表者:児島啓祐氏

要旨:
 本発表では、日本中世の龍神説の形成と展開について、元暦地震(1185年7月9日)の事例を中心に、考察を試みた。所説の一般性・普遍性を論じる以前に、まずは書物固有の性質や文脈を踏まえて事例を捉えることの重要性・有効性を指摘した。具体的には、これまでの研究でとりあげられた公卿日記や歴史書に見える龍神説の事例のほとんどは、占術の判定結果なのであって、それらによって時代一般の認識といえるかどうかは、慎重に考える必要があるということを論じた。すなわち本発表を通じて、龍神説中心に中世の地震観を説明することへの疑問を提示したのである。
 質疑応答では、『今昔物語集』巻三十一の鯉説話や『平家物語』の龍神説話群、『渓嵐拾葉集』等々の、他の説話・類話との関係を視野に入れて考察を深めていくべきであると御指摘をいただいた。さらに、「信仰」という語の使用が曖昧であり、より適切に表現すべきというアドバイスや、『天地瑞祥志』の成立に関しては最新の先行研究を参照すべきという御教示をいただいた。他にも、国家鎮護と災害はどのような関係にあるか、「平家と龍神」説が結びつく初見は何か、ウロボロス的世界観を日本の学僧はいかに享受したか、『愚管抄』の龍の説はどの程度の影響力があったか等々の御質問を頂戴した。(文・児島啓祐氏)


これは2021年3月21日(日)にオンライン開催された第107回の報告です。
※次回は4月25日(日)15時にオンラインで開催します。

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2009/09/15
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新宿ミュンヘンで誕生。

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