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異類(人間以外のキャラクター)について研究報告・情報提供・談話をする集まりです。妖怪関連多め。時代や地域は問いません。古典文学・絵巻・絵本・民間説話・妖怪・マンガ・アニメ・ゲーム・同人誌などジャンルを越境する会です。TwitterID: @iruinokai
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第117回開催予告

日時:1月29日(土)15時
場所:オンライン開催(Zoom)

タイトル:
「魂呼び」の研究

発表者:鈴木慶一氏

要旨:
 魂 呼 び は 古 く か ら 伝 承 さ れ て き た 習俗で 、人 間 が 生 死 の 境 に 臨 ん だ 状 態 を 、霊 魂が身 体 か ら 遊 離す る こ と に よ り 死 亡 の 危 機 に 見 舞 わ れ て い る と 考 え 、そ の 遊 離 した魂 を 身 体 に 呼 び 返 す た め 、大 声で そ の 人 の 名 を 呼 ぶ な ど し て 、蘇 ら せ る こ と を 目的と し て い る 。こ れ は 儀 礼 的 な も の と し て 考 え られるが 所 定 の 作 法 に 基 づ い た も のでも な く 、 人 か ら 人 へ 伝 え ら れ て き た も の で ある。
 文 献 上 で は 、平 安 時 代 中 期 の『 小 右 記 』で 、屋 根 の 上 か ら の 魂 呼 び が 行 わ れ て いたこ と が 記 さ れて い る が 、類 似 の 儀 礼 と し て の 招 魂 が 、中 国 で は『 礼 記 』に 記 さ れ ている 。ま た 、東 ア ジ ア で は 他に 韓 国 に も 似 た よ う な 習 俗 が み ら れ て い る 。
 民俗学上はじめて取 り 上 げ た の は 、 柳田國男 である が 、 資 料 不 十 分 で 簡 単 な 説 明 程 度 で あ った。そ の 後 、井 之 口 章 次 に よ り あ ら ま し が 捉 え ら れ た 。し か し そ の 後 の 研 究 で も 総合的 な 分 析 に は 至 って いない。( 五 来 重、板橋春夫、藪元晶ほか) その要因 として 1 9 5 0 年 頃 に は ほぼ 消滅 し て し まっ た 習 俗 で 、実 態 を 把 握 す る こ と が 困 難 で 、推 測 に 頼 っ て 論 を 展 開し てい た こ と に あ る と い え よ う 。今 回 の 研 究 は 全 国 の 約 800 事 例 を 確 認 し 、 魂 呼び とは 何 だ っ た の か を 明 ら か に す る も の で あ る 。

※来聴歓迎!
初めて参加する方は
 TwitterID: @iruinokai
にDM等でご一報ください。

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タイトル:
 
菌類妖異考―ハドリアヌスタケ,天狗の麦飯,七面山の珪藻土―
発表者:
 糟谷大河

要旨:
 題目:菌類妖異考―ハドリアヌスタケ,天狗の麦飯,七面山の珪藻土―
発表者:糟谷大河氏
 
要旨:
菌類とは,きのこ,カビ,酵母などを含む生物群を指す。演者は菌類学を専門とし,菌類の中でも,特にきのこ類の系統進化,分類,多様性,分布などを明らかにするための研究を続けている。そのため,日本列島の各地で野外調査(つまり「きのこ狩り」)を行っているが,その過程で,菌類がかかわる何とも奇妙で,不思議な現象・対象に遭遇する機会を得た。今回は,菌類がかかわる3つの「妖異」について話題提供を行った。

 (1)ハドリアヌスタケ:和歌山県白浜町の公益財団法人南方熊楠記念館には,「ハドリアヌスタケ」と称される液浸標本が収蔵・展示されている。この標本は,インドより輸入され,倉庫の中に保管されていた綿花の塊から南方熊楠が発見・採集したもので,スッポンタケ科のきのこの一種ではないかと推測されている。しかし,標本の写真や,南方熊楠の描画記録を見る限り,これがそもそも,本当にきのこの仲間なのか否かも判然としない。そこで「ハドリアヌスタケ」の標本の形態的特徴の観察結果や,炭素安定同位体比分析を行った結果を報告し,その実体について議論した。

 (2)天狗の麦飯:長野県の黒姫山や,長野・群馬県境の浅間山,湯ノ丸山周辺の土壌中には,「天狗の麦飯」と称される微生物の塊が産生する場所がある。「天狗の麦飯」は「食べられる土」とも呼ばれ,長野県の北信・東信地域では,「飯砂」あるいは「謙信味噌」などとも称され,修験者が山岳修行の際に食用としていたとか,飢饉の際の食糧とした,といった言い伝えが残されている。この「天狗の麦飯」の実体を明らかにするため,明治中期より様々な生物学者が研究に取り組んできた。近年では,「天狗の麦飯」は10種以上の細菌類からなる微生物の集合体であるとされているが,その生成に関わる生物群集や,生成機構の全容解明には至っていない。そこで,演者らは黒姫山産「天狗の麦飯」標本中に存在する菌類の調査や,湯ノ丸山での野外調査を行い,「天狗の麦飯」中に存在する菌類群集の解明を進めている。ここでは現在までに得られたこれらの調査結果を報告した。

 (3)七面山の珪藻土:山梨県身延町の敬慎院脇に「無熱池(一の池)」と呼ばれる池がある。池の底泥は白く,洗って乾燥させたもの(白土)が切り傷や腫物などの皮膚の傷に,また,熱さましに効能があるとされ,約500年前から利用されていた。甲州庶民伝によれば,マラリアで苦しむ兵士たちにこの妙薬を飲ませたところ,百人近い病人が元気を取り戻したという。この白土は,植物プランクトンの一群である珪藻類の殻が,長年にわたり池の底に堆積して形成された珪藻土である。演者らは,マラリアに効くと言い伝えられる「無熱池」の白土の実体を菌類学の視点から,そして,池の形成年代や地形発達史について,地形学・地質学の視点から明らかにする計画であり,調査を始めている。ここではその概要を報告し,今後の展望を議論した。
(文・糟谷大河氏)
 
※これは2021年12月19日に開催された第116回異類の会の報告です。
※上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名、本サイト名及び記事URLを明記してください。
※次回は1月29日(土)15時オンライン開催です。

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第116回開催予告

日時:12月19日(日)15時
場所:オンライン開催(Zoom)

タイトル:
菌類妖異考―ハドリアヌスタケ,天狗の麦飯,七面山の珪藻土―
発表者:糟谷大河氏

要旨:
 菌類とは,きのこ,カビ,酵母などを含む生物群を指す。演者は菌類学を専門とし,菌類の中でも,特にきのこ類の系統進化,分類,多様性,分布などを明らかにするための研究を続けている。そのため,日本列島の各地で野外調査(つまり「きのこ狩り」)を行っているが,その過程で,菌類がかかわる何とも奇妙で,不思議な現象・対象に遭遇する機会を得た。ここでは,菌類がかかわる3つの「妖異」について話題提供を行いたい。
 (1)ハドリアヌスタケ:和歌山県白浜町の公益財団法人南方熊楠記念館には,「ハドリアヌスタケ」と称される液浸標本が収蔵・展示されている。この標本は,インドより輸入され,倉庫の中に保管されていた綿花の塊から南方熊楠が発見・採集したもので,スッポンタケ科のきのこの一種ではないかと推測されている。しかし,標本の写真や,南方熊楠の描画記録を見る限り,これがそもそも,本当にきのこの仲間なのか否かも判然としない。そこで演者は「ハドリアヌスタケ」の実体を解明するため,その標本を実際に調査・観察し,いくつかの科学的手法で分析を行ったので,その結果を報告する。
 (2)天狗の麦飯:長野県の黒姫山や,長野・群馬県境の浅間山,湯ノ丸山周辺の土壌中には,「天狗の麦飯」と称される微生物の塊が産生する場所がある。「天狗の麦飯」は「食べられる土」とも呼ばれ,長野県の北信・東信地域では,「飯砂」あるいは「謙信味噌」などとも称され,修験者が山岳修行の際に食用としていたとか,飢饉の際の食糧とした,といった言い伝えが残されている。この「天狗の麦飯」の実体を明らかにするため,明治中期より様々な生物学者が研究に取り組んできた。近年では,「天狗の麦飯」は10種以上の細菌類からなる微生物の集合体であるとされているが,その生成に関わる生物群集や,生成機構の全容解明には至っていない。そこで演者らは,黒姫山産「天狗の麦飯」標本中に存在する菌類の調査を行った。また,湯ノ丸山でも野外調査を行い,「天狗の麦飯」中に存在する菌類群集の解明を進めている。ここでは現在までに得られた調査結果を報告する。
 (3)七面山の珪藻土:山梨県身延町の敬慎院脇に「無熱池(一の池)」と呼ばれる池がある。池の底泥は白く,洗って乾燥させたもの(白土)が切り傷や腫物などの皮膚の傷に,また,熱さましに効能があるとされ,約500年前から利用されていた。甲州庶民伝によれば,マラリアで苦しむ兵士たちにこの妙薬を飲ませたところ,百人近い病人が元気を取り戻したという。この白土は,植物プランクトンの一群である珪藻類の殻が,長年にわたり池の底に堆積して形成された珪藻土である。演者らは,マラリアに効くと言い伝えられる「無熱池」の白土の実体を菌類学の視点から,そして,池の形成年代や地形発達史について,地形学・地質学の視点から明らかにする計画である。

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タイトル:
 『吉利支丹物語』のキリシタン

発表者:
 杉山和也氏


要旨:
 『吉利支丹物語』は、日本へのキリスト教の伝来、日本でのキリスト教の広まり、キリスト教と仏教との宗論、キリスト教への迫害、天草・島原の乱などを描いた仮名草子である。キリシタン排斥の志向が色濃く反映された作品であり、日本にやってきたキリシタンたちは「荒天狗」や「見越し入道」に例えられ、悪役として、ある種の妖怪のように描かれている。本発表は、この作品において、キリシタンやキリスト教が如何に捉えられ、また描かれているかを考察し、その上で『吉利支丹物語』が成立に至る歴史的、文化的な背景を探るものである。
 本発表ではまず、キリシタンバテレンの姿の描写について分析を行ない、これを、中世以来、しばしば用いられてきた境界の民に対して用いられる類型的表現の系譜をひくものと位置付けた。そして、それは実際のキリシタン達の姿とは異なる虚構性に満ちた描写であるということを確認した。
 続いて、本発表の後半では、『吉利支丹物語』に見受けられるキリシタンに関する知識のあり方が、どのように位置付けられるかを検討した。キリシタン達の世界観や、彼らが行う宗教儀礼等に関する描写について、従来の研究では、読者の好奇心を満たすところに主眼があるとされてきた。しかしながら、発表者は、同時代の排耶書や、キリシタン関係文献の記述との比較から、『吉利支丹物語』は、できるだけ正確に、こうしたキリシタン達に関する知識の大要を把握し、紹介しようという志向が認められると考えた。
 キリシタンバテレンを、虚構性に満ちた表現で妖怪のように描き出していながら、キリシタン達に関する知識は、できるだけ正確に書こうとしているということは、一見、作品内での整合性が取れていないかのようだが、こうしたことは、実は現代におけるカルト等の排斥を意図した注意喚起においても、往々にして認められると、発表者は指摘した。すなわち、化物のような姿で、そうした宗教者からの勧誘の様子を描くことにより、ある種のレッテルとして、その危険性を強く印象づける。その一方で、排斥しようとする宗教の宗旨や、勧誘の手口に関する情報は正確に紹介する。そうでなければ、そうした宗教を排斥する上での、傾向と対策をあらかじめ示すことにならないためである。『吉利支丹物語』の成立時期、キリシタンをめぐる問題は、なお、燃焼していた。そうした時代性を勘案するならば、『吉利支丹物語』は、民衆がキリシタンに改宗することを阻止し、キリシタンを排斥する意図で、編まれた可能性があるのではないかと、発表者は考えた。(文・杉山和也氏)

※これは2021年11月14日に開催された第115回異類の会の報告です。
※上記の文章を直接/間接に引用される際は、必ず発表者名、本サイト名及び記事URLを明記してください。
※次回は12月19日(日)15時オンライン開催です。



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第115回 異類の会

日時:11月14日(日)14時
会場:Zoom
発表者:杉山和也氏
題目:『吉利支丹物語』のキリシタン

要旨:
『吉利支丹物語』は、日本へのキリスト教の伝来、日本でのキリスト教の広まり、キリスト教と仏教との宗論、キリスト教への迫害、天草・島原の乱などを描いた仮名草子である。キリシタン排斥の志向が色濃く反映された作品であり、キリシタンたちは「荒天狗」や「見越し入道」に例えられ、悪役として、ある種の妖怪のように描かれている。本発表では、この作品において、キリシタンやキリスト教が如何に捉えられ、また描かれているかを考察する。その上で、『吉利支丹物語』が成立に至る歴史的、文化的な背景を探る。

※来聴歓迎!
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プロフィール
HN:
異類の会
年齢:
14
性別:
非公開
誕生日:
2009/09/15
自己紹介:
新宿ミュンヘンで誕生。

連絡先:
gijinka☆way.ocn.ne.jp
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